コラム

1家族での平均観戦費用は553ドル、コロナ禍でゲームデー収益は大幅減に

2020年11月16日(月) 07:26

ラスベガス・レイダースの本拠地、アレジアント・スタジアム【AP Photo/Isaac Brekken】

新型コロナウイルスの流行によって無観客や入場人数を厳しく制限したレギュラーシーズンが続くNFLの今季ファン・コスト・インデックス(FCI)をスポーツマーケティング企業チームマーケティングレポートが発表した。

FCIは大人2人と子供2人というアメリカの平均的な家族がNFLのゲームを生観戦するといくらぐらいかかるかという平均観戦コストをチーム毎に同社が調査、算出した指標だ。平均価格のチケット4枚、スタジアムで販売されているビール2杯、ソフトドリンク4杯、ホットドッグ4つ、駐車場代1台分、帽子2つの合計額となっている。今回はパンデミックが起こる前の状況が対象となった。

それによれば今シーズンのFCIの平均は553.53ドルで昨年より3.9%、13.02ドルの増加となっている。これはここ10年間の平均増加率3.5%をわずかに上回っている。チケットの平均価格は104.73ドルで、昨年より4.5%上昇、2.38ドル増加した。

最も安く観戦できるのはベンガルズで、2年連続チケット価格、FCIともリーグ最少となっており、それぞれ79.37ドル、424.28ドルだった。

一方、最もお金がかかるのはレイダースで、FCIは783.86ドルに達している。今シーズン、オークランドからラスベガスに移転し、新設のアリジアント・スタジアムをホームとしたレイダースは平均チケット価格を昨シーズンから74.8%、65.69ドルも引き上げ153.47ドルとしたことが要因となっている。FCIも前年度比で59.3%増加している。

FCI上位には49ersの667.36ドル、イーグルス657.22ドル、ペイトリオッツ655.78ドル、パッカーズ655.78ドルと続く。逆に、お手頃なのはベンガルズからジャガーズ446.49ドル、ブラウンズ450.62ドル、カーディナルス453.30ドル、ビルズ457.8ドルだ。

チームにとって多額の建設費をかけた最新のスタジアムのお披露目はチケット価格などを上げる大きなチャンスとなる。ただやはり、今年オープンしたロサンゼルス近郊のSoFiスタジアムをホームとするチャージャーズとラムズは少し様子が異なる。チャージャーズは2万7,000席しかなかったディグニティヘルス・スポーツパークから7万人収容のSoFiスタジアムに移ったため、平均チケット価格を52.7%も下げて78.38ドルとしたのである。これによりFCIも38.5%減の504.5ドルとなっている。

対してラムズは7万7,000人収容のロサンゼルス・メモリアル・コロシアムからの移転とあって平均チケット価格は13.9%減の101.62ドルだ。FCIも5%減にとどまり、597.46ドルは8位につける。さらに大幅増になったプレミアムシートの価格を大きく値上げしている。

ただし、ここまではあくまでもパンデミックの影響がなかった場合の数字である。各チームにはスイートボックスなどを除けば1試合平均930万ドルの売り上げがあり、8試合のホームゲームで7,500万ドルの収益が見込まれていたのだ。しかし、それが大きく減ることになってしまった。今回、各チームがゲームデーの売り上げにおいてどれほどの減収が見込まれているかも発表されている。制限はあっても観客を入れて試合を開催しているチームについてはその分も計算されている。

それによればシーズンを通しての平均減収額は8,645万ドル。最も減収が大きいのはワシントン・フットボール・チームで1億2,415万ドルに上る見込みだ。さらに49ersの1億1,240万ドル、パッカーズの1億1,209万ドルと続く。上位6チームはいずれも無観客試合が続いているチームである。

カウボーイズは本来の収益見込みが1億4,437万ドルで最も多く、減収も最も多くなりそうだったが、ホーム開幕から約2万5,000人を入れて開催できており、3,910万ドル余りの収益を見込める予定だ。それでも損失は1億526万ドルに上る。

ちなみに最も減収が少ないのはやはりベンガルズで3,811万ドル減となっている。これはもともと平均観客数が4万7,179人と最も少なく、見込み収益も4,615万ドルだったことが大きい。

FCIからも今シーズンの特別な状況が見えてくるのだ。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。