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トランプ大統領の発言に対するNFLおよびNFL選手会の反応

2017年09月24日(日) 14:52


ホワイトハウスで第51回スーパーボウルを制したニューイングランド・ペイトリオッツを出迎えたドナルド・トランプ大統領【AP Photo/Susan Walsh】

現地22日(金)、アメリカのドナルド・トランプ大統領は支援者集会で演説を行い、各チームのオーナーはNFL試合前の国歌斉唱で起立しない選手たちを“クビ”にすべきであり、ファンは試合をボイコットすべきだと発言した。これに対し、NFLおよびNFL選手会は選手とその権利を支持する姿勢を明らかにした。

土曜午前、NFLコミッショナーのロジャー・グッデルは次のような声明を発表した。

「NFLおよびその選手たちは祖国と文化に一体感を生み出す手助けとなる時には最高の力を発揮する。先月に発生した深刻な自然災害において、各クラブや選手たちが示した素晴らしい対応以上にふさわしい例はないだろう。今回のように不和を生む発言はNFLをはじめ、卓越した試合や全選手に対する残念な尊重性のなさを示しており、われわれのコミュニティを代表する各クラブや選手たちが誇る圧倒的な力を理解していないことも明らかだ」

NFL選手会のエグゼクティブディレクターを務めるデュモーリス・スミスも土曜午前に声明を発行し、その中でこう述べている。

「一部の選手たちが行なった平和的なデモンストレーションはさまざまな反応を巻き起こした。それらの意見は言論の自由によって保護されており、その自由はこれまでの歴史において多数の男女らが犠牲を払ってきた上で成り立っている。こうした言論や表現はロッカールームやボードルームで思慮深い話し合いの場をもたらした」

「しかしながら、“黙ってプレーだけをしていろ”と言われてしまうと、自分たちの偉大な国に暮らす全国民の権利が侵害されることになる」

「NFL選手はコミュニティにさまざまな形で多くの貢献を果たしている。NFLプレーヤーは歴史を通してみても全スポーツ選手のレガシーの一部であり、自分たちやそれぞれのコミュニティに影響を及ぼす問題の情報を逐一把握するようにしている。選手たちはスポーツバブルの守られた生活に満足するのではなく、問題に対して何らかの行動を起こす道を選んできた。そしてそれは今も変わらない。彼らの意思決定はアメリカ国民として“どうあるべき”だと制限されたり、“これをすべき”だと定められたりすることを拒む数多くの人々の考え方と何ら変わりない」

これらの声明はトランプ大統領が口にした次の発言を受けたものだ。

「国旗に対する尊重を欠く者がいた場合、NFLオーナーたちが“今すぐフィールドからつまみ出せ。クビだ。お前はクビだ!”と叫ぶ姿を見たくはないか? そのうちどこかのオーナーがそうするだろう。その時はきっとこう言うに違いない。“あいつは国旗を侮辱した。クビだ”とね。彼らは知らないのだ。私にはオーナーの友人がたくさんいる。1週間は人気者になるだろう。この国で最も人気のある人物になるはずだ」

現在はフリーエージェント(FA)のクオーターバック(QB)コリン・キャパニックが2016年プレシーズン第3週で国歌斉唱時の起立を拒んで以降、キャパニックと同様の行為やジェスチャー――例えば国歌斉唱中に拳を突き上げるなど――について公式の場で何らかのコメントをしたオーナーはごく少数だ。キャパニックは警察や法体制による少数派への不当な扱いに対する抗議だったと発言している。他にも、シアトル・シーホークスのディフェンシブエンド(DE)マイケル・ベネットやフィラデルフィア・イーグルスのセーフティ(S)マルコム・ジェンキンスらがキャパニックに追随して国歌斉唱中でのプロテストを続けており、彼らはキャパニックと同様の理由でそうした行動に出ているのだと話した。

土曜日、ニューヨーク・ジャイアンツのチームオーナーであるジョン・マーラとスティーブ・ティッシュは声明で「昨夜、われわれが耳にしたような大統領の発言は不適切な内容であり、侮辱的で対立をあおるものだ。われわれはチームに所属する選手たちを誇りに思っており、彼らの大多数はわれわれの社会に前向きな変化をもたらすためのプラットフォームとしてNFLを生かしている」と述べている。

マイアミ・ドルフィンズのオーナーであり、『Ross Initiative in Sports for Equality (ロス・イニシャティブ・イン・スポーツ・フォー・イコーリティ)』の創設者であるスティーブン・ロスは声明を通してこう発言した。

「われわれの国家が必要としているのは求心力のあるリーダーシップであり、これ以上の分断ではない。相互理解を求め、糾弾や印象操作の代わりに国民と対話していくことが必要だ。私は国歌斉唱中にひざまずく選手たちが、賢明で気骨ある若者であり、あらゆる人たちにとってこの世界をより良い場所にしたいと考えていることを知っている。彼らは対話を始めたいと考えており、警察との取り組みも含めて人々を一体化し、コミュニティに変化を起こしたいのだ。学び、耳を傾け、お互いを理解することで誰もが恩恵を受ける。スポーツは世界に共通するものだ。われわれ全員に、このプラットフォームを活用して理解と尊重、平等を促進させる責任がある」

サンフランシスコ・49ersのCEO(最高経営責任者)であるジャド・ヨークもトランプ発言に対する声明を発表。

「大統領による無神経で攻撃的な発言はこの素晴らしい国家の理念と相反する。選手たちは対話を促し、社会的不公正に対処する行動を起こすためにアメリカ国民としての権利を行使してきた。私たちは我が国はもちろんのこと、世界中にポジティブな変化をもたらす彼らの平和的な追求においては彼らを支援し続ける。サンフランシスコ・49ersはコミュニティのために取り組み続け、また、そのコミュニティのために働く人々と密接に協力していくつもりだ」

グリーンベイ・パッカーズの会長兼CEOのマーク・マーフィーも声明で「大統領が自らの巨大なプラットフォームを利用し、対立を招き、NFLおよびその選手たちについて攻撃的な発言をしたことについて遺憾に思う。選手たちはわれわれのコミュニティにおけるリーダーであり、ポジティブな影響源であると強く考えている。彼らは途方もない努力と献身を通してそれぞれの地位を獲得しており、彼らはその成功とポジティブな影響において称賛されるべき存在である。優れた変化を望み、平和的な意思表示を選ぶ選手たちを支持することは重要だ。幸いにして、われわれはアメリカ国民として率直かつ自由に発言できる」と主張している。

トランプ大統領に名指しで“Sons of bitches(クソ野郎)”呼ばわりされたキャパニックだが、その母、テレサさんは『Twitter(ツイッター)』に「おかげで誇り高いビッチになれたわ」と投稿した。

トランプ発言の波紋はソーシャルメディア上でも大きく広がっている。

リチャード・シャーマン
「大統領の言動は受け入れられない。ぜひ対処していただきたい。この分断をあおるレトリックを糾弾しなければ、それを許すことになってしまう」

レジー・ブッシュ
「キャパニックよ、俺たちは君の味方だ」

キャメロン・ジョーダン
「キャパニックの行動が社会的不公正に注目を集めるきっかけになったと認めたにすぎない。キャパニックは自分の考えに注意を向けてほしくて膝をついた・・・そうだろ?」

セシル・ショーツ
「トランプ氏とこの国に暮らす全ての人々へ祈りを。新約聖書 テモテへの第2の手紙 第2章1-8」

エリック・エブロン
「誰かトランプに“政治に集中しろ”と言ってやれよ。俺たちが“スポーツに集中しろ”って言われるみたいにさ」

トリー・スミス
「愛国心というものは旗や国歌を超えたところにあるはずだ」

ダバンテ・アダムス
「何かあれば“フットボールに集中しろ”と言われる。僕たちの国のリーダーは偉大なアメリカ国民としての好例を示すこともできないらしい」

コナー・バーウィン
「NFLは俺たちに個人の意見を述べる権利があると認めている。アメリカ国旗および国歌はその自由の象徴であるはずだ。平和的に意見を交換しただけでクビになったり投獄されたりするような全体主義的な政府の下に生活しているわけじゃない。この自由を祝福し、守っていなかければ。もし、俺たちの大統領がこの最も重要な真実を理解していないなら、俺たちがそうしていくことがなおさら大事になってくる」

クリス・コンリー
「恐怖では誰かを屈服させられないといつになったら学ぶのだろう。人々が正しいと信じるもののために、さらに多くの人々を立ち上がらせるだけだ」

ベンジャミン・ワトソン
「憲法で保護されているはずの権利を平和的に行使したアメリカ国民が大統領によって軽視され糾弾される。悲しい日だ」

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