チーフスがカンザス州のスタジアム資金調達の期限延長を要請、州境を越えて移転の可能性も
2025年06月28日(土) 09:42
カンザスシティ・チーフスがカンザス州に対し、スタジアム資金調達計画に関する6月末の期限の延長を要請した。これは、チーフスがミズーリ州から州境を越えて移転する可能性が現実味を帯びてきたことを示している。
チーフスのマーク・ドノバン社長は現地26日(木)に、カンザス州上院議長タイ・マスターソン宛ての書簡で期限の延長を要請。この書簡の写しは『Associated Press(AP通信)』が入手した。ドノバン社長はチーフスが新スタジアム開発計画において“大きな進展”を遂げているものの、この取り組みを“完全に実現する”ためにはさらに時間が必要だと説明している。
カンザス州立法調整協議会は7月7日(月)にインセンティブの期限延長について検討する予定だ。
マスターソンは「マーク・ドノバンからの書簡は、この歴史的プロジェクトをカンザスにもたらす取り組みが着実に進展していることを示している。現在はレッドゾーンに突入した段階にあり、この延長によって関係者たちは、確実にボールがゴールラインを越えるよう、十分な時間を確保できる」と述べた。
MLBのカンザスシティ・ロイヤルズとチーフスは50年以上にわたり、ミズーリ州カンザスシティ東部にあるトルーマン・スポーツ・コンプレックスで試合を行ってきた。この施設には、GEHAフィールド・アット・アローヘッド・スタジアムとカウフマン・スタジアムがあり、駐車場が共有されている。しかし、ジャクソン郡とのリース契約が2031年1月に満了を迎えるため、両チームは数年間にわたって今後の方針を模索してきた。
ドノバン社長はマスターソン宛ての書簡の中で、カンザス州が依然として魅力的な選択肢であることを示唆しており、次のようにつづっている。
「私たちは共に、世界有数のドーム型スタジアム、新しいチーム本部、最先端の練習施設、活気あふれる複合用途のエンターテインメント地区を軸に、ナショナル・フットボール・リーグをカンザスにもたらす機会を得ている」
昨年、ジャクソン郡の有権者はアローヘッド・スタジアムの8億ドル(約1,159億0,521万円)規模の改修、およびロイヤルズのためにカンザスシティ中心部に20億ドル(約2,897億6,302万円)規模のボールパーク地区を建設する計画の資金を支援するための売上税の延長案を否決した。
ミズーリ州の地方および州当局が別のスタジアム資金調達計画を検討している間に、カンザス州の議員たちは迅速かつ積極的に、新スタジアムの建設費用の最大70%を賄うための債券発行を承認した。
多くの人は、チーフスとロイヤルズがカンザス州の提案をミズーリ州からより良い条件を引き出すための交渉材料として利用すると考えていた。ミズーリ州カンザスシティのクイントン・ルーカス市長も、「両チームは非常に有利な立場にある」と認めている。
ミズーリ州のマイク・キーホー知事は6月中旬、竜巻で甚大な被害を受けたセントルイス地域への災害支援を含む、スタジアム資金調達策を承認するため、議会に対して特別会期を招集した。可決された法案では、ミズーリ州内の新設または改修されるスタジアムに対し、建設費の最大50%を賄う債券の発行が認められた。さらに、各スタジアムに対する最大5,000万ドル(約72億4,408万円)の税額控除や、地方自治体からの詳細未定の支援が盛り込まれている。
一般的には、その包括的な提案がチーフスをアローヘッド・スタジアムにとどめるのに十分だと考えられており、チーフスも11億5,000万ドル(約1,666億1,374万円)規模の改修計画を検討してきた。また、ダウンタウンでの球場建設に興味を示しているロイヤルズも引きとめられる可能性があると見られていた。
しかし、約1カ月前、ロイヤルズの関連会社がカンザス州カンザスシティ南部のオーバーランドパークにある大規模な不動産の抵当権を取得したとの報道があり、新たなスタジアムおよびボールパーク地区が同地に建設される可能性が浮上した。
そして、カンザス州に延長を要請するドノバン社長からの書簡も、チーフスが州をまたいだ移転を真剣に検討していることを示すものとなっている。
チーフスのオーナーであるクラーク・ハントは、父でありチーム創設者のラマー・ハントが建設したアローヘッド・スタジアムに愛着があることを長年にわたって公言してきた。その一方で、スーパーボウルやファイナルフォー、その他の注目度の高いスポーツイベントを実施できるようなドーム型スタジアムを新たに建設することで得られる収益源の可能性にも強く意識を向けている。
チーフスがカンザス州のどこにスタジアムを建設するのかは不明だが、カンザス州カンザスシティにある州間高速道路435号線と70号線の交差点付近が候補地の1つとされている。そこには、カンザス・スピードウェイや、“ザ・レジェンズ”と呼ばれる住宅と商業施設が混在する地区、MLSのスポルティング・カンザスシティやマイナーリーグ野球チームであるカンザスシティ・モナークスの本拠地スタジアムのほか、カジノ、ホテル、大規模なサッカートレーニングセンターがあり、ドーム型フットボールスタジアムを支えるインフラも整っている。
ドノバン社長は木曜日に送った書簡で「私たちはこのプロジェクトの可能性に大きな期待を寄せている。これは州の歴史上最大の経済開発事業になるだろう」と述べ、こう続けた。
「それと同じくらい重要なのは、NFLのフランチャイズが(カンザス州に)存在することが、即時的かつ長期的な成長を力強く促進する原動力となる点だ――それは、全国からの注目、持続的な観光振興、州全体で数十億ドルに及ぶ民間開発を促進することにつながるだろう」
記事提供:『The Associated Press(AP通信)』
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