コラム

リベラHC解雇で始まるパンサーズ再編

2019年12月08日(日) 07:18


カロライナ・パンサーズ【AP Photo/Mike McCarn, File】

4連敗で5勝7敗となったパンサーズはチーム歴代最多勝(76勝)のヘッドコーチ(HC)ロン・リベラを解雇した。球団オーナーのデビッド・テッパーにはシーズン終了後まで様子を見る意向もあったようだが、同じNFC南地区のセインツが早々とディビジョン優勝を決め、プレーオフ出場が極めて難しくなったことからこのタイミングでの決断となった。新HC探しで他チームに出遅れたくないとの気持ちもあったようだ。

残り4週はディフェンシブバック(DB)コーチのペリー・フューウェルがHC代行を務め、攻撃コーディネーターのノーブ・ターナーが補佐をする。ターナーはレッドスキンズやレイダーズ、チャージャーズでHCの経験がある。

リベラ解任の可能性は昨シーズン終了後にもあった。昨年は6勝2敗の好スタートを切りながら7連敗を喫し、最終的には7勝9敗に終わった。リベラの責任を問う声は当然あがったが、チームを買収したばかりのテッパーは続投を決断した。

しかし、頼みのエースクオーターバック(QB)キャム・ニュートンが2試合に出場しただけで今季絶望となり、後継のカイル・アレンはここまで5勝5敗の成績。ドラフト外入団のアレンにニュートンの代役は望むべくもなく、チームは苦戦続きだ。

リベラ解任はこれから起こるパンサーズの再編への序章に過ぎない。ジェネラルマネジャー(GM)マーティ・ハーニーはテッパーの信頼が厚く、来季以降も留任する見込みだ。しかし、ハーニーを補佐する立場のフロント陣は大きな入れ替えがあると思われる。テッパーはすでにアシスタントGMや球団副社長に新たな人材を入れることを宣言している。

フロントがどのような陣容になるかにかかわらず、大きな変化がパンサーズに起きることは間違いないだろう。その筆頭にあるのがQBだ。

押しも押されもせぬスーパースターだったニュートンだが、この2年は肩の負傷でほとんど活躍できなかった。昨年終盤は20ヤードを超えるパスが投げられないほどの重傷だったといわれる。こうした状況が2年も続けばさすがにその地位も危うい。アレンでは残念ながらフランチャイズQBは務まりそうになく、新たな人材を求める可能性がある。

パンサーズのオフェンスはニュートンの存在を大前提として組み立てている。ニュートンの運動能力や肩の強さを存分に生かせるようにデザインされているのだ。そのニュートンに代わる人材がQBを務めるのであれば当然オフェンスの方針や人員構成も変わらざるを得ない。

レイブンズのラマー・ジャクソンのような人材が見つかれば話は別だが、ニュートンやジャクソンとはタイプの違うポケットパサータイプが新QBとなればオフェンシブライン(OL)のブロッキングスキームが変わり、ワイドレシーバー(WR)はよりディープスレットの人材が必要となる。

リベラはディフェンス畑の出身だったが、オフェンスマインドの人物がHCに就任すればその人のフィロソフィーが色濃く反映される。その人物がニュートンの将来性に疑問を感じるのであれば上記の変化が断行されるに違いない。ディフェンス出身のHCになればもちろん攻撃コーディネーターの意見が尊重される。

テッパーはHC交代によってチームが再建期に入ることは避けたいはずだ。可能な限り短期間で再びプレーオフを目指せるチームにしたい。そのためにHC探しを今から始め、来るべき再編に備えるのだ。どんな変化が起き、それにどう対応するのか。フロントを含めたチームの総力戦が始まる。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。