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QBウェンツの成功を願うイーグルスのバックアップQBフォールズ

2018年06月29日(金) 12:52

フィラデルフィア・イーグルスのニック・フォールズ【AP Photo/Matt Slocum】

フランチャイズ史上初となるスーパーボウル制覇を成し遂げた後、フィラデルフィア・イーグルスのクオーターバック(QB)ニック・フォールズには他の街でチームトップのQBになるチャンスが提供されていた。イーグルスにも同様に、カーソン・ウェンツの周辺を固めて最強集団を形成するため、プレーオフで英雄となったバックアップQBフォールズをドラフト指名権の資本として利用するチャンスがあった。

それではなぜ、フォールズはリーグナンバーワンのバックアップとしていまだにチームの裏方に徹するのだろうか。これに対する簡潔な答えは、すべての関係者が幸せで、満たされ、2018年にまた同じような経験し、あるいはもっと高いレベルでの成功を収めたいとの強い思いがあるからだ。

現地27日(水)、フォールズは『FOX Sports(フォックス・・スポーツ)』の“First Things First(ファースト・シングス・ファースト)”でのインタビューの中で、リーグをうらやましがらせるイーグルスQB陣の“偉大なダイナミックさ”について説明した。

「カーソンはすさまじいプレーヤーだ。彼なら長期間、このリーグですばらしいプレーヤーになれる。ロッカールームではざっくばらんに議論したりもする。まずはフレンドシップを優先させることで、チームメイトとして本当の意味で相手のことを思いやるようになる。つまり、カーゾンがそこに出ている時、俺が彼にケガしてほしいなどと思っていないことを彼も分かっているということ」

「カーソンには成功してもらいたいし、シーズンを通して健康でいてもらいたい。また、すばらしいキャリアを形成してもらいたいんだ・・・自分のプレーを犠牲にしたってそう思う。自分のエゴを押さえ込んでも、“おい、それがチームにとってベストなんだ”と言う必要がある。ロッカールームではリーダーでいられる。自分なりにね」

それは来たるシーズンを通してウェンツのバックアップとして従事するだろう選手の尊敬すべき姿勢だ。しかし、フォールズは現在の良好な関係性にも終わりが来ることを実感しているようだ。

「残りのキャリアすべてをフィラデルフィアでプレーしたい。だが、そのような状況にならないのも分かっている。カーソンにはそこですばらしいキャリアを積んでほしいし、そこでレジェンドになってもらいたい。今季についてはわくわくしているし、その後にどうなるかは成り行き次第だ」

まだ30歳手前のフォールズは自身のスタンスを繰り返し述べ、“ぜひとも”イーグルスのリーダーになりたいと明かしている。これは、フォールズが“有害な環境”のチームに移籍するために今いるフットボール界の極楽浄土を去ることを危惧しているとも考えられる。

フォールズはこのようにも語っている。

「ただあるチームに行って 、彼らのことを知りもせずに“あのさ、このチームを引っ張りたいんだ”なんて言うつもりもない。すべては環境による。それは毎日働くということであり、職場環境や人間関係を持つことを楽しんでできるかどうかだ。そのような状況にいれば、何時間働こうが関係ないのだから。一緒に働く人たちが大好きであれば、自分の仕事だって好きになるさ。そこがあまり良くない環境であれば、短い日だろうが、楽な日だろうが、楽しめることはないだろう」

「だから、自分にとって正しい選択、正しいチームを選択したい。フィラデルフィア・イーグルスのような組織をね。彼らは正しいやり方をしている。すばらしいリーダーたちやすばらしいコーチがロッカールームにいるんだ。自分は神さまのおかげもあってその一部に入っている。だからこそ、自分から逃げだすことはない。今年も彼らの契約下にいるんだ。皆も自分がどこに向かおうとしていたか知りたがっていた。自分がその一部となっていたことに感謝している。チームは自分の契約を更新し、僕を欲してくれたんだ。今年もそこにいたかった。今季が終われば今後どうなるか分かるだろうが、2018年シーズンのイーグルスに興奮している。少なくともあと1年はそのユニフォームを着られるし、もう1年も着られることにわくわくしている」

幸せは伝染するものなのだ。

当時ヘッドコーチ(HC)だったジェフ・フィッシャーとともにむらっ気の強いロサンゼルス・ラムズを出たフォールズは2016年のオフシーズンに早期引退を真剣に考えていた。それから1年後、フォールズは定着できずに毎年チームを変えるような“ジャーニーマン”としてのQBから、喜びの輝きを放ち続け、広く尊敬を集めるチームでスーパーボウルMVPを獲得するQBへと大変貌を遂げた。

現在に至るまで、フォールズは雄弁で自己認識力に富む冷静な思考を持ったリーダーへと成長してきた。このレベルの向上に苦しんで消えていく者が大多数いる中、フォールズが今のこの幸せにどうやって値段をつけることができるのだろう。

地方紙『Los Angeles Times(ロサンゼルス・タイムズ)』の記者がフォールズの書いた文書を入手し、『Twitter(ツイッター)』に投稿した。

「ニック・フォールズの文書をコピーしたのも、その内容がすばらしすぎたからだ」

フォールズが記した内容は以下の通り。

「失敗を恐れないことが何よりも大事だ。今日、僕らの社会ではツイッターやインスタグラムなどがハイライト映像化している。それらはすべて良いことだ。それを見れば、“すごい”と思うことがあれば、つらい日だった時には“自分の人生はこんなに良くない”と感じることもあるだろう。自分は失敗しているんじゃないかとも考える。失敗は人生の一部だ。失敗は個性や成長を促すために必要なもの。それがなかったら、どのような人間になれるのだろう。何千回もの失敗がなければ、今ここに自分はいないはずだ。(自分も)たくさんのミスを犯してきた。みんな同じ人間で、同じように弱点を持っている。こう思うことで、自分の弱さをシェアすることができるし、より分かりやすくなると思う。人が話をしているのを聞き、彼らが弱さをシェアしているとき、僕は耳を傾けている。それこそが共鳴を起こすのだから。つまり、自分は完璧じゃないってこと。スーパーマンでもない。NFLにいて、スーパーボウルで勝ったかもしれない。だが、日々の中につらいことはある。自分もそうさ。ここで自分の信念が必要とされるし、家族が必要になってくる。人生の中でつらいと思う時があれば、それは自分の個性を伸ばすための機会だと思えばいい。それは単なるメッセージなのだから。単純さ。もし人生の中で何かが生じ、つらいことがあったとしたら、その時は迎え入れてあげること。だって、僕らはそれで成長していくのだから。-ニック・フォールズ」

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