コラム

結びづきを深めるNFLとソーシャルメディア

2017年03月12日(日) 13:48


【Ric Tapia via AP】

NFLのテレビ中継を見ながら手元のスマートフォンやタブレット端末を使い、ソーシャルメディアにアクセスし、今見たプレーの感想を投稿したり、他の人の投稿に“いいね”を押したりする。そのようにして、ソーシャルメディアを片手に“ながら観戦”をする人は多いのではないだろうか。昨シーズン、NFLとソーシャルメディアの結びつきの強さを示すデータが相次いで発表され、注目されている。

まず紹介したいのが現地2月5日に開催された第51回スーパーボウルについてのソーシャルメディア利用だ。『Facebook(フェイスブック)』は傘下の写真系ソーシャルメディア『Instagram(インスタグラム)』と合わせ、1億0,800万人のユーザーが試合中に投稿やコメント、返信といった行動、インターアクションを約4億回行ったと発表した。

フェイスブック単独では6,400万人のユーザーが2億4,000万回のインターアクションを行ったということだ。ゲーム中最も話題にされた選手はペイトリオッツのクオーターバック(QB)であり、MVPを受賞したトム・ブレイディで1,170万人。ファルコンズのQBマット・ライアンが73万6,000人、ペイトリオッツのワイドレシーバー(WR)ジュリアン・エデルマンが61万人と続く。

それらインターアクションの90%以上がモバイル端末から行われ、モバイル端末での試合に関するビデオ視聴も2億6,200万ビューを記録したということである。モバイル端末でのソーシャルメディア利用が定着していること、テレビを見ながらそれらを利用していたことが窺える。

一方、インスタグラムはスーパーボウルに関して4,400万人のユーザーが1億5,000万回のインターアクションを行った。試合当日に最も人気のあった投稿はブレイディと、出場しなかったタイトエンド(TE)ロブ・グロンコウスキーが試合後のロッカールームで肩を組んで撮った写真だったとのこと。

Best ever no questions asked! # 2 for me and # 5 for that guy!!

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やはり大手ソーシャルメディアの『Twitter(ツイッター)』も試合前から試合後までの1日に今回のスーパーボウルを示すハッシュタグ“#SB51”がつけられた投稿が2,760万回以上あったと発表している。

さらにスーパーボウル観戦時のソーシャルメディア利用はテレビ中継だけではない。会場となったNRGスタジアムで無料Wi-Fiサービスを運営した『Extreme Networks(エキストリーム・ネットワークス)』は当日、ソーシャルメディア利用のために使われたデータ量が1.7テレバイトに達したと明らかにした。これは前回より55%も増加したという。

ただ、こうした利用データの発表は同時に各ソーシャルメディアの勢いも露わにしている。フェイスブックの場合、前回のインターアクションを行ったユーザー数6,000万人、2億インターアクションよりも増加したものの、第49回の6,500万人、2億6,500万インターアクションを下回っているのだ。ツイッターも第49回で史上最多の2,800万回を記録したが、第50回では発表されず、今回もこれに届かなかったのである。スタジアムでのWi-Fiによる各ソーシャルメディアの使用ユーザー数においても第47回ではフェイスブック、ツイッターの順だったが、今回はフェイスブックが1位を保ったものの、ツイッターは4位だった。

対して人気の上昇ぶりが窺えるのは一定時間を過ぎると投稿が消えることで人気の『Snapchat(スナップチャット)』だ。スタジアムにおける利用ユーザー数ではスナップチャットは2位となっている。さらに当日配信された自撮り画像にペイトリオッツかファルコンズのヘルメットを添えることができる加工機能、およびレンズは6,700万回以上見られたということだ。

さらにスナップチャットは今月2日に株式上場を果たしたが、それに際して昨シーズン、スナップチャットに掲載されたNFLに関するコンテンツを4,200万人ものアメリカ在住ユーザーが見たと発表している。NFLは2015年のドラフトからスナップチャットと提携し、さまざまなコンテンツを提供してきた。昨シーズンは企業、団体毎に分けられたディスカバーと呼ばれるチャンネルで記事や動画を掲載したり、レンズを提供するなど特に力が入れられている。その甲斐あって2015年は3,100万人だったNFLコンテンツのユニークユーザー数が昨シーズンは35%も増加したのだ。

NFLがスナップチャットに力を入れているのはただ単に人気の高まりにあるだけではない。スナップチャットの年齢層別ユーザー数を見ると一番多いのが18歳から24歳で、次いで25歳から34歳と若いのだ。NFLだけでなく、MLBなどアメリカの老舗プロリーグでは現在、若年層の拡大が課題となっている。それだけに若者の多いスナップチャットでの浸透は重要というわけだ。

このようにNFLとソーシャルメディアの関係からもさまざまなことが見えてくるのである。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。