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トニー・ロモ、引退を決断

2017年04月04日(火) 22:18

ダラス・カウボーイズのトニー・ロモ【AP Photo/Michael Perez】

トニー・ロモが引退への道を選んだ。

『NFL Network(NFLネットワーク)』のイアン・ラポポートが伝えたところによると、少なくとも1チーム以上のプレーオフ進出を狙えるNFLチームが獲得に興味を示していたにもかかわらず、ダラス・カウボーイズのレジェンドであり、4度のプロボウルに選出されたクオーターバック(QB)ロモがNFLのテレビ放送界に転身すべく、引退することになりそうだという。

ロモは現地4日(火)にカウボーイズからリリースされることになっていた。

最初に一報を報じたのは『ESPN』だ。

ラポポートは火曜朝の“Good Morning Football(グッド・モーニング・フットボール)”で「近しい人たちに相談し、自分の身体の状態を確認し、キャリアの中で今の自分がどのポジションにあるかを確かめた上で、トニー・ロモは現役から退くことを決断し、これまで何度か経験していた放送界で活躍するチャンスを受け入れることにした」と伝えている。

「『FOX(フォックス)』が興味を示し、『CBS』はフィル・シムズの後任候補として検討しており、いずれも選択肢に含まれるだろう。『NBC』も同様だ」

ロモは気持ち的にも健康面でも激動の時間を過ごす中で今回の決断を下した。2度に渡る鎖骨骨折に加えて背中の骨折も患ったロモは過去2シーズンを通してわずか5試合にしか出場できていない。それでも、どちらのシーズンも少なくとも1試合はフィールドに姿を見せ、その存在感を強調してきた。

しかしながら、カウボーイズにはダック・プレスコットという新たなスターが生まれ、ロモ不在の間にそのポジションを確立している。

ロモは11月に開いた記者会見で、事実上、2006年から自らのものにしてきた役目を引き継ぎ、どこか他の場所で復活のシーズンを遂げる可能性を示唆していた。当時のロモは再びハイレベルな場所でフットボールをプレーしたいとの思いを語っていたのだ。

「僕が今フィールドに立っていたいと思っているのは間違いない事実。勝利する気持ち良さを知っている人は分かると思う。その気持ちはまだ持っている。ベンチから見ているのは決して簡単なことじゃないけれど、勝ちたい気持ちはまだある。自分と同じ立場にいたことのある人には、この気持ちを分かってもらえると思う」

その気持ちは健康面での問題によって影を潜めた。ラポポートが報じたように、FOXとNBCがロモにアプローチしている。CBSも長年に渡ってサンデーゲームを担当してきたフィル・シムズの後任としてロモに注目していた。親しみやすく、話上手なロモが次の偉大なるプレーヤーアナリスト候補に挙がるのは当然と言えよう。

4日朝にNFLネットワークのジェーン・スレイターが伝えたように、カウボーイズが本当にロモを必要とすれば復帰を考えたかもしれないが、残念ながら、ファンがその最後の勇姿を見るチャンスはもうない。東イリノイ大学出身のロモは、当時のアシスタントヘッドコーチであり、同じく東イリノイ大学出身だったパンサー・シーン・ペイトンの目に留まったことがきっかけでドラフト外フリーエージェントとしてカウボーイズに入団している。最初の2年間は注目度の高かったドリュー・ヘンソンをはじめ、2004年はビニー・テスタバーディの、2005年にはドリュー・ブレッドソーのバックアップを担ったほか、キックの際のボールホルダー役も務めたことがある。

ビル・パーセルズ指揮下の2006年、ロモにチャンスが到来した。初の先発出場の機会に、投げたパスのうち66%を成功させて270ヤードをマークしたロモは1タッチダウン、1インターセプトを記録。カロライナ・パンサーズ戦を35対14で締めくくり、チームの勝利に貢献した。

ロモ時代の2006年から2014年にかけて挑んだプレーオフ6試合で2勝4敗に終わったカウボーイズの戦績を皮肉る声もあるかもしれないが、それでは物事の本質が見えない。ドラフト下位でNFL入りしたトム・ブレイディ同様、ロモもまた偉大なサクセスストーリーを持つQBだ。

NFLキャリアを通してカウボーイズに献身してきたロモはパッシングヤード(3万4,183)、タッチダウン(248回)、そしてウイニングドライブ(30回)でチーム史上最高をたたき出している。とりわけ、ウイニングドライブ数ではカウボーイズの伝説QBと称されるロジャー・ストーバック(23回)とトロイ・エイクマン(21回)を抑えて首位に立っているのだ。

ロモが引退を決断するまで、チームオーナーのジェリー・ジョーンズはロモのトレードを模索していた。すでに全チームに対して交渉可能を宣言し、必要とあればワークアウトも行って良いと伝えてあった。投資に見合う関心を引き寄せたいの願いとは裏腹に、ロモが心を決める。

スター選手の終えんとしては決してクリーンとは言えない。プレスコットの台頭を受け入れながらも、ロモはプレーを望んだ。この数週間、ロモはプレスコット中心に動き始めたチームメイトやコーチ陣との距離を置き、自らの行く末を熟考してきたが、NFLネットワークのスレイターはロモの頭の中で放送界への道と引退の考えが大きくなり始めていると伝えていた。

ロモの引退決断はこの先しばらくショックを与えるかもしれない。獲得を検討していたとも言われるヒューストン・テキサンズは特にそうだろう。ビル・オブライエン率いるテキサンズはロモのトレードにこそ関心を示していなかったものの、ウィル・フラーやディアンドレ・ホプキンスといったダイナミックなプレーが自慢のワイドレシーバー(WR)陣との組み合わせを検討していたのは間違いない。デンバー・ブロンコスもロモが市場に出るのを注視していたチームだ。

テキサンズはこれでベテラン揃いのフリーエージェント市場を見ながら対応していくことになるだろう。あるいは今年のドラフトでQB獲得を目指す案を繰り出すかもしれない。

いずれにしても、ロモ加入で生じたであろうスターパワーに匹敵する者がいるはずはない。ロモがブレット・ファーブ、カート・ワーナー、ペイトン・マニングの背中を追うようにフィールドを去れば、クオーターバック黄金時代がまた一歩、終末に向かうことになる。

ロモはテレビ放送ブースに次の活躍の場を見いだしていく。