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チーフスWRヒルに向けたピースサインは「やるしかなかった」とバッカニアーズSウィンフィールド

2021年02月09日(火) 14:55

タンパベイ・バッカニアーズのアントワーヌ・ウィンフィールドJr.とカンザスシティ・チーフスのタイリーク・ヒル【AP Photo/Mark Humphrey】

スポーツ選手の頭の中をのぞくことができたら、自覚のあるなしに関係なく、そこは屈辱的な言動で埋まっていることだろう。それが己を磨く糧となっているのだ。

超一流選手は皆、勝った時より負けた時のことをより鮮明に覚えていると言う。心の働きが栄光を追求する原動力となる。失敗への恐れは勝利の甘い蜜よりもモチベーションに大きな影響を及ぼす。

1つ1つの屈辱がスポーツ選手の脳裏の中では反すうされる。“bulletin-board material(掲示板に張り出すネタ=モチベーションを上げるネタ)”というイディオムが決まり文句なのは偶然ではない。

第55回スーパーボウルは、屈辱的な言動は見過ごされるのではなく、蒸し返されるのだということをわれわれに思い出させた。

タンパベイ・バッカニアーズがカンザスシティ・チーフスに負けたシーズン第12週の試合で、チーフスのワイドレシーバー(WR)タイリーク・ヒルは第1クオーターだけで200ヤード以上をたたき出した。ヒルはさらにロングパスからのタッチダウンを決め、バッカニアーズのセーフティ(S)アントワーヌ・ウィンフィールドJr.にトレードマークのピースサインを向けた。別のタッチダウンでは後を追うウィンフィールドJr.を尻目に、エンドゾーンに向かって後方宙返りをしている。

ウィンフィールドはこの屈辱を忘れなかった。

バッカニアーズが圧倒した現地7日(日)のスーパーボウルで、バッカニアーズのディフェンスがチーフスのフォースダウンを失敗に終わらせた際に、ウィンフィールドJr.はヒルの顔の前でピースサインをやって見せた。バッカニアーズのディフェンスはヒルをキャッチ7回と73ヤードに抑えており、そのほとんどは試合結果がほぼ確実になってからのものだった。相手を侮辱する反則行為を行ったとしてウィンフィールドJr.はフラッグを受け、時間と得点を考えると無意味なペナルティではあったが、本人にとっては十分に価値のあるものだったようだ。

ウィンフィールドJr.は「あの反則行為はやるしかなかった」と話している。「前に彼らと対戦した時にヒルには完全にやられた。俺の目の前で後方宙返りをして、ピースサインまでやってきた。だから俺があの瞬間にピースサインをやり返すのは当然さ。正直に言っちゃうと、最高に気持ち良かった」

最後に笑った者がいつまでも笑っていられる、という格言がある。

今シーズン最大のステージで笑うことができたのはウィンフィールドJr.であり、それはバッカニアーズにとっても十分に価値のあるものだった。

【R】