コラム

SNFのオープニングにスター選手10人、MNFでは国歌問題も

2018年08月26日(日) 12:45

キャリー・アンダーウッド【Photo by Wade Payne/Invision/AP, File】

いよいよ近づいてきた2018年NFLシーズン開幕を前に、アメリカのテレビ中継に関する話題が盛り上がりを見せている。まず紹介したいのが現地日曜夜に開催されるサンデーナイトフットボール(SNF)だ。

SNFは4大ネットワークの1つ『NBC』が制作・放送している。その人気は絶大で2017年から2018年にかけて、プライムタイムに放送されたシリーズ番組としては平均視聴者数が最も多かった。SNFがトップとなったのは7年連続でもある。さらに18歳から49歳の層では8年連続トップだ。

SNFの人気の秘密は直前に放送カードが変更されるフレキシブルスケジューリングなどもあって注目度の高い試合が放送されることもあるが、その一端を握っているのがオープニングだ。歌手キャリー・アンダーウッドが歌うテーマソング“Oh, Sunday Night”の映像はワクワク感を高めるのにぴったりで毎年注目される。そんなオープニングに今年は10人のスター選手が出演する。

1チームから複数の選手が出演するのは、やはり第52回スーパーボウル王者のイーグルスで、クオーターバック(QB)カーソン・ウェンツ、オフェンシブタックル(OT)レイン・ジョンソン、タイトエンド(TE)ザック・アーツ、ディフェンシブタックル(DT)フレッチャー・コックスの4人とのこと。

残りの6人は6チームから1人ずつの選出となっている。カウボーイズQBダック・プレスコット、ラムズQBジャレッド・ゴフ、バイキングスQBカーク・カズンズ、ジャイアンツRBセイクワン・バークリー、スティーラーズWRアントニオ・ブラウン、シーホークスQBラッセル・ウィルソンだ。

QBが5人とやはり人気のポジションであることが分かる。また、10人で計19回プロボウルに選出されており、5つのスーパーボウルリングを持つ。4人がドラフト1巡指名選手であり、なかでもバークリーは唯一の新人で、今年のドラフトで全体2位指名を受けた。ドラフト後、バークリーのジャージーが選手全体で最も売れるなど高い注目を集めているだけに今回の抜擢となったようである。

注目のオープニングはSNFスペシャルエディションとして、現地9月6日(木)のイーグルス対ファルコンズ戦で初放送される予定だ。どんな演出になっているか今から楽しみである。

一方、物議を呼んでいるのがスポーツ専門局『ESPN』が放送を担当するマンデーナイトフットボール(MNF)だ。ESPNのジミー・ピタロ社長が現地17日、MNFの番組内で国歌斉唱の場面を放映しないと発言したのである。

これまで何度も報道されてきたとおり、一昨年、試合前の国歌斉唱で当時49ersのQBだったコリン・キャパニックが人種差別への抗議として起立せず、その後、この行為が広がって物議を醸してきた。特に昨年、トランプ大統領が起立を強制するような発言をしてからは社会的な問題に発展。今年5月にはリーグ側がフィールドにいるすべてのチームおよびリーグ関係者が起立し、国旗および国歌に敬意を表さなければならないと定めた。起立しない個人は国歌斉唱が終了するまで、ロッカールームにとどまる、もしくはフィールド外にある同様の場所にとどまることができる。フィールドにいる個人が起立せず、国旗および国歌に敬意を示さない場合、リーグはチームに罰金を科す。チームも同様のルールを制定することができ、個人に罰金を科すことができるとする行動規範を成立させたものの、その策定に選手会が加わっていなかったとして抗議し、現在、両者で議論が続いている状態である。

MNFでの国歌斉唱の放送だが、実は昨シーズンも放送されたのは3試合だけで、うち2つは同時多発テロなど国家的な悲劇に関連した試合だった。そうしたこともあってピタロ社長は「当社では概して国歌斉唱を放映してこなかった。今年もそれが変わることはない」とコメントしている。さらに「われわれはNFLに伝えている。彼らが何かを依頼してきたことはないが、礼儀正しく良きパートナーとして自分たちのプランが何かを彼らに伝えてきた」と語り、リーグからの圧力などはなかったことを示唆している。

いずれにせよこの問題が依然としてくすぶり続けていることを再度露わにした形である。もやもやしたものがなくなり、すっきりと開幕を迎えられればいいのだが。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。