コラム

明暗分かれる! プレーオフ常連組の成功と失敗

2016年12月30日(金) 09:58


ニューヨーク・ジェッツとニューイングランド・ペイトリオッツ【AP Photo/Elise Amendola】

最終週を残してAFCはプレーオフ出場6チームがすべて出そろい、NFCも残すところあと2枠となった。第17週は9勝6敗で並ぶライオンズとパッカーズが直接対決し、勝った方がNFC北地区優勝となり、敗れたチームはレッドスキンズ(8勝6敗1分)、バッカニアーズ(8勝7敗)とワイルドカード枠を争う。

ちなみに第16週終了現在でのプレーオフシード順位は以下の通りだ。もちろん最終週の結果で順番は入れ替わる場合がある。

AFC NFC
シード
順位
チーム 勝敗 シード
順位
チーム 勝敗
1 ペイトリオッツ 13勝2敗 1 カウボーイズ 13勝2敗
2 レイダース 12勝3敗 2 ファルコンズ 10勝5敗
3 スティーラーズ 10勝5敗 3 シーホークス 9勝5敗1分
4 テキサンズ 9勝6敗 4 パッカーズ 9勝6敗
5 チーフス 11勝4敗 5 ジャイアンツ 10勝5敗
6 ドルフィンズ 10勝5敗 6 ライオンズ 9勝6敗

両カンファレンスのトップ2シードはシーズン序盤から好調で、安定した戦いを展開してきた。その一方で、プレーオフを争う戦いで最も重要とされる12月ごろに合わせて戦力を整えることに成功したチームもある。

実際にどのようなチームが浮上してきたのか。シーズン折り返し地点である第9週終了現在の順位表をもとにすると、その時点でのシード順位は次のようになる。

AFC NFC
シード
順位
チーム 勝敗 シード
順位
チーム 勝敗
1 ペイトリオッツ 7勝1敗 1 カウボーイズ 7勝1敗
2 レイダース 7勝2敗 2 ファルコンズ 6勝3敗
3 テキサンズ 5勝3敗 3 シーホークス 5勝2敗
4 レイブンズ 4勝4敗 4 バイキングス 5勝3敗
5 チーフス 6勝2敗 5 ジャイアンツ 5勝3敗
6 ブロンコス 6勝3敗 6 ライオンズ 5勝4敗

AFCではレイブンズとブロンコスが姿を消し、スティーラーズとドルフィンズが台頭した。NFCでは失速したバイキングスに代わってパッカーズが急速にチームを改善させている。

スティーラーズやパッカーズはいわゆるプレーオフ常連組だ。過去に何度もディビジョンライバルと激闘を繰り広げ、ポストシーズンへの切符を手に入れてきたのである。その中には終盤における直接対決で雌雄を決するシーズンも多かった。今シーズンでいえばスティーラーズの第16週のレイブンズ戦がそうであり、最終週のパッカーズとライオンズの試合もそうだ。

こうしたチームは17週間という長いレギュラーシーズンの中で12月から翌年1月にかけてチームのピークが訪れるように戦力を構築するノウハウを持っている。シーズン中にはスランプもある。スティーラーズは中盤に4連敗を喫した。しかし、10月まで不振だったディフェンスが改善されたこともあって現在6連勝中。これはペイトリオッツと並び現在進行の記録では最長だ。

主力の故障に悩まされるチームもある。パッカーズがその例だ。特にランニングバック(RB)陣はエディ・レイシー、ジェームス・スタークスらが相次いで戦列を離れた。そこで高校時代までRBだったワイドレシーバー(WR)タイ・モンゴメリーをRBとして起用し、急場をしのいできた。パスが不調だったクオーターバック(QB)アーロン・ロジャースも得意のロングパスが決まるようになり、現在は1カ月前には絶望的に思えたプレーオフ争いに加わっている。

プレーオフ常連組が毎年のようにポストシーズンに駒を進めるのには理由がある。それは、プレーオフに出場するために重要ないくつかの条件をはっきりと認識し、それらを可能な限り多くクリアするための周到な準備をしていることだ。

その条件とはホームに強いこと、同一ディビジョン対決の勝率が高いこと、シーズン終盤の戦いに強いことなどだ。

例えばペイトリオッツはホームが6勝2敗と例年に比べると負けが多いが、同一ディビジョン対決は4勝1敗。前述の通り6連勝中で、タイトエンド(TE)ロブ・グロンカウスキー、WRダニー・アメンドーラを欠くにもかかわらずシーズン終盤も好調だ。

シーホークスは地区内対戦が2勝2敗1分、最近5試合が2勝3敗と、この2条件は振るわないが、ホームで7勝1敗と強い。もっとも、カーディナルスの予想外の不調に助けられた部分が大きいことは否めないが。

逆に過去5年間連続でAFC西地区を制してきたブロンコスはホーム4勝3敗、同一ディビジョン対決1勝4敗、最近5試合は1勝4敗だ。これでは条件を一つも満たしておらず、いつもより短いシーズンを迎えるのも無理はない。

今季はレイダースやドルフィンズ、ジャイアンツのように久しぶりにポストシーズンに登場するチームも多く、これらのチームが次に直面する課題はレギュラーシーズンとは違うプレーオフをいかに戦い抜くかだ。レイダースはQBデレック・カーを脛(すね)の骨折で失い、ドルフィンズもまたQBライアン・タネヒルが戦列離脱中だ。苦しい台所事情でどのように戦うのか。

プレーオフにはプレーオフの戦い方がある。今季にどのような展開が期待できるのかはチームが出そろい、シード順が決まってから検討することにしよう。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。