NFLが選手データ計測の契約を更新
2019年08月26日(月) 07:25NFLとゼブラ・テクノロジーズはパートナーシップ契約を2022年のスーパーボウルまで延長したと発表した。
トラッキング技術に優れる同社は2014年に初めて契約を結ぶと、全選手のショルダーパッドにGPS機能や加速度計などを内蔵し、無線で通信できるRFIDタグを装着し、データの収集を開始した。さらに2017年には公式ボールメーカー、ウィルソン・スポーティング・グッズの協力の下、ボールにもRFIDタグを内蔵し、ボールの速度、移動距離、回転数などを毎秒25回計測し、データを送信するシステムも導入している。
現在、31あるNFLのホームスタジアムの全てに受信装置が導入されており、今回の契約更新に合わせイギリスのウェンブリー・スタジアムやトッテナム・スタジアム、メキシコのエスタディオ・アステカ、カナダのインベスターズグループ・フィールドという海外の試合会場にも導入されるということだ。
こうして得られたデータの一部はテレビ中継などに活用されているほか、『Next Gen Stats』(次世代スタッツ)の名称で一般公開されている。専用ウェブページでは2月に開催された第53回スーパーボウルでペイトリオッツのクオーターバック(QB)トム・ブレイディが投じたパスの位置や成否、インターセプトがチャートとして掲載されている。またMVPを受賞したワイドレシーバー(WR)ジュリアン・エデルマンがパスを受けるために走ったルートやレシーブ後のランの軌跡といったチャートなども見ることができる。
ただこうして一般に確認できるデータは実際に計測されている全データ量の10分の1ほどだと言われているのだ。選手のデータはチームにとって試合に勝利する、強いチームを作るためには貴重であり、多くの人やライバルチームに晒したくないという事情があるのである。
関係者の証言によれば、特に重宝しているのは意外にもキャンプやトレーニングでのデータだという。活動量のデータから選手にかかっている負荷を測定し、ケガの予防や練習のメニューを変更するなどに活用されているとのことだ。
一方、ゼブラ・テクノロジーズはもともと、企業の人、モノ、業務の状態をリアルタイムで把握できるソリューション・サービスを提供する数十年の歴史を持つ企業である。スポーツとは縁がなかったが、NFLとの契約によって一躍注目を集めることとなった。契約後同社の株価が166パーセントも上昇したほどである。
そんな同社はNFLをきっかけに他のスポーツにも進出しようとしている。カレッジフットボールではドラフト指名有力選手が多数出場した昨年のシニアボウルで導入された。またプロバスケットボールNBAの育成リーグ、Gリーグやサッカーの複数のプロリーグで試験導入もされている。今後ラグビーやオーストラリアンフットボールなど世界のスポーツに展開していく構想をもっているという。
同社のジョン・ポラード副社長は「我々はNFLとの提携を本当に満喫しています。運営、物流、小売業に長年従事する公開企業として、私たちの中核ビジネスはすべて、リーグと行っていることに関連しており、本当に楽しんでいます。NFLの強力なブランドと協力している各チームの恩恵を受けています」とNFLとの提携の意義を声明で強調した。
NFLとゼブラ・テクノロジーズのパートナーシップはまさにウイン・ウインな関係となっているようだ。
わたなべ・ふみとし
- 渡辺 史敏
- 兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。