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“生き残り、前進する”のモットーに従い、49ersを下したチーフス守備陣

2024年02月13日(火) 19:08


カンザスシティ・チーフスのトレント・マクダフィー【NFL】

カンザスシティ・チーフスのディフェンシブエンド(DE)クリス・ジョーンズはアレジアント・スタジアムの外にある表彰台に座り、3度目のスーパーボウル制覇の輝きに包まれていた。

ジョーンズは、この試合の終わりにはクタクタになっていたはずだ。第4クオーターと延長戦において、ジョーンズはサンフランシスコ・49ersをフィールドゴールに抑えるために数え切れないほどの攻防を繰り広げており、自分が疲れていることを認めるだけの理由がある。それでもジョーンズは当初、栄光の代償としてその疲労をごまかそうとしていた。しかし追及されると観念した。

「疲れたよ。飲み物が必要だ」とジョーンズは言い、周囲に集まったメディアの笑いを誘っている。

ジョーンズとチーフスは、ラスベガスで行われたスーパーボウルに進出した時と同じような奮闘を見せて、その勝利の杯(さかずき)をつかみ取った。チーフスのオフェンスにとっては何一つ楽なことがなかった試合だったが、またもやディフェンスが支えている。そして、チーフスは手が届かなくなる寸前までもつれ込んだような試合を、最後まで戦い抜いた。49ersが勢いよく攻撃を仕掛けるたびに、チーフス守備陣が応戦し、49ersは12回中3回しかサードダウンコンバージョンを成功させていない。49ersがエンドゾーンをとらえた時でさえ――最初はダブルパスで、その後は第4ダウンの思い切った決断の結果――すべての距離を稼がなければならなかった。

この好パフォーマンスは、守備コーディネーター(DC)のスティーブ・スパグニョーロを象徴するディフェンスの産物だ。セーフティ(S)のジャスティン・リードは試合後、表彰台で誇らしげに「俺らはスパグズ(スパグニョーロ)を信頼しているのさ」と叫んでいる。また、オールプロのコーナーバック(CB)トレント・マクダフィーが試合を通してきわめて重要なプレーを披露するなど、一部のスター選手だけでなく、各選手の総力を結集したディフェンスだった。

もし、今度チーフスが守備コーディネーターを応援するTシャツを作る時は、マクダフィーをサブキャラクターに加えるべきだろう。マクダフィーは現地11日(日)に行われたスーパーボウルで、シングルカバーのマッチアップを制し、重要な場面で49ersのチャンスを何度も奪い去った。第2クーター序盤では、相手ワイドレシーバー(WR)のディーボ・サミュエルへのディープパスを弾いて、49ersのタッチダウンを阻止。また、この試合最大の場面――チーフスが延長戦に持ち込むには第3ダウンで止めなければならないという局面――では、マクダフィーのブリッツがこの試合で最も重要なパスカットとパス失敗を生み出した。

チーフスのラインバッカー(LB)ニック・ボルトンは、マクダフィーについてこう語っている。

「(彼は)ディフェンスにとって不可欠な存在だ。彼は才能の一端を見せてくれた。ディーボと一緒にディープポストのパスルートを走ってボールを弾いたり、アンダールートやスラントもカバーをしたり、あらゆることをこなした。ああいう選手がいれば・・・ディフェンスはもっと良くなる」

今までのシーズンとは異なり、今季チーフスはディフェンスに支えられてラスベガスにたどり着いた。チーフスの守備陣は、スーパーワイルドカードゲームで爆発力があるマイアミ・ドルフィンズをわずか7点に抑え、AFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)チャンピオンシップゲームでは、クオーターバック(QB)ラマー・ジャクソン擁するボルティモア・レイブンズをわずか10点に封じ込めている。このパターンはスーパーボウルにも引き継がれ、チーフスは49ersにパントを5回も強いることになった。そして相手の新人キッカー(K)ジェイク・ムーディを3度使わせて、オフェンス面でうまくいかない時でも試合を優位に進めている。

ディフェンスに必要だったのは、もう少し時間を稼ぐことだった。守り切ること。マクダフィー、ジョーンズ、ボルトン率いる守備陣がそれぞれの役割を果たし、再びチーフスの強みとなり、オフェンスに問題を解決するのに十分なポゼッションを与えた。

統計的に見ると、マクダフィーの数字はMVP級のパフォーマンスを示すものではない。試合後の記者会見にも登壇しなかった。しかし、マクダフィーの活躍は、チーフスが2年連続のスーパーボウル制覇を果たす上で、とても重要であったことは間違いない。特にミスの許されない試合ではなおさらだ。

チーフスは延長戦開始時に49ersを第3ダウン残り10ヤード以上の状況に追い込んだ時、そのわずかな差がいかに勝敗を分けるのかを学ばされることになりそうだった。相手のプレーを止めることができたかに見えたが、マクダフィーがホールディングのペナルティを課せられ、そのチャンスをふいにしてしまう。

このような大事な場面で、こうしたミスに埋もれてしまう者もいるかもしれない。しかし、マクダフィーは常にチームメイトから最大限のサポートを受けていた。

49ersに新たなファーストダウンをもたらしたペナルティの後、リードはマクダフィーにかけた言葉を次のように振り返っている。

「お前が必要なんだ。俺たちにはお前が必要なんだ。あのプレーは終わった。お前が必要だ。戻ってきて、またビッグプレーをするんだって言ったよ」

「トレントがオールプロになったのには理由がある。テクニックという点ではリーグ最高のコーナーバックだ。頭脳明晰で賢いから、いろんなことができる。あのプレーは相手にとって有利な判定になっただけで、俺らはただ気を引き締めて、もう一度彼らを止めに行かなければならないと思っていた」

結果的に、チーフスはマクダフィーのビッグプレーを必要としなかった。その仕事はジョーンズの肩にかかったのだ。ジョーンズは自陣9ヤードラインからの第3ダウン残り4ヤードでスクリメージラインを突破し、チーム最多の6回のプレッシャーをマークして、相手QBのブロック・パーディーにまたも決定的なパスインコンプリートを強いた。

「俺たちにはモットーがある。“生き残り、前進する”だ」と述べるリードは、次のように続ける。

「相手の最高のパンチを受け止めて、一旦落ち着くんだ。落ち着いたら、今度はアグレッシブに攻めていく」

ディフェンス陣が満足してサイドラインの席に着いたところで、パトリック・マホームズの出番となった。マホームズは第4クオーター終盤と同様、13プレー、75ヤードのドライブを成功させる。このドライブでは、第3ダウンと第4ダウンの両方でマホームズが自ら走って第1ダウン更新をする必要があった。そして、最後には、ワイドレシーバー(WR)メコール・ハードマンへのショートパスで決勝タッチダウンを決める。

この得点でチーフスとファンたちは沸き立ち、約20年ぶりにスーパーボウル連覇を達成したチームの栄光に酔いしれた。

マクダフィーやジョーンズをはじめとするディフェンス陣の素晴らしいパフォーマンスがなければ、この結果は得られなかっただろう。

リードはさらにこう述べている。

「あの試合はすごかったよ。最初から最後まで、まさにしのぎを削る激戦だった。打撲だらけで、グローブが真っ二つになったこともあったほど、激しい試合だった。でも興奮したし、最高の気分だよ」

「2回目はもっといいね」

【KO】