カンファレンス決勝、勝敗を分けたプレー
2018年01月27日(土) 07:19第52回スーパーボウル特集 > カンファレンスの勝敗を分けたプレー
ミネアポリスへの切符を手にしたのはディフェンディングチャンピオンのペイトリオッツとイーグルスだった。終わってみれば両カンファレンスのトップシード同士が顔を合わせる順当な組み合わせだ。ペイトリオッツが勝てば2003年と2004年に続く2度目の連覇達成で、通算優勝回数もNFL最多記録と並ぶ6回になる。イーグルスは1960年にNFLチャンピオンとなった経験はあるが、スーパーボウルでは未勝利だ。
AFC決勝でジャガーズと対戦したペイトリオッツは意外な苦戦を強いられ、NFC決勝は予想外の点差でイーグルスがバイキングスを退けた。開催地をホームとするチームが初のスーパーボウル進出を果たす夢はまたも実現しなかった。
2試合とも試合の流れを大きく変える場面があった。その瞬間に試合のモメンタムを自分たちに引き寄せることができたからこそ、この2チームが現在も残っているのだ。
AFC決勝でのその場面が訪れたのは前半終盤。ランニングバック(RB)レナード・フォーネットのランを中心としたオフェンスが奏功してジャガーズが14対3とリードしていたものの、ほとんどミスなく試合を展開していたジャガーズに隙が生まれる。サードダウン7ヤードの場面でディレーオブゲームの反則を犯したのだ。
珍しくもない反則だが、起きたタイミングが悪かった。ペイトリオッツが要求したタイムアウトが明けた直後だったのである。タイムアウトの間にジャガーズはプレーコールを確認、または変更する余裕が十分にあったはずだ。それでもメンタルミスの反則を犯すのは明らかに集中力の欠如だ。ペイトリオッツ相手にこのようなミスをしていては勝てない。
結果的にファーストダウン更新までに必要な距離が12ヤードに延び、パスで巻き返しを図ったブレイク・ボートルズはサックを受けてしまう。これによってジャガーズは前半に追加得点を上げるチャンスを失い、逆にペイトリオッツに4点差にまで詰め寄るタッチダウンを許してしまうのだ。
さらにジャガーズはハーフタイムまでに55秒を残してポゼッションを得たにもかかわらず攻撃を放棄。積極性を失ったジャガーズに勝利の女神が微笑むはずがなかった。
試合巧者のペイトリオッツに4点のリードなどないに等しい。ギャップシューティングでフォーネットのランを止めることに成功したペイトリオッツにとって、後半の30分はじわじわと追い上げる時間でしかなかった。残り2分48秒にトム・ブレイディからダニー・アメンドーラへの逆転タッチダウンパスが成功したのはビル・ベリチックHC(ヘッドコーチ)が描いたシナリオ通りだったに違いない。そのシナリオができあがるきっかけとなったのが前半の不用意なディレーオブゲームだった。
一方、NFC決勝の潮目の変化は試合序盤にあった。バイキングスが最初のオフェンスでケイ・キーナムからタイトエンド(TE)カイル・ルドルフへのタッチダウンパスで先制し、続くイーグルスのオフェンスもパントに追いやって上々の滑り出しを見せていた。
ところがバイキングスの2回目のポゼッションに罠が待っていた。自陣43ヤードでのサードダウン8ヤードの場面で、キーナムがワイドレシーバー(WR)アダム・シーレンに対してショートアウトのパスを投げようとしたときだ。ディフェンシブエンド(DE)クリス・ロングの手が背後からキーナムのスローイングハンドにかかり、ボールがショートになる。そのパスを思い切ってシーレンの前に出たコーナーバック(CB)パトリック・ロビンソンがインターセプト。サイドライン際へのパスだったためにロビンソンの前にリターンを阻止するオフェンス選手はおらず、そのままエンドゾーンまで50ヤードを走ってタッチダウンをあげたのだった。
この時点ではTFP(トライフォーポイント)が決まって同点になったに過ぎない。しかし、パスラッシュから生まれたインターセプトのビッグプレーはイーグルスに勢いを生み、キーナムのパッシングリムズを狂わすほどのインパクトを持っていた。勢いづいたイーグルスのニック・フォールズはロングパスを連発して計3タッチダウンをマークし、キーナムは3つのターンオーバーに絡む不調で、控えクオーターバック同士の戦いの明暗を分けた。
ペイトリオッツとイーグルスのスーパーボウルでの対戦は2004年シーズンに続き2度目だ。このときは24対21でペイトリオッツが勝利し、初の連覇を達成した。これを最後にスーパーボウルで連覇したチームはいない。連覇達成か初優勝か。決戦は日本時間2月5日(月)である。
第52回スーパーボウル特集 > カンファレンスの勝敗を分けたプレー
いけざわ・ひろし
- 生沢 浩
- 1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。