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ブロンコスのQB争いについて語るペイトンHC、「彼らは皆、親を失った犬だ」

2024年05月25日(土) 19:57

デンバー・ブロンコスからドラフト指名を受けたオレゴン大学のボー・ニックス【Kevin Sabitus via AP】

デンバー・ブロンコスでは先発クオーターバック(QB)の座をめぐって3人の選手が競い合っている。

そこには1人の新人選手を含め、ドラフト1巡目で指名を受けた選手が2人いる。2人の“ベテラン選手”は合わせて7シーズンで37試合に先発出場してきた。つまり、セカンドチャンスをつかもうと試みる選手と初めてNFLを経験する選手がいる状態だ。

ボー・ニックス、ジャレット・スティッドハム、ザック・ウィルソンはこの春と夏に、ショーン・ペイトンHC(ヘッドコーチ)率いるブロンコス攻撃陣のリーダーとして居場所を見つけようとしており、そこには無数のストーリーと多くの可能性が秘められている。

現地24日(金)、ペイトンHCは「親を失った子たちのようなものだ。彼らは皆、親を失った犬だ。どこからかやって来たが、よくやっている。良いルームだ」と述べた。

そのQBルームには2024年シーズンに向けて多くの疑問がつきまとっている。ブロンコスはペイトン・マニングが2015年シーズンを最後に引退してからフランチャイズQBを探し続けており、最後にプレーオフに進出してスーパーボウル制覇という形で締めくくったのも2015年シーズンだった。“親を失った犬”というのは一般的な表現ではないものの、ペイトンHC率いるチームに属する3人のQB1候補のうち、2024年に他チームのほとんどで先発の座を狙えるような選手がいないことから、その表現はいくらかしっくりくると言えよう。とはいえ、ブロンコスが集めることができたのはその3人であり、競争はすでに始まっている。

ペイトンHCはQBたちの経験レベルがそれぞれ異なることと、それぞれがどのように進歩していくかについて「彼らは異なるシステムからやって来た」とコメント。「1人はカレッジから。1人は2つか3つのNFLシステムから。そしてもう1人は1つのシステムから。彼らは皆、このシステムを学ぶために競争している。あなたたちも練習を見たと思うが、彼らはよくやっていると言えるだろう」

スティッドハムはブロンコスQB陣の中で最年長だが、まだ27歳だ。2019年ドラフトでニューイングランド・ペイトリオッツから4巡目指名を受けたオーバーン大学出身のスティッドハムは、ラスベガス・レイダースにトレードされるまでの数年間をボストンで過ごした。長年、先発を務めていたデレック・カーがベンチに下げられた2022年シーズンに、スティッドハムはNFLキャリアで初めて2試合に先発。昨季はブロンコスに移籍したものの、ラッセル・ウィルソンに代わってシーズン最後の2試合に(再び)先発するという、不気味なほど同じような状況に置かれた。

現在のブロンコスにはザックという別のウィルソンが加わっている。2021年NFLドラフト全体2位指名を受けたウィルソンは、ニューヨーク・ジェッツで寄せられていた期待を大きく裏切った後、今オフシーズンにトレードされた。強肩と過小評価されている機動力を併せ持つウィルソンは、3シーズンにわたってジェッツの先発として苦戦した後、キャリアで2つ目のチームに移っている。

それから、今年のドラフトの全体12位で指名されたニックスだ。史上最多6人のクオーターバックが1巡目指名を受けた今年のドラフトで、1巡目の最後に選ばれたQBとなったニックスは、オーバーン大学から移籍した後、オレゴン大学で大活躍していた。

デンバーに来るまでの道のりがどうであれ、彼らはそれぞれブロンコスでシーズン初戦に先発を務めるという、同じ目標を掲げている。

競争をさせる上で、練習場で彼らに平等な機会を与えるために最善を尽くしているペイトンHCは、次のように語った。

「ドリュー(ブリーズ)が抜けた後のニューオーリンズ(セインツ)には、テディ(ブリッジウォーター)とテイサム(ヒル)がいた。いいか、私たちは見て判断する。できる限り多くのレップスに参加させる。交代させるのだ。今は全員を交代させている。だから、火曜日は“スティディ(スティッドハムの愛称)”が先発組と練習して、そのあとはザックとボーがそうした。今後もそうし続けていく」

ペイトンHCは前回のQB争いに関してやや記憶違いをしている。2021年、ブリッジウォーターはブロンコスに所属しており、ヒルを差し置いてセインツで先発の座を勝ち取ったのはジェイミス・ウィンストンだったからだ。それは、将来の殿堂入りが確実視されているクオーターバックの後釜をめぐる、2人のQBの戦いだった。

2024年のブロンコスは当時の状況とは異なる。ニックスは将来的にフランチャイズQBになることを期待されているが、現在はニックスとスティッドハム、ウィルソンの全員が近い将来にシグナルコーラーになることを目指して競い合っている。

ペイトンHCは新人クオーターバックをベンチに下げるかプレーさせるかについて、特定のスタンスをとっていない。それは状況次第だと考えているからだ。ブロンコスのQB陣には昨季に先発を務めた選手も真のベテランも存在しない。

「そのうちのいくつかはチームにあるものの副産物だと思う」と述べたペイトンHCはこう続けた。「チームに先発がいれば、その道を歩むことになる。そのような贅沢(ぜいたく)ができない場合もある。そうなれば、その道を歩んでいくことになる。その多くはクオーターバックとその精神構造に左右される。だから、いろいろだと思う。グリーンベイ(パッカーズ)に行って(現在ジェッツに所属しているQBアーロン・ロジャースの)後についた(QBジョーダン)ラブや、グリーンベイに行って(元QBブレット・ファーブの)後についたロジャースを見ると、そこにはちょっとした余裕があるけど、それは本当にロースターによるものだ」

ブロンコスのQB争いで誰がリードしているかを判断するのは時期尚早だ。

ウィルソンから見てとれるものを気に入っているペイトンHCは、次のように話している。

「彼の経験を気に入っている。彼はプレーしてきたと言えるし、素晴らしい腕力を備えているような気がする。オフェンスを理解するのもかなり早い」

また、ニックスから見てとれるものや、同じように物覚えの早さも気に入っているペイトンHCは「彼は他の選手よりずっと進んでいる。(大学時代に)61試合に出場した選手について話している。彼はものすごく賢い。とても早く理解している」と説明した。

当然かもしれないが、ペイトンHCはスティッドハムとその状態については直接的に質問されていない。

24歳のニックスとウィルソンは、より若い選択肢であり、より前評判が高く、ニュースで取り上げたくなるような存在だ。

ペイトンHCはすぐに、練習のレップス――誰が何回、担当するか――が重要になる時が来ると指摘した一方で、今はその時期ではないと強調している。現在は5月で、長いQB1争いはこれから待ち受けているのだ。しかし、“親を失った”彼らが先発の座を競い合うデンバーで、その争いはほぼ確実に始まっていると言えよう。

【RA】