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新導入のダイナミックキックオフによりリターン数が増加もオンサイドキックには課題

2025年10月22日(水) 12:25

NFLロゴ【Ric Tapia via AP】

NFLはダイナミックキックオフ導入によってリターン数が増加し、プレー数の増加と負傷の減少という結果が得られたことに満足している。一方で、今後はオンサイドキックに関して変更が検討される可能性もある。

今シーズンここまでに行われたキックリターンは877回に達しており、リターン率は79.3%。昨シーズンの開幕から7週時点での31.7%と比べると大幅な増加となった。リーグのオフィシャルによると、これは2006年以来の最高リターン率であり、歴史上でもシーズン第7週時点で2番目に多いリターンヤード数を記録しているという。

オーナー会議では、2024年に試験的に導入されたこの新フォーマットを恒久ルールとして採用することを4月に決定。また、エンドゾーンに直接届くキックのタッチバック地点をこれまでの30ヤードラインから35ヤードラインに変更した。これにより、プレー中のキック数とリターン数を増やすことが狙いとされている。

「フットボールにキックが残ることが何よりうれしい」と、元ディフェンシブバック(DB)で現在はフットボール運営部門の上級副社長を務めるトロイ・ビンセントは、現地21日(火)に開催されたNFLの年次秋季オーナー会議で語った。

「われわれはキックを競技に取り戻し、その存在を守ることができた。ただし、オンサイドキックのように、まだ取り組むべき課題も残っている」と続けた。

ビンセントは今シーズンここまででキックオフリターンタッチダウンが1回しか記録されていない点については懸念を示さなかったが、チームがオンサイドキックを成功させることがほとんどできていない現状については問題視している。そのため、デンバー・ブロンコスとフィラデルフィア・イーグルスが提案している、相手にリードされている時にオンサイドキックの代替として第4ダウンでビッグプレーを狙う選択肢を与える仕組みを検討するようオーナーたちに呼びかけたという。

NFLは今シーズンから、チームがリードを許している状況では試合のどの局面でもオンサイドキックを試みることを可能とした。昨シーズンまでは第4クオーターに限られていた。とはいえ、相手チームへの事前通知が義務付けられているため、不意を突くことはできない。

「リカバリー率が5%を下回るような状況になると、ダイナミックキックオフで起きたことを踏まえても、ルール全体を見直す時期にきているのかもしれない」とビンセントは語った。

このキックオフルールの変更は、スピードと接触の激しさによって頻発していた負傷を減らす目的でも導入されたものだ。

NFLの選手の健康と安全を統括する上級副社長ジェフ・ミラーは、プレシーズン中にその効果が確認できたと述べた。エキシビションゲームではキックの77%がリターンされたにもかかわらず、脳しんとうはわずか2件で、ACL(前十字靭帯/ぜんじゅうじじんたい)損傷は1件も発生しなかったという。

「新たなフォーメーションによって選手のスピードが全体的に落ち、以前よりも明らかに遅くなっている。その結果として、ブロックやタックルの発生もより低速で行われている」とミラーは説明した。

懸念点のひとつとして挙げられているのが、キッカー(K)がタックルに関与する回数の多さだ。『Sportradar(スポートレーダー)』によると、今シーズンはすでに17回を記録しており、昨シーズン全体の19回、2023年の15回に迫るペースとなっている。

「フォーメーションの構造上、キッカーは多くの場合ディフェンスの最後の砦であり、リターナーが抜けた瞬間、真っ先にその前に立ちはだかる存在になる」とビンセントは説明した。

「ただし、この点については今後も委員会として継続的にモニタリングしていくよう求められている」

先のスーパーボウル制覇やその後の快進撃でも効果的に使用してきたフィラデルフィア・イーグルスのタッシュプッシュを禁止する提案は、わずかに可決に届かなかった。これに関してビンセントは、議論自体はあまり多くなく、主にクオーターバック(QB)スニークの判定がいかに難しいかという点に焦点が当てられたと話している。

NFLは先月、審判団に送付したトレーニング映像の中で、イーグルスがシーズン第2週のカンザスシティ・チーフス戦でタッシュプッシュを使用した際、少なくとも1回はフォルススタートの反則を取るべきだったと指摘している。

「われわれがリプレイで確認すると、ラインジャッジの位置からは見えにくいが、実際にはガード(G)が先に動いていたり、ニュートラルゾーンに侵入していたり、ほかの選手が動いていたりするケースがある」とビンセントは述べた。

「スクリメージラインに沿って立っているラインジャッジにとって、そうした動きをその場で正確に見極めるのは非常に難しい」

ビンセントは「依然としてこのプレーを上手く成功させているチームが存在する」と認めつつも、リーグとして今後はタッシュプッシュの反則をより正確に判定できるよう改善を図っていきたいと語った。

ニューヨーク・ジャイアンツのワイドレシーバー(WR)マリク・ネイバーズがメットライフ・スタジアムの人工芝で、またピッツバーグ・スティーラーズのスペシャルチームのキャプテンを務めるセーフティ(S)マイルズ・キルブリューがアクリシュア・スタジアムの天然芝で、ともにシーズン絶望の膝の負傷を負ったことを受け、再びフィールド表面と選手の安全性を巡る議論が再燃している。アクリシュア・スタジアムはプレー不能な状態だと評するスティーラーズの選手がいるほどだ。

この話題は火曜日にも取り上げられ、NFLフットボール管理最高責任者のドーン・アポンテは、フィールド表面に対する関心が以前よりも高まっていると語った。

「これまでに確認されている範囲では、天然芝と人工芝の間で負傷リスクに大きな差は見られていない」とアポンテは言う。

「国内外でさまざまなテストツールを用いて改良を進め、データ収集と研究を強化している。現在は表面の硬度だけでなく、衝撃吸収性や滑りにくさといった指標も追跡しており、人工芝の一貫性とパフォーマンスを改善するための取り組みが進展している」

ニュージャージー州メドウランズにあるメットライフ・スタジアムは、かねてより危険なスタジアムという印象を持たれてきた。

しかし、NFLのデータはそれとは異なる結果を示しているという。

「メットライフに関して言えば、昨シーズンはリーグ全体で見ても、人工芝に限らず最も低い負傷率のひとつだった」とミラーは述べた。

「どのようなフィールド表面であっても、そこで起きた負傷はすべて調査と学びの対象だ。そして防止可能であるなら、われわれはその方法を見つけたい。しかし、メットライフ・スタジアムのプレー環境について言えば、非常に良好な状態が長く続いている」

また、ミラーによると、10月9日の試合中にニューヨーク・ジャイアンツのヘッドコーチ(HC)ブライアン・ダボールとランニングバック(RB)キャム・スカッテボが、QBジャクソン・ダートの脳しんとうプロトコルの評価中にブルーのメディカルテントに入った件については、調査が現在も続いているという。詳細は明かされなかった。

「調査は進行中だ」とミラーは説明した。

「こうした案件では、選手会(NFLPA)と連携し、できる限り迅速に結論へと導くよう努めている。“まもなく”という言葉が具体的にいつを指すかは分からないが、進展していることは間違いない」

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