FA市場で人気のパスラッシャー、チームに利をもたらすのは?
2020年03月09日(月) 05:53NFLスカウティングコンバインが終了し、今オフのフリーエージェント(FA)市場解禁(3月18日アメリカ東部時間16時、日本時間19日6時)が近づいてきた。
トム・ブレイディ(ペイトリオッツ)やダック・プレスコット(カウボーイズ)が本当にFAとなるのか、ライアン・タネヒルとマーカス・マリオタが同時にFA市場に出る可能性があるタイタンズはどのような判断を下すのか、チャージャーズと決別宣言をしたフィリップ・リバースを獲得するのはどこなのかなど、例年以上にベテランクオーターバック(QB)の動向が注目される。
その一方で売り手市場となりそうなのがパスラッシャーだ。NFL.comが選出する今オフの注目のFA(候補)101でもトップ10のうち4人がエッジラッシャーまたはディフェンシブエンド(DE)だ。
NFL.comが最も価値あるFA候補としているのがジェイデビオン・クロウニーである。2014年にドラフト全体1位指名を受けてテキサンズに入団した。最初の2年間は故障もあってバスト(期待外れ)のレッテルも張られたが3年目でようやく開花。J.J.ワットとともにパスラッシャーとして活躍した。昨年はシーホークスに移籍し、キャリア初のインターセプトリターンタッチダウンを記録している。
クロウニーとシーホークスはマッチする関係に思えるが、FAとなれば獲得に名乗りを上げるチームは少なくないだろう。ただし、契約年数と総額年俸でクロウニーの望む内容が手に入れられるかどうかは不透明と言える。コンスタントに高いレベルのパフォーマンスを発揮できるかについて疑問符が付くからだ。故障が多いのも獲得を考えるチームにとっては気になる点だろう。
バッカニアーズのシャック・バレットはブロンコスからの移籍1年目で初めて全16試合に先発出場を果たし、19.5サックという驚異的な成績を残した。チャンドラー・ジョーンズ(カーディナルス)を0.5サック上回るリーグ1位の成績だった。
ブロンコスでのキャリア最多が5.5サックだったから大きな飛躍である。これをどう評価するかでバレットの市場価値が決まる。バッカニアーズは、彼の躍進がチームの起用法によるものだと判断するなら是が非でも再契約するべきだ。ただし、バレット側も19.5サックという数字を武器に強気で交渉してくるだろうから相当の覚悟が必要だ。逆に昨年の成績をまぐれと判断すればフランチャイズ指名などで長期契約を後回しにする可能性もある。
他チームはまずバッカニアーズの出方を見てからやはり同じような評価方法をとるだろう。フランチャイズ指名されれば、おとなしく手を引くチームが多いとみる。
ヤニック・ガーコウはジャガーズからフランチャイズ指名を受けるものと予想されるが、本人は移籍を希望していると伝えられる。パスラッシュのみならずランディフェンスやアンダーニースのパスカバーなど広く活躍できる選手だけにFAとなれば争奪戦が繰り広げられるだろう。
ジャガーズがフランチャイズ指名からの長期契約にこだわるか、ホールドアウトの危険を避けるためにあえてFA市場に放つか、どちらの選択肢をとるかに注目が集まる。
49ersのアリック・アームステッドはニック・ボサとディー・フォードの陰に隠れてパスラッシャーとしての注目度は高くなかったかもしれないが、ランディフェンスも含めた総合的なDEとしての能力や、左右両サイドを守ることができる多才さから評価は高い。49ersは慰留のために最大限の努力をすると思われるが、もしFAとなるなら獲得しておいて損はないベテランだ。
有能なパスラッシャーはいつの時代も引く手あまただ。これらの選手はFA市場でどのような評価を受けるのか。ベテランQBの動向とともにこちらの動きも気になる。
いけざわ・ひろし
- 生沢 浩
- 1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。