コラム

プレシーズン折り返し、ブレイディとファルコンズ守備が仕上がり順調

2018年08月24日(金) 04:41

ニューイングランド・ペイトリオッツのトム・ブレイディ【AP Photo/Charles Krupa】

プレシーズンは半分を消化し、チームによっては主力選手が早くも先発出場して調整を図った。サム・ダーノルド(ジェッツ)やベイカー・メイフィールド(ブラウンズ)など新人クオーターバック(QB)も第1週に比べて長い出場機会を与えられている。

際立ったのはトム・ブレイディの仕上がりの早さとファルコンズディフェンスのスピードだ。ブレイディはまだプレシーズン第2週にもかかわらずイーグルス戦に先発出場し、前半終了までフィールドに残った。スーパーボウルで悩まされたパスラッシュをものともせずにディフェンスの穴を的確にパスで攻撃し、自身の2つのタッチダウンパスを含む3つのタッチダウンドライブと2フィールドゴールをアシストしている。

さすがにアウトサイドへのロングパスはレシーバーとの呼吸が合わない場面があったが、レシーバーがインサイドにカットを切るルートやワイドオープンになったレシーバーへのパスはほぼ完璧に成功させた。

なかでも圧巻だったのは先制となったワイドレシーバー(WR)へのタッチダウンパスだ。オフェンシブライン(OL)のパスラッシュの隙間から漏れてきたパスラッシュをフットワークでかわしつつ時間を稼ぎ、プレイディの動きに合わせてエンドゾーンでパスコースをアジャストしたホーガンがほんの一瞬フリーになった隙に弾丸ライナーでパスを通した。

ナンバー1ターゲットのタイトエンド(TE)ロブ・グロンカウスキーが出場しなかったにもかかわらず、状況に応じて緩急を使い分けるパッシングのセンスは抜群で、40歳を超えた年齢からくる衰えは今シーズンも心配なさそうだ。

ファルコンズといえばオフェンスのチームとのイメージが強いが、チーフスと対戦したプレシーズン第2戦ではディフェンスの先発メンバーのスピードに目を見張るものがあった。試合結果だけ見れば14対3から14対28と逆転負けしており、決してディフェンス全体が褒められたわけではない。しかし、少なくとも試合序盤に出場したファーストチームディフェンスはチーフスの先発QBパトリック・マホームズを翻弄(ほんろう)するだけでなく、昨年のリーディングラッシャーであるカリーム・ハントやWRタイリーク・ヒルらスピードを武器とする選手に引けを取らないプレーを見せた。

ヒルとのマンツーマンで驚異的なクロージングスピードを見せたブライアン・プールやタッチダウンを阻止するパスカットをしたブリディ・ラーウィルソンやロバート・アルフォードといったコーナーバック(CB)の活躍が目立つ一方で、ディフェンシブタックル(DT)グレイディ・ギャレットのクイックネスやラインバッカー(LB)デューク・ライリーのラン守備も要所で威力を発揮している。

昨年のファルコンズディフェンスはトータル守備、失点ともにリーグトップ10入りを果たした。これはチームが初めてスーパーボウルに出場した1998年シーズン以来だ。

自慢のオフェンスもランニングバック(RB)テビン・コールマンがデボンタ・フリーマン不在を忘れさせるほどのビッグランを連発。リーグトップのオフェンスでNFLを席巻した一昨年の勢いを彷彿とさせるものだった。

あくまでもプレシーズンであり、これらがすぐにシーズンを占うものではないのだが、それでもブレイディとファルコンズディフェンスはほかのQBやユニットよりもいい状態で仕上がっている印象を受けた。まだプレシーズンはあと2週間続く。この間にほかのチームがいかに伸びてくるかが楽しみだ。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。