ビル・ベリチックとの“自然な緊張状態”が決別の理由だったと語るトム・ブレイディ
2025年03月26日(水) 11:40
どれほどの“G.O.A.T.(史上最高の選手)”であっても、いつかは決断の時を迎える。
元クオーターバック(QB)トム・ブレイディは、自身の週刊ニュースレターの中で、20年間にわたりニューイングランド・ペイトリオッツの王朝を築いた後、唯一フリーエージェント(FA)となった2020年当時の心境を振り返った。殿堂入りが確実とされるブレイディは、年月を重ねる中で元ヘッドコーチ(HC)ビル・ベリチックとの間に、目指す方向にわずかなズレが生じていたことに言及した。
「僕が唯一FAを経験したのはキャリアの終盤で、それは成績不振の控え選手やルーキー契約最終年の若手が迎えるFAとはまったく意味合いが違うものだった」とブレイディはつづっている。
「僕の中でFAへの決断は、2、3年の間、頭の片隅にぼんやりと存在していた。ただ、2020年3月、わずか数日のうちに状況が一気に動いて、その時が思ったよりも早く訪れることを悟った。実際のところ、20年も共に過ごしていれば、ベリチックHCと僕のキャリアの進む方向性、そしてペイトリオッツがフランチャイズとして描く未来との間に、自然な緊張状態が生まれていた。それは、袂を分かつか、どちらかが優先順位を見直すことでしか解消できない類のものだった」
その“自然な緊張状態”の末に、ブレイディはタンパベイ・バッカニアーズと契約。新天地では衰えを指摘する声を完全に払拭し、フロリダでの1年目にスーパーボウル制覇を果たすなど、キャリアの集大成にふさわしい実績を築いた。バッカニアーズでは通算50試合に出場し、108タッチダウンを記録している。
一方、当時のペイトリオッツは、ブレイディのスキルを最大限に活かすためのロースターを整えるには至っていなかった。
FAのプロセスについて、ブレイディは自身が何を重視するかを明確に整理したと説明している。
「40代に差しかかり、子どもたちは学齢期に入り、自分の身体には20年分のダメージが蓄積している。そんな中で、今の自分にとって本当に大切なことは何かを問い直した」とブレイディは振り返っている。
「最終的に出てきたのは20項目ほどのリストで、それぞれに重要度を1から3のスケールで評価していった。たとえば、優れたスキルポジションの選手の存在は重要度3で、(ワイドレシーバー/WR)マイク・エバンスやクリス・ゴッドウィンといった選手がいたバッカニアーズはその項目で3を獲得した。ヘッドコーチも同様に重要度3で、バッカニアーズのブルース・エリアンスは満点だった。試合当日の天候は2、練習環境は3。報酬ももちろんリストに入ってはいたけど、最優先事項ではなかったし、トップ10にも入っていなかった。もちろん、重要度3ではなかった」
「ちょうど5年前、最終的に僕がバッカニアーズを選んだのは、これら20項目程度の評価を総合した結果、ペイトリオッツを上回るスコアを出したから。それだけのことだ」
今回のブレイディの助言は、2025年にFAとなった選手たちにとって、ややタイミングが遅かったかもしれない。新シーズンに向けてすでに多くの選手が新天地を決めている。それでも、NFL史上屈指の準備の鬼が、人生の一大決断にどう向き合ったのかは非常に興味深い。
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