コラム

スーパーボウル前哨戦? 注目のレイブンズ対49ers

2019年12月01日(日) 03:44


ボルティモア・レイブンズのラマー・ジャクソン【AP Photo/Marcio Jose Sanchez】

サンクスギビングデーのトリプルヘッダーで幕を開けたシーズン第13週は、約2カ月後に迫った第54回スーパーボウルと同じ顔合わせになる可能性のある好試合が組まれている。ペイトリオッツと並びNFL最高成績の49ers(10勝1敗)が7連勝中のレイブンズ(9勝2敗)と対戦するゲームだ。この時期に同地区や同じカンファレンスではなく、インターカンファレンスの試合がここまで注目されるのは珍しい。

この顔合わせは第47回スーパーボウルの再戦でもある。ニューオリンズで行われ、ハーフタイム直後に停電のため30分間の中断があった大会だといえば思い出す読者も多いだろう。この時は第4クオーターの49ersの猛追をかろうじてかわしたレイブンズが球団史上2度目のリーグ制覇を達成した。

あれから7年が経ち、当然ながら両チームを取り巻く環境は大きく変わった。49ersはジム・ハーボウHC(ヘッドコーチ)がチームを去り、クオーターバック(QB)コリン・キャパニックはフリーエージェント(FA)となったままいまだ所属チームを探している。過去4年間は負け越しを経験するなど苦しい時期を過ごしてきた。

レイブンズは看板のディフェンスを支えたレイ・ルイス、エド・リード、テレル・サッグス、ハロティ・ナタが引退もしくは退団し、こちらもプレーオフから遠ざかる期間を経て昨年に復活を果たした。その原動力となるのがQBラマー・ジャクソンだ。スーパーボウルで対戦した時に49ersの攻撃コーディネーターだったグレッグ・ローマンが今年はジャクソンの指導者としてプレーコールを担当する。

今年の注目対戦は49ersのディフェンスがいかにジャクソンを止めるかにあるだろう。走ってよし、投げてよしのジャクソンに対する効果的な防衛策を今のNFLは持っていない。強力なパスラッシュと安定したセカンダリーでここまで勝ち進んできた49ersがどのような秘策をもって対抗するのかは注目に値する。

49ersでは新人ディフェンシブエンド(DE)ニック・ボサが「ゲームチェンジャー」として活躍中だ。ボサとジャクソンのマッチアップは勝敗を左右するカギとなる。

インターカンファレンスの試合ではあるが、両チームにとってそれぞれ重要な意味を持つ。49ersと同地区のシーホークスは1ゲーム差で追随する。直接対決の1回戦ではシーホークスが勝っているだけに、ここで負けるようだと勝敗数では並ぶがタイブレークの条件では不利になり、実質0.5ゲーム差で後れを取る。9勝2敗のセインツの動向も気になるところだ。

レイブンズもプレーオフでAFC第1シードを勝ち取るために1試合でも多く勝っておきたい。1ゲーム差で追うペイトリオッツには直接対決で勝っているからシーズン終了時に同勝率で構わない。ただ、残り1カ月でペイトリオッツに2ゲーム差をつけられてしまうと追いつくのが難しくなる。レイブンズにとってもやはり負けられない試合だ。

NFLはレギュラーシーズンの最終月を迎え、プレーオフに向けて勝ち星を増やすだけでなく、チームの実力をピークに向けてあげていく重要な期間だ。49ersとレイブンズにとって第13週の対戦は今後のチームに勢いをつけるためにも極めて意味のある試合となるのだ。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。