広範にわたるデータ分析が促進するヘルメットの技術革新
2021年10月15日(金) 15:52徹底したデータ収集と分析プロセスが、NFLの健康と安全性に対するあらゆる取り組みを裏づけている。このプロセスは単純に負傷数をカウントするといったものを越えた、より広範的なものだ。
リーグの前例のないデータ収集には全32チームが一元化された負傷データベースであるエレトロニック・メディカル・レコード(EMR)に入力した内容や、多数のカメラアングルや数千時間におよぶ試合の映像、ならびにマウスガード、ヘルメット、ショルダーパッドに取り付けられたセンサー等の革新的なテクノロジーから収集された情報が含まれている。
NFLは『Zebra Technologies(ゼブラ・テクノロジー)』社製のものを含むRFIDタグを備品に埋め込んで用い、それぞれの備品のその部分――ヘルメットのあご紐からフェイスマスクまで――の情報を収集している。選手がロッカールームから出てフィールドに出るとすぐに、タグが電波によって作動し、中央のデジタル管理システムにデータを送信する。このデータは全選手を対象に、すべての練習と試合で収集されている。
ゼブラ・テクノロジーのビジネス開発部門副社長のジョン・ポラードは「ゼブラのRFIDタグは選手のショルダーパッドとフットボールに取り付けられ、選手のスピードや移動距離、方位、加速度をリアルタイムで伝達している。NFLとゼブラの協力関係により、選手の安全性を維持するための洞察が推進されている」と話した。
マウスガードのセンサーは頭部の運動学的なデータも集めている。つまり、選手の頭部がヘルメット内部でどのくらいの速度で、どの方角に動いたか、といったデータだ。それらのセンサーは練習と試合の双方で、選手がそれぞれのポジションによって受ける頭部への衝撃の持続時間や方向性についてこれまで以上に情報を収集するのに役立っている。
これらのセンサーデータのすべてが、フィールド表面の情報、天候に関連する変数、負荷とパフォーマンスデータ、ビデオの再検討――150以上の変数に分化された、1,000件以上の脳震とうを引き起こすインパクトのレビューや、すべての深刻な負傷のフレームごとの分析を含め――と合わせ、体勢や行動、プレータイプ、スピード、備品、力の大きさといった情報を集めるために活用される。
このデータの正確性が、NFLのエンジニアたちによるポジションごとの洞察を、選手たちがどのタイプのインパクトを最も受けがちであるかといった点にまで深め、ヘルメット製造元と直接に知見を共有して、これらのインパクトを抑えるべくポジションに特化した設計を行うことを可能にしている。
ヘルメットテクノロジーの向上により、選手たちは以前より多くの優れたモデルを使うことが可能になっており、その数は増え続けている。
2020年にNFL/NFLPA(NFL選手会)によるヘルメットラボラトリーテストの結果で最上位にあったヘルメットは、新しく、より改善されたモデルによって、すでにリストの後方に下がっている。昨年は99.9%の選手が“トップパフォーミング”レベルのヘルメットを使用していた。2021年シーズンになり、今や彼らにはより性能の優れたヘルメットを使用するチャンスがあるということだ。
そして、選手たちは間もなく、ポジションに特化したヘルメットを使うことになるかもしれない。ラインバッカーのために設計されたヘルメットが2021年にテストされており、各選手のニーズにこれまで以上に沿うカスタムデザインされた備品に向けて、この業界がより多くの優れたデータを活用していることの有望な兆候となっている。
ヘルメットのイノベーションに対するNFLの投資は、より大きなゴール――フィールド上で選手たちが発症する脳震とうの件数の減少――に貢献している。
意義のある変化をもたらすには、複数面からのアプローチが必要になる。ヘルメットのパフォーマンス向上は重要だが、NFLの“Injury Reduction Plan(インジャリー・リダクション・プラン/負傷減少計画)”にはプレシーズンの練習を安全にし、不必要なリスクを避けるためのゲーム規則変更などの戦略が含まれている。
これらの介入が功を奏している。2018年から2020年までの脳震とうの件数は2015年から2017年に比べて25%少なくなった。低下傾向が続いていることが、未来に向けて新たなベンチマークを設定している。
とは言え、この仕事は決して終わらない。NFLはこれからも先に立つ模範としてスポーツの安全性における最も有望なイノベーションへの投資を継続し、データを活用して選手の健康を向上するための、詳細な情報を得た上での決断を下し続けていく。
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