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NFLでフルタイムコーチを務める11人の女性の1人にまで急成長したコルツのイザベル・ディアス

2025年11月19日(水) 12:00

インディアナポリス・コルツのイザベル・ディアス【NFL】

ドーナツへのちょっとした欲が、幼稚園児だったイザベル・ディアスをフットボールの世界へ導いた。ほどなくして、彼女の心をつかんだのは甘いお菓子ではなく、NFLそのものだった。

現在ディアスは、インディアナポリス・コルツで“Harriet P. Irsay Fellow(ハリエット・P・アーセイ・フェロー)”のメンバーとして3年目のシーズンを迎えている。スペシャルチームコーディネーターのブライアン・メイソンと、スペシャルチーム上級アシスタントコーチのジョー・ヘイスティングスを補佐し、練習やゲームプランの作成に携わっている。コルツは8勝2敗でAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)南地区の首位に立ち、今週はクオーターバック(QB)パトリック・マホームズ率いる5勝5敗のカンザスシティ・チーフスとの重要な一戦を迎える。

ディアスの歩みは、ダラス近郊にある祖父母の家から始まった。

「母は客室乗務員だったから、週末は祖父母と一緒に過ごしていた」とディアスは語る。

「祖父はよくキッチンのテーブルで新聞を読みながらドーナツを食べていて、もちろん私はドーナツにつられた。でも気がつくと、順位表を眺めたり、面白いチーム名に興味を持ったりするようになって、そこから本格的にフットボールの世界に引き込まれていった。それからはソファに移って、『Fox NFL Sunday(フォックスNFLサンデー)』をみんなで観るようになったの。気づいたら完全に夢中だった。本当に大好きになったし、祖父と一緒に共有できる時間がうれしかった。サンデーナイトゲームを最後まで見たいから、寝る時間を遅らせてほしいって祖父母にお願いしていたくらい。母もそのうち一緒にハマっていって、すごく楽しかった」

ディアスの母親は、彼女がにタックルのあるフットボールをプレーさせなかったという。当時は今ほどフラッグフットボールが一般的ではなかったためだ。だからディアスは、幼い頃からいつかコーチになろうと決めていた。

ディアスは高校時代からフットボールに関わり、オクラホマ州立大学ではスポーツ・コーチング科学の学士号を取得。副専攻としてスポーツ経営学を修めた。大学ではフットボールチームでさまざまな役割を担い、2021年から2023年まではディフェンスの学生アシスタントを務めている。スカウトチームのサポート、練習スクリプトの作成、ゲームプランの補助、試合当日のプレー記録などを担当した。

2019年から2021年にかけては、フットボール部と女子サッカー部でのビデオスタッフとして両チームの試合撮影に加え、フットボールの練習撮影も担った。

「次のステップを求め続けていたら、最終学年でやっと席をもらえた」とディアス。

「私のデスクはディフェンススタッフの会議室にあるテーブルの一角にあった。それは、ずっと働きかけ続けた結果だった。自分の意見をはっきり伝えることを恐れなかった。自分の味方になれるのは自分だけだから。もちろん支えてくれる人たちはいるけれど、その人たちに彼女ならできる、本気でこの道を歩むつもりなんだ、と思ってもらわないといけなかった」

「私は誰にも負けないくらいフットボールが大好き。それが今ここにいる理由。このゲームが持つ価値も、本質も全部愛している。これはチームスポーツで、全員が同じ方向を向いて取り組むもの。そして今、チームが結果を出している姿を見ると、その成長の過程も、文化やリズムが形になっていくところも全部見てきただけに、本当に胸が熱くなる。こうして試合に勝てている。みんなが素晴らしい仕事をしているからこその結果。女性であろうと男性であろうと、バックグラウンドに関係なく、全員で一緒に取り組んでいる」

NFLは女性やマイノリティの機会拡大を重要課題として繰り返し強調してきた。インディアナポリスで開催されるスカウティングコンバインに合わせて行われる毎年恒例“Women’s Forum(ウィメンズ・フォーラム)”は、その中心的取り組みの一つだ。

過去5年間で、フットボールオペレーションやコーチングの職に就く女性は289パーセント増加した。今季は合計358人の女性がこの分野で働き、ディアスはその中でフルタイムコーチとして活躍する11人の1人だ。

ディアスはウィメンズ・フォーラムに複数回参加してきた。オンラインで実施された2022年には、“Bill Walsh Diversity Coaching Fellowship(ビル・ウォルシュ・ダイバーシティ・コーチング・フェローシップ)”を通じ、当時ヘッドコーチ(HC)ロン・リベラが率いていたワシントン・コマンダースで働く機会を得た。

「彼は、同じ部屋にさまざまな声や経験、意見があることの価値を強調していた」とディアスは振り返る。

「私の意見を求めてくれたし、プロジェクトも任せてもらえた。もちろん役割は小さかったけれど、クオリティコントロールコーチと同じようにチームに深く関わらせてもらった。すごく貴重な経験ができたし、現場の空気にしっかり触れることができた」

ワシントンでオフシーズンとトレーニングキャンプを過ごした当時、ディアスはまだ大学4年生だった。2023年のウィメンズ・フォーラムでコルツのオーナーであるカーリー・アーセイ・ゴードンと出会い、その後コルツはディアスをハリエット・P・アーセイ・フェローの一期生として迎え入れた。

「本当にこの世界でやっていくんだって実感した瞬間だった」と、授業中にオファーの電話を受けたときの心境をディアスは語る。

「私はまだ22歳で、大学を卒業したらNFLのコーチになる。アーセイ家がこのフェローシップにどれだけ思い入れを持っていて、適任者を探すことを本当に大切にしていたと聞いて、この組織の一員になれたことが信じられないくらい素晴らしいと思った」

「今では、カーリーと彼女の姉妹たちがオーナーとして私たちを導いてくれていて、その姿を見るとさらに特別な意味を感じる。この組織が私にとってどれほど大きな存在か、感謝の気持ちは言葉にし尽くせない」

【R】