ドルフィンズWRヒルが膝の脱臼に伴う靭帯断裂でシーズン終了
2025年10月01日(水) 10:58
マイアミ・ドルフィンズが現地9月29日(月)に27対21で勝利したニューヨーク・ジェッツ戦で、試合の途中に膝を負傷したワイドレシーバー(WR)タイリーク・ヒルには、長く厳しいリハビリが待ち受けている。
『NFL Network(NFLネットワーク)』のイアン・ラポポートが火曜日、ヒルが膝を脱臼した際にACL(前十字靭帯/ぜんじゅうじじんたい)を含む複数の靭帯を断裂し、2025年シーズンを4試合で終えることになったと報道。その後、ドルフィンズのヘッドコーチ(HC)マイク・マクダニエルはヒルが複数の靭帯を断裂したため、今季の残り試合を欠場すると発表している。
ヒルは火曜日に手術を受けた。NFLネットワークのトム・ペリセロはヒルの代理人であるドリュー・ローゼンハウスを通じて、手術は無事に終了したと報じている。ローゼンハウスによると、手術が複数回にわたる可能性もあると考えられていたが、“一度の手術ですべての処置が行われた”という。さらに、ヒルの目標は2026年シーズン開幕までに復帰することだとローゼンハウスはつけ加えた。
ヒルはサイドライン沿いでジェッツのセーフティ(S)マラカイ・ムーアにタックルされた際に負傷。ヒルの脚は即座に不自然な角度に曲がったように見えた。第3クオーターにカートに乗せられてフィールドを後にしたヒルは、画像検査や診察、経過観察のため病院へ搬送され、チームは直ちにヒルを試合から除外した。
今季の残り試合を欠場することになった31歳のヒルには、復帰まで長い道のりが待ち受けている。
スピードスターを失ったことは、開幕から1勝3敗と苦しいスタートを切ったところから巻き返しを目指すチームにとって大きな打撃だ。ヒルの負傷により、ドルフィンズが今季初勝利を挙げた喜びは損なわれてしまっている。
年を重ねてもなお、ヒルのスピードはどのディフェンスにとっても脅威だ。ヒルには毎スナップ、複数のディフェンダーで対応しなければならず、1対1での勝負に何度も賭ければ、痛い目を見る可能性が高い。
2022年にドルフィンズに加入して以来、ヒルはキャッチ340回で4,733ヤード、タッチダウン27回を記録しており、2023年シーズンにはリーグ最多の1,799ヤードとタッチダウン13回をマークした。ドルフィンズでの4シーズンで欠場したのは2023年シーズン第15週の1試合だけだ。今後は、2025年シーズンの残りをすべて欠場することになり、場合によってはそれ以降も欠場を余儀なくされる。
ヒルの欠場により、2021年ドラフト1巡目指名を受けたWRジェイレン・ワドルのターゲット数が増加することは明らかだ。ドルフィンズはヒルの控えとしてワドルの契約を延長し、いずれ主力選手へと成長させることを想定していたが、その移行が予想よりも早く訪れている。ワドルはすべてのレベルでオープンになる能力を持ち、キャッチ後の動きもダイナミックだ。ヒルほどロングパスに強いわけではないが、スピードやプレーメイク能力は十分に持ち合わせている。
ワドルはしばらくの間、クオーターバック(QB)トゥア・タゴヴァイロアの主力ターゲットとなるだろう。より大きな問題は、そこから誰が台頭するかだ。最初に出場機会が増えるのは、2024年ドラフト4巡目指名を受けた後、主に補助的な役割を担ってきたWRマリク・ワシントンだと見られている。ワシントンはキャリアで18試合に出場し、キャッチ34回、270ヤードを記録してきた。
ニック・ウェストブルック・エキネもレシーバーを3人配置する布陣での出場機会が増えるはずだ。身長約188cmのウェストブルック・エキネは経験とサイズを兼ね備え、フィールドを広げる能力にも優れている。テネシー・タイタンズでの5年間では1,773ヤード、タッチダウン19回を記録。今オフシーズンにドルフィンズと契約してからはほとんど起用されていなかった(キャッチ4回、26ヤード)が、今後数週間でその状況は変わるだろう。2024年ドラフト7巡目指名を受けたタジ・ワシントンも健康状態が万全になれば出場機会を得るはずだ。
俊敏なランニングバック(RB)デボン・エイチェーンはすでに優れたパスキャッチャーとして活躍しており、今後の出番は増えるだろう。エイチェーンをオープンスペースに配置すれば、ある程度穴を埋められるはずだ。問題は、マクダニエルHCがエイチェーンを外側に配置する機会を増やすか、あるいはヒルに対してよく行っていたようにモーションで起用して相手を翻弄しようとするかどうかだ。
ヒルの穴を埋めるもう1つの方法はタイトエンド(TE)の起用を増やすことだ。TEダレン・ウォーラーは初めてドルフィンズの一員として出場したジェッツ戦で印象的な活躍を見せ、2回のタッチダウンキャッチを記録。ウォーラーがレッドゾーンでの脅威であることは明らかだが、ミドルやシームでも勝負できる。ただし、負傷歴があり、2024年に一度もプレーしていないベテランに負担をかけすぎないことが課題となるだろう。マクダニエルHCが2タイトエンドフォーメーションを多用する場合は、ジュリアン・ヒルの出場機会も増える可能性がある。
ペリセロは、ドルフィンズがヒルの負傷を受けてすぐに動き、ニューオーリンズ・セインツの練習生だったベテランWRセドリック・ウィルソンと契約すると報じた。
また、今回の事態を受けて、トレード期限が近づくにつれて確実に出てくると予想されていたヒルのトレードのうわさは一掃されている。
ヒルはひどいケガに見舞われたにもかかわらず、驚くほど前向きな様子を見せていた。チームメイトやコーチは、カートに乗せられて運ばれる際も冗談を言っていたヒルを称賛している。
回復への道のりは険しく、その前向きな精神が試されることになるだろう。
ヒルは来季開幕までの復帰を目指しているものの、今回のようなケガは選手生命を終わらせる可能性もある。
31歳のヒルは多少の衰えを見せていたかもしれないが、持ち味である驚異的なスピードを武器に相手ディフェンスを翻弄し、必要に応じて相手から距離を取ることができていた。しかし、身長約178cmのヒルがそのスピードを取り戻すには、どのくらいの時間がかかるのだろうか。過去にはスピードや機敏性を取り戻すのに1年以上かかる選手(例えばセイクワン・バークリー)もいた。10年目のベテランにとって、それはさらに困難な課題となるだろう。
『NFL Research(NFLリサーチ)』によると、1995年以降、30歳以上でACLを断裂し、その後のシーズンで750レシーブヤード以上を記録したワイドレシーバーは3人しかいないとのこと。その3人とは、グリーンベイ・パッカーズのジョーディ・ネルソン(2015年に30歳で負傷、2016年に1,257ヤード)、ニューイングランド・ペイトリオッツのジュリアン・エデルマン(2017年に31歳で負傷、2018年に850ヤード、2019年に1,117ヤード)、インディアナポリス・コルツのレジー・ウェイン(2013年に34歳で負傷、2014年に779ヤード)だ。
月曜日にスターワイドレシーバーが負傷したのは、接触を伴うスポーツの厳しい現実を示す出来事となっている。
ラポポートによると、ヒルの2026年の報酬に保証はないものの、3月時点でロースターに残っていれば基本給2,990万ドル(約44億2,560万円)のうち1,100万ドル(約16億2,815万円)が完全保証され、500万ドル(約7億4,007万円)のロースターボーナスを受け取ることになるという。その時点でヒルが身体検査を通過できるとは考えにくい。
ヒルは2027年にフリーエージェント(FA)となる予定だ。
【RA】