コラム

連勝ストップのイーグルス、敗戦から学ぶことは?

2017年12月10日(日) 09:38


フィラデルフィア・イーグルスのレギャレット・ブラント【AP Photo/Ted S. Warren】

シーズン第3週から勝ち続けていたイーグルスがついにシーホークスに敗れて今季2敗目を喫し、連勝が9でストップした。勝てば4年ぶりの地区優勝が決まっていたがそれは第14週以降に持ち越しだ。

シーホークスを相手に第4クオーターまでタッチダウンをあげられない苦しい展開が続き、10対24のスコアから受ける印象以上に一方的にゲームメイクされた試合だった。勝敗数でバイキングスと同率となり、プレーオフのNFC第1シード争いは横並びになっている。第14週は9勝3敗と好調のラムズ戦とあって次も気が抜けない。

もっとも、この時期にシーホークスのようなプレーオフ常連と対戦し、その強さに触れられたのはある意味で幸いだったかもしれない。

このコラムで何度も述べてきたが、プレーオフは経験値が重要だ。しばらくポストシーズンから遠ざかっていたチームが急速に力をつけてプレーオフに出てくる例は少なくない。昨年のカウボーイズ、ファルコンズ、ドルフィンズ、レイダースなどがそうだ。だが、スーパーボウルまで上り詰めたファルコンズを除きすべて初戦で敗退した。

一昨年はレッドスキンズ、バイキングス、テキサンズがそれぞれ3年ぶりにプレーオフに出場したが、いずれもワイルドカードで姿を消している。

これらのチームに立ちはだかったのはパッカーズ、シーホークス、スティーラーズといったいわゆるプレーオフ常連組だ。こうしたチームは12月以降にチームのピークが訪れるように戦力を整える術を知っており、負ければ終わりという緊張感に包まれるポストシーズンゲームの戦い方も心得ている。

イーグルスは何度もプレーオフを経験している。しかし、現在のダグ・ピーダーソン体制では初めてであり、もちろん2年目のクオーターバック(QB)カーソン・ウェンツにとっても未知の世界だ。そのポストシーズンに入ってからではなく、まだ修正の余地がある今のうちにシーホークスのしたたかな強さの洗礼を浴びたことはむしろ好材料だというべきだろう。

シーホークスとはプレーオフでも再び顔を合わせるかもしれない。その際はこの敗戦を糧としたスカウティングを基にしっかりとした対策を立てることでシーホークス越えを果たす可能性もあるのだ。言ってみれば、プレーオフではありえない“敗者復活”のチャンスが与えられたに等しい。

ランニングバック(RB)レギャレット・ブラント、ジェイ・アジャイ、ディフェンシブタックル(DT)フレッチャー・コックス、セーフティ(S)マルコム・ジェンキンスらにプレーオフ出場の経験があり、若手にとっては彼らのアドバイスも役立つだろう。

負けは負けであり、それを正当化するつもりはない。しかし、敗戦から何を学ぶかは重要だ。ペイトリオッツは連敗をほとんどしないことで知られる。それはビル・ベリチックが敗戦からこそ多くのものを学んで、その反省を次戦に活かすことのできるヘッドコーチだからだ。今季も序盤の2敗から早くも立ち直り、NFL.comのパワーランキングではついに1位となった。

イーグルスはシーホークス戦から何を学ぶのか。プレーオフで勝ち進むためのヒントをそこに見出すことができればイーグルスは大切な経験値を手に入れることになる。それを実現したイーグルスはプレーオフ常連組と互角かそれ以上の勝負ができるに違いない。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。