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2025年シーズンに向けたキックオフルールの微調整やその他のルール変更

2025年07月31日(木) 13:16

NFLロゴ【NFL】

NFLが昨季の1年間で試行した新キックオフルールは今季から正式採用されるが、リターン率のさらなる向上を目指して新たな調整が加えられることになった。

NFLは今季に向けてオーバータイムルールの変更、リプレーアシストの拡充、その他いくつかの技術的な変更を今シーズンから導入することを承認。それらの変更は、現地31日(木)夜に行われるデトロイト・ライオンズ対ロサンゼルス・チャージャーズのプレシーズン初戦で初めて適用される。

NFLは2024年に、より多くのリターンを促すと同時にプレーの安全性を高めることを目的として、“ダイナミックキックオフ”と呼ばれる新方式を試験的に導入した。オーナーたちは今年4月にそのルールを正式に採用し、エンドゾーンにボールが届いた場合のタッチバック時の攻撃開始地点を30ヤード地点から35ヤード地点に変更することも決定した。これにより、リターンが発生するキックの数が増えることが期待されている。

昨季にスーパーボウル制覇を果たす過程でフィラデルフィア・イーグルスが効果的に使っていたタッシュプッシュプレーには変更が加えられなかった。

新たに導入されるルールの一部に関する説明は以下の通り。

キックオフでの変更点は?

リーグは2024年に試験的に導入したキックオフルールに概ね満足している。それにより、キックオフリターンの割合は過去最低水準となった2023年の21.8%から、昨季は32.8%に増加した。その一方で、これまで最も危険なプレーとされていたキックオフでのケガの発生率は減少している。

新ルールでは、カバレッジプレーヤーとブロッカーの位置を近づけることで、これまで多くの負傷の原因となっていた高速での衝突が排除され、スクリメージプレーにより近い形となった。リーグはリターン時の脳しんとうの発症率が43%減少し、下半身の負傷率も大幅に減少したと発表している。

昨季の問題点は、タッチバックによる不利益が小さかったため、多くのチームが依然としてエンドゾーンにボールを蹴り込む選択をしていたことだ。タッチバック時の平均的な攻撃開始地点は、リターン後の27.6ヤードラインと比べてわずか2.4ヤードしか差がなかった。

リーグは、タッチバックの攻撃開始地点を35ヤード地点に移すことでリターン率が60%から70%程度まで上昇し、長いリターンも同様に増加して試合がより面白いものになると予想している。

また、リーグはリターンチームのブロッカーのセットアップゾーンでの並び方に関する小さな調整も承認。これによって、より長いリターンが生まれる可能性がある。

オンサイドキックはどうなるのか?

フォーメーションが異なるため、チームは依然としてオンサイドキックを試みる意向を宣言する必要がある。しかし、カンザスシティ・チーフスがスーパーボウルにおいて第3クオーター残り1分で28点差を追う状況でディープキックを余儀なくされたことを受け、新しい変更によって、劣勢チームは第4クオーターより前にオンサイドキックを試みることが可能になった。

また、カバレッジプレーヤーは、過去3シーズンに約6%だったリカバリー率を少なくとも10%に引き上げる狙いから、1ヤード前に詰めて並ぶことが許可される。

オーバータイムはどう変わる?

リーグは、レギュラーシーズンのオーバータイムをポストシーズンと同様に、先に攻撃権を得たチームがタッチダウンを決めた場合でも両チームが攻撃のチャンスを得られるようにする提案を承認した。

NFLは1974年にレギュラーシーズンでオーバータイムを導入し、15分間のサドンデス制を採用した。この方式では、どちらかのチームが得点すると試合終了となる。2010年にはルールが修正され、最初の攻撃でタッチダウンを決めた場合は即座に試合終了となる一方、フィールドゴールの場合は試合続行となるサドンデス方式に変更された。このルールはレギュラーシーズンとプレーオフの両方で適用されていた。

その後、2017年にレギュラーシーズンのオーバータイムは10分間に短縮され、2022年にはプレーオフに限り、最初の攻撃でタッチダウンが決まっても両チームに得点のチャンスが与えられるようになった。

キックオフ時のフィールドポジションが改善され、最初の攻撃でタッチダウンを決めてオーバータイムに勝つことが容易になったため、今後はレギュラーシーズンでも同様のルールが適用されることになる。

『Sportradar(スポーツレーダー)』によると、昨季に延長戦までもつれ込んだ16試合のうち6試合が最初の攻撃ドライブでのタッチダウンによって決着し、2010年にルールが変更されて以来、オーバータイムが最初の攻撃で終了した試合数としては最多となったという。

スポーツレーダーによれば、昨季は延長戦のコイントスに勝利したチームが75%の確率で試合に勝ち、2017年にオーバータイムが10分に短縮されて以降の勝率は60.6%となっているとのこと。

リーグはオーバータイムの時間を10分間に維持しており、イーグルスが提案していた15分間への延長を見送っている。これにより、両チームがタッチダウンを決めて同点となった場合に、次の攻撃権が回ってこない可能性があるため、2ポイントコンバージョンを狙って勝利を目指す戦略がとられるかもしれない。

リプレーアシスト

NFLは反則行為がなかったことを示す“明瞭かつ明白な”証拠がある場合に審判の判定を覆せるようリプレーアシストシステムを拡大した。対象となる判定には、フェイスマスクのペナルティ、頭部または首への強制的な接触の有無、ホースカラータックル、トリッピングなどが含まれる。また、映像でディフェンダーがボールに触れていたことが確認できれば、ラフィング・ザ・キッカーやランニング・イントゥ・ザ・キッカーといった反則についても、リプレーで判定を覆すことが可能となった。

リーグは近年、パスのキャッチの成否やボールの位置に関する明らかな誤審を覆すためにリプレーアシストを活用しており、審判が試合を中断して確認を行う必要をなくしている。

競技委員会は、審判がフィールドで見逃したプレーに対してリプレーアシストを用いてペナルティを宣告することを認める考えはないとしている。

その他の変更点

審判はファーストダウン判定にチェーンを使うのをやめ、代わりにバーチャル測定システムを採用することになった。とはいえ、審判が手動でボールの位置を定め、チェーンを用いてゲインラインを示す作業がなくなるわけではない。最適な追跡システムは、手でボールが置かれた後にファーストダウンが達成されたかどうかを瞬時に審判に知らせる。

また、故障者リザーブ(IR)に関する手続き上のルールがいくつか変更された。各チームはロースターを53人に絞った後ではなく、絞る時点で2人の選手を復帰指定付きでIRに登録することができる。さらに、プレーオフ進出チームには、さらに2名のIRからの復帰指定が認められることになった。


記事提供:『The Associated Press(AP通信)』


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