コラム

開幕への準備が進む新リーグ『AAF』

2018年11月18日(日) 12:19

アライアンス・オブ・アメリカン・フットボール【AP Photo/File】

来年2月の第53回スーパーボウル直後の開幕を目指す新プロリーグ『AAF(アライアンス・オブ・アメリカン・フットボール)』の設立準備がNFLに縁のある人物たちにより着々と進められている。

今年3月にテレビプロデューサーのチャーリー・エバーソル氏が発表した春季リーグと呼ばれるAAFは、NFL終了後の“フットボールがない”時期をレギュラーシーズンとするプロリーグだ。ビルズやコルツでジェネラルマネジャー(GM)を務め、その功績から殿堂入りも果たしているビル・ポーリアン氏が共同設立者となり、スティーラーズでセーフティ(S)としてプレーしたトロイ・ポラマル氏や元ジャイアンツのディフェンシブエンド(DE)ジャスティン・タック氏、元バイキングスDEジャレッド・アレン氏なども重役やアドバイザーとして加わっている。

リーグは以下の8チームと使用スタジアム、ヘッドコーチで構成される。フランチャイズはフットボール人気の高い都市で、やはりNFLで経験のあるコーチが多い。

<◆チーム名:スタジアム/ヘッドコーチ>

【東地区】
◆アトランタ・レジェンズ:ジョージアステート・スタジアム/ブラッド・チルドレス
◆バーミンガム・アイアン:レギオンフィールド・スタジアム/ティム・ルイス
◆メンフィス・エクスプレス:リバティボウル・メモリアル・スタジアム/マイク・シングレタリー
◆オーランド・アポロス:スペクトラム・スタジアム/スティーブ・スパリアー

【西地区】
◆アリゾナ・ホットショッツ:サンデビル・スタジアム/リック・ニューハイゼル
◆ソルトレイク・スタリオンズ:ライスエクルズ・スタジアム/デニス・エリクソン
◆サンアントニオ・コマンダーズ:アラモドーム/マイク・ライリー
◆サンディエゴ・フリート:サンディエゴカウンティ・クレジットユニオン・スタジアム/マイク・マーツ

現在、各チームのコーチ陣も発表されつつあり、レジェンズの攻撃コーディネーターにはファルコンズでクオーターバック(QB)としてプレーしたマイケル・ビックが就任している。

最初のシーズンは第53回スーパーボウルから6日後、2月9日に開幕し、10週に渡ってレギュラーシーズンが行われ、4月26日から28日の週末にチャンピオンシップが開催される予定だ。毎週1試合がケーブルチャンネル『CBSスポーツ・ネットワーク』で中継されるほか、無料のライブストリーミングも実施される。開幕戦と優勝決定戦は地上波のCBSが放送する予定だ。

気になる選手だが、1チーム50人のロスターとなる。地元人気を盛り上げるため、地域周辺の大学やNFLでプレーした選手が優先して招集されており、すでに629人と契約したという。選手の基本契約は3年25万ドルだが、勝利、成績、ファンエンゲージメントに応じてボーナスを出すとし、引退後のキャリアのための奨学金も設立される。

そんなAAFにとって最初のイベントとなるのが、現地11月27日にラスベガスで開催されるQBを対象とした“プロテクト・オア・ピック”、いわゆるクオータバックドラフトだ。ワイドレシーバー(WR)としてスティーラーズで2度のスーパーボウル優勝経験を持ち、AAFのフットボール開発責任者に就任したハインツ・ウォード氏が主催し、CBSスポーツ・ネットワークが中継を行う。

AAFと契約したQBはプレーした大学の場所により、すでにチームが割り当てられている。大学がAAFの地域外だった場合は所属したNFLかCFLのチームの場所で割り当てられ、それもない場合は割り当てられない。そしてドラフトの方式はその名称どおり、指名順が来たチームは割り当てられたQBを維持、プロテクトするか、指名、ピックするかを選ぶ。プロテクトを選んだチームはそのQBを獲得することができ、ピックを選んだチームは最初の判断が一巡した後で残ったQBの中から指名を行う。

AAFはパッカーズとコルツで4試合先発経験のあるスコット・トルジーンやバッカニアーズで5試合先発経験のあるジョシュ・ジョンソン、2016年にジェッツから2巡指名を受けたクリスチャン・ハッケンバーグなどと契約。夏にコンバインを開催し、さらに11月12日から14日までクオーターバックのスキル評価のためのキャンプを行った。

NFLへの熱が残る時期を狙い、地元人気を強く意識した戦略をとるAAFが果たして成功するか注目される。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。