コラム

いよいよ開幕、XFLは成功するか

2020年02月08日(土) 14:50

XFL

第54回スーパーボウルはチーフスが49ersを破って2度目の優勝を果たした。これでNFLの2019年シーズンは終了し、激戦の数々への余韻に浸るファンも多いことだろう。そんないまだ残るフットボールへの熱を活用しようと、新たなフットボールシーズンが始まる。現地8日に2001年以来の開幕を迎えるプロリーグXFLだ。

プロレス団体WWEの会長兼CEO、ビンス・マクマホン氏が3年間で5億ドルを費やして復活させるXFLは東西2地区4チームずつ計8チームで構成され、レギュラーシーズン10週を戦った後、上位2チームがプレーオフに進出、4月26日に最初のチャンピオンシップが行われる予定だ。レギュラーシーズンは土曜2試合、日曜2試合が組まれている。

テレビ放映権はFoxとABC/ESPNが獲得しており、ほとんどの試合が地上波もしくはケーブルチャンネルで放送される。開幕戦のシアトル・シードラゴンズ対DCディフェンダーズ線は地上波のABCが放送予定だ。業界筋によれば地上波で平均150万人、ケーブルで80万人の視聴が期待されているという。

使用されるスタジアムにはメットライフ・スタジアムやレイモンド・ジェームズ・スタジアム、センチュリーリンク・フィールドが含まれ、この3カ所はNFLでも使用されている大型スタジアムだ。一方、ディフェンダーズが使用するアウディ・フィールドはもともとサッカー用のスタジアムで2万人しか収容できない。2万人台のスタジアムは3カ所ある。むしろこれがXFLの考えている適正規模で、平均入場者は1万から1万2,000人と予測しているということだ。ジェフリー・ポラックXFL社長はこの点について「ライブの観客を確保することは重要ですが、必要な規模になるまでには時間がかかることを理解しています。それは問題ありません」とあくまで身の丈にあった経営を目指すとしている。

一方で、さまざまな面で工夫が凝らされてもいる。まずルールだが、キックオフとタッチダウン後のトライフォーポイント(TFP)が特徴だ。キックオフについてはキッカーは自陣25ヤードからキックする。カバレッジチームはリターン側の35ヤードにラインアップし、リターンチームは30ヤードラインにセットアップする。これらの選手がスタートできるのはリターナーがボールに触れるか、ボールが地面に触れてから3秒経って後に制限された。これによりキックオフプレーの魅力を残しつつ、選手の安全度を上げようというのである。

TFPについてキックは選択できない。代わりに2ヤード、5ヤード、10ヤードからのプレーを選択して実行する。成功した場合、それぞれ1点、2点、3点が追加される。

試合の運営面ではNFLがプレー間に40秒クロックを採用するのに対し、XFLでは25秒クロックとなっている。これはXFLが試合時間を3時間以内にしたいためで、そのため各ハーフの最終2分以内を除き、パス失敗やアウトオブバウンズのプレーでもクロックは止まらない。さらにハーフタイムは10分に短縮された。

演出面での工夫もある。試合中もタッチダウンやターンオーバーなど重要なプレーが出ると選手やコーチへのサイドラインインタビューが行われ、放送だけでなくスタジアムの大画面でも表示される予定だ。さらにプレーでの激しい衝撃音や選手達が何をしゃべっているか拾うため、キーとなる選手にはマイクが装着され、やはり放送やスタジアムで流される。これは旧XFLでも実施されていた。

ファンにスタジアムに来てもらうための工夫もある。4人家族を想定し、安いチケットなら4人で100ドルにおさまるようチケット価格が設定された。さらに駐車場代と飲食代も合わせて100ドルに収まるようになっているという。2019年NFLの場合、これらの合計の平均は540ドルに達しており、気軽に観戦に行ける価格設定を目指しているのがわかる。

ただ安いチケットだけではない。豪華なスイートボックスも販売されているし、200ドル前後のサイドライン席も設けられる予定だ。

ファンサービスという点では必ずチームかリーグが主催するテールゲートパーティーが開催される。飲食や音楽バンドの提供やグッズ販売の他、ロッカールームに向かう前の選手がグリーティングに訪れることも予定されているとのことだ。

またフィールドでも練習開始前にフラッグフットボールの試合を行ったり、チーム入場時にファンがトンネルを作ったりといったことも考えられている。

さまざまな創意工夫で2度目の開幕に臨むXFL。今度こそスプリングフットボールは成功するだろうか。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。