違反となったTDプレーを「エンドゾーンを狙っただけ」と笑い飛ばしたドルフィンズGハント
2021年11月14日(日) 01:03ロバート・ハントのNFLキャリアを描いた伝記映画は、レコードのスクラッチ音とともに327パウンド(約148kg)の巨漢が逆さまになりながらゴールラインをめがけてボールを突き出すシーンとともに始まるのだろう。そして、ナレーターが優しい声色で、お約束の「どうしてこうなったのかとお思いですね」と語りかけると、場面はプロフットボールの得点に至らなかったプレーの中で最も面白かったシーンの1つへと巻き戻されるのだ。
Happy Friday. pic.twitter.com/1nsSRrRl8X
— Kevin Patra (@kpatra) November 12, 2021
現地11日(木)夜に行われたマイアミ・ドルフィンズ対ボルティモア・レイブンズ戦の第4クオーター、試合残り時間13分11秒で6対3とドルフィンズがリードする中、第3ダウン残り6ヤードの場面で、ドルフィンズのクオーターバック(QB)トゥア・タゴヴァイロアはランニングバック(RB)マイルズ・ガスキンにスクリーンパスを投げようとした。ただ、ボールをキャッチしたのはガスキンではなくガード(G)のハントだ。オープンスペースでカットし、エンドゾーンに向かって突進していく。ゴールライン上では2人の相手ディフェンダーが迫ってきている。それでも譲らなかったハントは思い切って前進し、体を反転させながらも必死にエンドゾーンに飛び込もうとした。
試合後、ハントは『NFL Network(NFLネットワーク)』に「あれはスクリーンプレーだった。(レイブンズのディフェンシブエンドである)カライス(キャンベル)はずっとプレーしていて、彼はあそこに立っていたし、ボールも見えていて、インターセプトされたくないと思ったからボールをつかんで走り出した」と語っている。
ハントはボールを持って走る。それをやっただけだ。
ルール上、ハントはこのプレーで有資格のレシーバーではなかったため、その努力は得点として実っていない。ただ、心に響くプレーだった。そのシーンを振り返り、ハントはこう明かす。
「あの時はただ勝つことだけを考えていた。カウントされなかったとしても、カウントされないということが頭に入っていなかった。ただただ、得点することだけを考えていた」
それまでエンターテインメント性に欠けていた試合にハントは明るさと楽しさをもたらしている。巨体のオフェンシブラインがスペースに突進する様子は、まるでユニコーンがトウモロコシ畑の中を駆け抜けるようだった。
「高校では少しだけレシーバーとタイトエンドをやったことがある。(中略)ちょっとだけど試合に出たこともあるんだ」と打ち明けたハントは、今回のプレーについて「みんなが俺を見て笑っていたよ。(中略)でも、何人かは“あれは良かった、今夜見た中で最高のプレーだった”と言ってくれた」と話している。
確かにこのプレーは得点につながらなかったが、ガスキンへのスクリーンパスが失敗したかのように見えた状況で、5ヤードのペナルティ(タゴヴァイロアからワイドレシーバーのマック・ホリンズへのフェードパスは失敗)はあったものの、ハントがボールを取ってゴールラインを越えたことで、少なくともドルフィンズはもう1度タッチダウンを狙えるようになった。
「エンドゾーンに入ることだけを考えていた。ウソをつくつもりはないし、本当に、とにかくエンドゾーンを狙っていただけなんだ。(中略)カウントされなくても、ただ得点しようとしたんだ」とハントは言う。
ハントはこのプレーを笑い、チームメイトも笑っていた。もちろん、ドルフィンズが優勝候補のレイブンズを相手に22対10で大勝したときに、このような奇妙で愉快なプレーはさらに間抜けに見える。
「あれはいい頑張りだった」とタゴヴァイロアは言う。「彼はアスリートであろうとした。プレーしようとした。でも、NFLでは違反なんだよね・・・だけど、それでもプレーしようとした彼に拍手を送ろう」
もし、今回のプレーがすでに大混乱となっている今シーズンのハイライトとならないのであれば、編集者は正しい仕事をしていないのと同じだと言えよう。
【RA】