コラム

テレビ視聴データで見る2016年NFL

2017年01月16日(月) 06:00


第50回スーパーボウル【Tom Hauck via AP】

調査会社『ニールセン』が2016年のアメリカテレビ視聴に関する調査結果を発表し、その中にNFLに関していくつか興味深いデータが含まれていた。

トップ50のうち27がNFL中継

まず取り上げたいのが2016年1年間を通してのテレビ全体での放送別視聴者数ランキングトップ50だ。第1位には1億1,190万人を記録した第50回スーパーボウルが輝いている。やはりスーパーボウルがアメリカ最大のスポーツイベントであり、最大の関心事であり続けていることが証明されたといえるだろう。

さらに5,330万人が見たAFCチャンピオンシップや4,570万人のNFCチャンピオンシップなど実にトップ50に27のNFLゲーム中継がランク入りしている。ただし、これは2015年の37より10も少ない。その大きな要因として挙げられるのは昨年リオ五輪が開催されたことだろう。『NBC』が放送したリオ五輪のうち最も視聴者数が多かったのは3,340万人を記録した第4日で16位だったものの、五輪中継が11も入っており、五輪も根強い人気を博している。

しかし、それ以上にNFLに影響を与えたかもしれないのが、昨年3回に渡って行われた大統領選のテレビ討論会である。スーパーボウルに次ぐ2位、3位、4位を討論会中継が占めているのだ。しかも2位の第1回討論会は複数のテレビ局が中継したこともあって世帯視聴率ではスーパーボウルの46.6%を凌ぐ47.6%を記録している。嫌われ者同士の戦いと呼ばれた大統領選挙への関心がいかに高かったか分かるだろう。

番組シリーズではSNFが6年連続1位

一方、昨年9月に始まった2016-2017テレビシーズンにおいて最も視聴された番組シリーズが、NBC放送のサンデーナイトフットボール(SNF)だった。SNFは6年連続で首位をキープし続けている。

とはいえ、そのSNFも決して安泰とは言えない。平均視聴者数は2,030万人を記録したが、これは前年度の2,250万人から10%ダウンしているのだ。特に重視される18歳から49歳の視聴率においても前年度の7.8%から7.0%へと下げている。

これも大統領選が大きな要因となったと考えられる。特に10月9日の第2回討論会は第5週のSNFジャイアンツ対パッカーズ戦とまともにぶつかる形で開催された。SNFを放送したNBCを除く4大ネットワークの3局全てが討論会を放送したのである。時間別視聴率を見るとSNFが始まった東部時間20時半の時点ではSNFが圧倒的に1位だったものの、討論会が開始された21時時点では3局の討論会中継が上位に食い込んでいる。NFLの好カードよりも討論会に関心が移ってしまったようだ。

2016年はシーズン開幕からNFLテレビ中継の視聴がふるわず、放送枠によっては視聴率が前年比で15%も落ちたこともあった。関係者の間では試合時間が長すぎる、ルールが厳しくなってつまらなくなったなど原因についてさまざまな議論が重ねられたのである。ただ、大統領選が終わると視聴率が急回復した中継が多く、胸をなで下ろすこととなった。これほどまでに大統領選が影響を与えていたのかと思い知らされた格好だ。確かにその影響は大きく、NFLレギュラーシーズン中継全体の平均視聴者数は2015年の1,790万人から1,650万人と8%ダウンとなった。

それにもかかわらず、中継で流された広告の販売は好調で、全米向けの売り上げは2015年の32億ドル(約3,712億円)から2016年は34億ドル(約3,944億円)に伸びたと見られている。これは一時的に数字が下がったとしてもNFLの人気はやはり圧倒的という認識が広告主の企業の間に浸透しているためと考えられている。

チーム別視聴率首位は?

一方でニールセンは2016年レギュラーシーズンのチーム別平均世帯別視聴率ランキングも発表している。1位になったのはカウボーイズで視聴率は13.4%、平均視聴率は2,440万人だった。今シーズン13勝3敗でNFCのプレーオフ第1シードを獲得しているカウボーイズだが、その人気が“アメリカズチーム”というニックネーム通りであることを示したシーズンだと言える。特に感謝祭ゲームとして11月24日に行われたレッドスキンズ戦の『Fox』による中継は、同局においてNFL中継開始以来最多の3,510万人の平均視聴者数を記録した。

2位は2年ぶりにプレーオフに進出したライオンズで視聴率12.0%、平均視聴者数2,330万人、3位がスティーラーズで11.4%、2,060万人、以下ペイトリオッツ、パッカーズと続く。

対して最も数字が低かったのはジャガーズとタイタンズで、いずれも視聴率が3.2%、平均視聴者数が507万人にとどまっている。カウボーイズとはおよそ5倍もの差をつけられてしまった。またドルフィンズは8年ぶりのプレーオフ進出を果たしたものの、下から4番目の視聴率3.7%、平均視聴者数615万人となっている。長い低迷がファン離れを招いてしまったのだろうか。

NFLの人気はテレビと共に高まってきたと言われるが、このようにその視聴データからはさまざまなことが見えてくるのである。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。