コラム

相次ぐHC解任、次は誰だ!?

2016年12月22日(木) 13:51

サンディエゴ・チャージャーズのマイク・マッコイ【AP Photo/Denis Poroy】

ジェフ・フィッシャー(ラムズ)に続き、ジャガーズのガス・ブラッドリーがヘッドコーチ(HC)の職を解かれた。

オフにディフェンシブタックル(DT)マリック・ジャクソン、セーフティ(S)タショーン・ギプソン、ランニングバック(RB)クリス・アイボリーら、大型補強を施したにもかかわらず、第15週終了現在で2勝12敗の成績では無理もない。ジャガーズは初代HCで前ジャイアンツのトム・コフリンを後任候補にあげているとも伝えられる。

シーズン閉幕を待たずに2人のHCが解任されたが、もちろんこれで終わりではない。このオフにはさらに数人のHCが職を失うことになるだろう。

ジェッツのトッド・ボウルズはその筆頭候補だ。昨年は10勝6敗で惜しくもプレーオフ出場を逃した。今季は4勝10敗と低迷。クオーターバック(QB)ライアン・フィッツパトリックが起用法に不満を述べるなどチーム内の不協和音も生じており、ボウルズのリーダーシップに疑問符が付けられた。来年の指揮を任される可能性は低い。

ペイトリオッツのビル・ベリチックに次ぐ長期政権のマービン・ルイス(ベンガルズ)だが、そろそろ潮時だろう。昨年まで5年連続でプレーオフに進出しながらすべて初戦敗退だ。通算ではルイスHCの下でプレーオフは0勝5敗。地区優勝争いにも絡めなかった今季は責任を問われて然るべきだ。

チャージャーズのマイク・マッコイもその座が危ない。いや、むしろもっと早く解任しておくべきだった。マッコイはHC1年目の2013年こそチームをプレーオフに導いたものの、その後は3年連続でポストシーズンを迎えられなかった。昨年は前年の9勝から大きく後退する4勝止まり。チャージャーズに対するサンディエゴ市民の失望感を膨らませたA級戦犯だ。

サンディエゴとチャージャーズにとって今年は重要な1年だった。ロサンゼルス移転がペンディングとされ、サンディエゴ市内への新スタジアム建設の是非が市民投票で問われたからだ。増税につながるスタジアム新設は否決されたが、これがペイトリオッツのような常勝チームだったら結果は違っただろう。せめて今季だけでもチームが好調だったらと悔やまれる。

NFCではジョン・フォックスが3勝11敗の責任を負わされるかもしれないが、ベアーズのHCに就任してまだ2年目ということを考えると、もう1シーズンのチャンスをもらえるかもしれない。ブルース・アリアンズ(カーディナルズ)、ショーン・ペイトン(セインツ)、ロン・リベラ(パンサーズ)はいずれも期待を大きく下回る結果となったが、過去の実績から留任の可能性が高いだろう。

さて、空席となったHC職にどのような人材が登用されるかも興味深い。フィッシャーやコフリンのように経験と実績の豊富なコーチが招へいされる場合もあるだろうが、各チームのアシスタントコーチにも多くの人材がいる。今季のレイダーズの躍進を支えたケン・ノートンJr.守備コーディネーター、ジャイアンツのマイク・サリバン攻撃コーディネーター、ペイトリオッツのジョシュ・マクダニエル攻撃コーディネーター、マット・パトリシア守備コーディネーター、ファルコンズのカイル・シャナハン攻撃コーディネーターなどは注目されるだろう。

近年はカレッジ界からの転向は成功例が少ないが、元49ersのHCで現ミシガン大学HCのジム・ハーボウがNFLに戻ってきても面白い。実際に元ラムズのスターRBエリック・ディッカーソンなどは非公式ながらラブコールを送っている。

間もなくレギュラーシーズンが終わり、HCにとっては粛清の季節がやってくる。当事者にとっては戦々恐々の日々だが、新たな人材が投入されてチームが生まれ変わればリーグ全体の活性化に繋がる。今年はどんなサプライズ人事が待っているのか楽しみだ。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。