コラム

好調のビルズと49ers、今季の期待度は?

2019年09月29日(日) 06:05

バッファロー・ビルズのファン【AP Photo/Adrian Kraus】

シーズン第3週を終えて全勝は7チームいたが、その中でAFCはビルズ、NFCでは49ersの健闘が目を引く。開幕3連勝は、ビルズは2011年、49ersは1998年以来の快挙だ。

対戦相手に恵まれたのは事実だ。奇しくも2チームが闘った相手の勝敗の合計はともに1勝8敗で、それぞれ未勝利のチームとの対戦が2回あった。それでも実力が拮抗(きっこう)しているNFLで序盤に3勝するのは難しい。ESPNのニック・ワゴナー記者によれば開幕3連勝のチームは73.8%の確率でプレーオフに進むのだという(現行フォーマットになった1990年以降)。

では、具体的にどこが改善されたのか。

ビルズも49ersも何の土台もなく急に強くなったのではない。ビルズは一昨年のシーズンにプレーオフに出場しているし、49ersも同じ年にクオーターバック(QB)ジミー・ガロポロを先発起用してから5連勝でシーズンを終えた実績がある。

ビルズは昨季、先発だったタイロッド・テイラーを放出し、ドラフト1巡で指名したQBジョシュ・アレンをスターターとした。昨年はアレンに実戦経験を積ませるためのシーズンと割り切り、勝敗は二の次としてアレンを起用し続けた。

レイブンズのラマー・ジャクソンやブラウンズのベイカー・メイフィールドほど目立ちはしなかったが、アレンはパスのコントロールや判断力を堅実に改善させてルーキーシーズンを終えた。

ビルズと言えばランオフェンスが武器だが、キャンプではエースのルショーン・マッコイにフリーエージェント(FA)で加入のベテラン、フランク・ゴア、新人のデビン・シングレタリーを競わせた。その結果、チームを追われたのはマッコイで、ゴアとシングレタリーがランオフェンスを支える。現在、シングレタリーは故障で戦列を離れているが、ネームバリューではなく実力があるものがポジションを得るという首脳陣のメッセージが強烈に選手に伝わったのだろう。60分間を戦い切るというメンタリティーが今季の戦い方には見て取れる。

第4週はいよいよペイトリオッツとの全勝対決だ。ここが真価の問われる試合となる。

49ersは昨季、期待のかかったガロポロが序盤でいきなり膝の靱帯を断裂してシーズン絶望となったことで躓いた。その躓きは予想外に大きく、シーズンが終了するまで巻き返すことはできなかった。

今季の戦い方も安定感が特に優れているとは言えない。第3週のスティーラーズ戦でも5つのターンオーバーを喫した。ディフェンスもNFL初先発のスティーラーズQBメイソン・ルドルフにロングパスをいくつも決められた。

しかし、肝心のところで2回あったテイクアウェーのチャンスを着実に得点に結びつけ、しかも2度目のターンオーバーで決勝タッチダウンを奪うなどの勝負強さを見せた。決して試合巧者とは言えないのだが、戦い方が拙くても結果的に勝利を手にするという事実は重要だ。

49ersの第4週の対戦相手はベンガルズ(0勝3敗)なので連勝を伸ばすチャンスはある。その次が同じく開幕3連勝中で地区ライバルのラムズとの直接対決第1ラウンド(於ロサンゼルス)だ。これも49ersの実力が試される試合となる。

シーズン前の評価が高くなかった両チームだが、NFLで3連勝はまぐれではできない。ペイトリオッツやラムズといったプレーオフ常連組とどういう戦いをするのか楽しみである。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。