激化するNFC南地区の首位争いを勝ち抜くのは?
2017年11月26日(日) 07:01シーズン第11週を終え、プレーオフピクチャーが気になる時期となった。今季はジャガーズ、イーグルス、ラムズが好調で例年とは違った戦力分布図になっており、興味深い。その中でもNFC南地区はセインツ(8勝2敗)、パンサーズ(7勝3敗)、ファルコンズ(6勝4敗)の三つ巴(みつどもえ)の争いが激化している。
レッドスキンズから劇的な逆転勝利をもぎ取ったセインツは開幕2連敗後の8連勝で、スーパーボウル制覇を果たした2009年シーズンに匹敵する好調ぶりを発揮している。目立つのは若手の台頭だ。2年目のワイドレシーバー(WR)マイケル・トーマスはオフェンスの核となり、新人ランニングバック(RB)アルビン・カマラもマーク・イングラムとの併用の中で存在感を放つ。ディフェンスでは新人コーナーバック(CB)マーション・ラティモア、2年目ディフェンシブタックル(DT)シェルドン・ランキンスが守備力向上に一役買っている。
オフェンスは従来のパス偏重からランの比重を増やしたバランス型に移行し、ディフェンスはチーム最多の8サックを誇るキャメロン・ジョーダンを中心にパスラッシュが強化されたことが功を奏している。
このセインツを1ゲーム差で追うパンサーズも10月以降調子を上げてきた。キャム・ニュートン率いるオフェンスはスーパーボウルに出場した一昨年に比べれば威力は劣るが、リーグ2位のディフェンスに支えられてチーム全体の戦力は充実している。
エースレシーバーでもあったタイトエンド(TE)グレッグ・オルセンを故障で欠く状態が続くが、WRではデビン・ファンチェスがニュートンのトップターゲットとなり、RBクリスチャン・マキャフリーもパスキャッチで貢献する。ランはジョナサン・スチュワート頼みで、ダウンフィールドレシーバーの駒がやや足りないという懸念はあるが、オルセンの今季中の復帰が叶えば解消されるだろう。
3勝0敗のスタート後、1勝4敗で失速気味だった前年カンファレンス優勝のファルコンズはカウボーイズとシーホークスに連勝して勢いをつけてきた。昨季に比べて1試合平均12点も得点が下がっている(シーズン第10週終了時点で33.8点から21.9点に減少)が、ディフェンスが大きく改善されているのが今季の特徴だ。WRフリオ・ジョーンズに今季まだタッチダウンパスキャッチがひとつしかないのが気がかりだが、遅まきながら優勝戦線に名乗りをあげた。
もっとも、ファルコンズは今後のスケジュールが非常に厳しく、プレーオフを逃す可能性も否定できない。第12週からは3試合連続でホーム試合ができるが、その対戦相手はバッカニアーズ、バイキングス、セインツだ。その後、敵地でバッカニアーズとセインツと再戦した後、最終週にパンサーズをホームに迎える。すなわち、残り6試合のうち5試合がディビジョンゲームで、残る一つはNFC北地区首位の強敵なのだ。
スケジュールの観点からいえばセインツはラムズ、パンサーズ、ファルコンズと連戦する今後の3週間が勝負だ。パンサーズは現在勝ち越しているチームとの対戦が3つで、他の2チームよりひとつ少ないのが有利だろう。
直接対決ではセインツがパンサーズに1勝、パンサーズはファルコンズに1度目の対戦で勝っている。
今季のNFCは地区首位のチームの勝率が高く、ワイルドカードの当確ラインとなる勝利数も11勝前後に達する可能性がある。NFC南地区で首位と同率で並びながらタイブレークで優勝を逃したチームは、他地区の勝率によってはワイルドカード枠すら手に入れられないケースも十分に想定できるため、非常に厳しい戦いが続くことになる。
過去2年でNFCを制しているのは南地区の優勝チームだ。同地区のカンファレンス3連覇はなるのか。勝つとすればどのチームなのか。シーズン後半の6週間はNFC南地区から目が離せない。
いけざわ・ひろし
- 生沢 浩
- 1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。