好調イーグルス、試練の中盤を乗り越え勢い維持なるか
2016年09月29日(木) 03:56フィラデルフィア・イーグルスが好調だ。第3週を終えて5チームに絞られた無敗チームのひとつで、NFC東地区の首位に立っている。
その中心にいるのが新人クオーターバック(QB)のカーソン・ウェンツだ。早くもアーロン・ロジャースやペイトン・マニング、ブレット・ファーブなどと比較する声も聞かれる。開幕前は不安材料の方が多かった。ドラフト全体2位指名とはいえ、サム・ブラッドフォードの控えという位置づけで、しかもプレシーズン1戦目で負傷して、その後は実戦から離れていたためだ。
ブラッドフォードがバイキングスにトレードされ、チェイス・ダニエルを飛び越える形で開幕先発に指名されたが、ヘッドコーチ(HC)ダグ・ピーダーソンでさえもここまでの活躍は期待していなかっただろう。
ウェンツは3試合を消化してパスは64.7%の成功率、5つのタッチダウンに対して被インターセプトはまだない。レーティング103.7は3試合に先発したQBの中では5番目に高い数字だ。
スタッツもそうだが、ハドルの中やプロテクションのポケットの中でのプレーぶりも新人離れしている。ノースダコタ州立大学という、いわゆるスモールカレッジの出身でNFLの競技レベルに順応できるかも懸念材料のひとつだったものの、杞憂に過ぎなかった。
ウェンツを支えるサポーティングキャストも豊富だ。決して突出したスター選手がいるわけではないとはいえ、例えばランニングバック(RB)ライアン・マシューズはラン(33回で104ヤード、3タッチダウン)とパス(15回で204ヤード、2タッチダウン)でそれぞれチームトップに立つなど多彩な活躍をしている。ダレン・スプロールズもランとパスで貢献しており、RBへのパスが多いのがここまでのイーグルスのオフェンスの特徴だ。
そして、忘れてはならないのがディフェンスの存在だ。パントリターンでのタッチダウンを除けば3試合合計の失点はわずか20。ダントツのリーグトップである。第3週には過去2試合で計62得点のピッツバーグ・スティーラーズをわずかフィールドゴール1本に抑え込んだ。
ジム・シュワルツ守備コーディネーター(DC)は今では少数派となった4-3守備を駆使し、ラッシュ力の強いディフェンスライン(DL)を育てた。ディフェンシブエンド(DE)ブランドン・グラハムとディフェンシブタックル(DT)フレッチャー・コックスはいずれもチームトップの3サックを記録している。
ファーストダウン更新の阻止率とレッドゾーンでのディフェンスもリーグで5位以内に入っており、相手に長いドライブをさせないことで得点機を与えない戦略が奏功していることが分かる。
第4週はバイウイークだが、その後はスケジュールが一気に厳しくなる。バイ明けの第5週は強肩パサーのマシュー・スタッフォード率いるデトロイト・ライオンズとの対戦でパスディフェンスが試されることになる。そして、第7週にミネソタ・バイキングスと対戦した後、ダラス・カウボーイズ、ニューヨーク・ジャイアンツとのディビジョン対決があり、第11週からはシアトル・シーホークス、グリーンベイ・パッカーズ、シンシナティ・ベンガルズとの連戦だ。
この中盤を乗り切る力があればイーグルスは今年のプレーオフで台風の目というべき存在になるだろう。新生イーグルスに試練の時期がやってくる。
いけざわ・ひろし
- 生沢 浩
- 1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。