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チーフス退団について語ったドルフィンズWRヒル、「俺が気にかけているのは組織内のリスペクトだけ」

2022年06月12日(日) 11:23


マイアミ・ドルフィンズのタイリーク・ヒル【AP Photo/Mary Holt】

カンザスシティ・チーフスがワイドレシーバー(WR)タイリーク・ヒルをマイアミ・ドルフィンズにトレードしてから2カ月半の間、ヒルがドルフィンズ攻撃陣に適応するかどうかや、チーフスがヒルの代役にどのようなアプローチをとるかが話題になっている。

ヒルは自身のポッドキャスト『It Needed To Be Said(イット・ニーディド・トゥ・ビー・セド』の初回で、チーフスとの関係を解消したきっかけについて語った。

『Pro Football Talk(プロ・フットボール・トーク)』によると、ヒルは「もし最高のコーナー(バック)と1対1の勝負をさせたいなら、チームが最高のレシーバーを利用しない理由なんてないだろう。たぶん、俺とチーフスはそこでバラバラになった。べらべらしゃべったり、高慢な態度をとったりするつもりはないけど、ボールをくれる? ただボールを渡してくれたらいいんだ」と話しているという。

ポッドキャストに出演したヒルの代理人であるドリュー・ローゼンハウスは、2021年にヒルの才能がチーフスにうまく活用されていないときがあったと繰り返している。

ローゼンハウスは「この1年間、タイリークが十分に活用されていない、評価されていない、彼のすべての能力と才能が十分に生かされていないと感じることが多々あった。でも、タイリークは強い。それを一度も口に出さなかった。彼は完全にプロフェッショナルだった」とコメントした。

自分があまりターゲットになっていないと認識するナンバー1ワイドレシーバーはNFLの歴史の中でも多くいた。とはいえ、ヒルの主張には何かメリットがあるのだろうか。

2020年シーズンはターゲットが6回以下だったのがわずか1試合だったのに対し、2021年シーズンは5試合でターゲットが5回以下だったというのは事実として挙げられる。

一方で、昨シーズンに10試合で10回以上ターゲットになり、キャリア初となる100回以上のレシーブを達成し、ターゲット数(159回)でキャリアハイを更新してリーグ全体で7位に輝いたのも事実だ。

クラブと選手の見方が一致しているのは、ヒルのレシーブ1回あたりのヤード数だろう。長年、相手ディフェンスを吹き飛ばすリーグ随一の脅威だったヒルは“チーター”という愛称で親しまれてきた。しかし、昨シーズンのレシーブ1回あたりのヤード数は11.2と、2017年から2020年にかけての平均から4ヤード以上落ちており、ルーキーシーズン以外では最も悪い成績となっている。

ビッグプレーが減少したのは、相手守備陣がツーハイセーフティを採用してQBパトリック・マホームズにアンダーニースに投げるよう強いることでディープパスを主軸とするチーフス攻撃陣に対応するようになったからだ。このアプローチは短期的にチーフスを苦しめた。そして、オフシーズンの動きを踏まえると、攻撃陣の作戦の優先順位をも変えたのかもしれない。だからこそ、チーフスはヒルの契約の希望に応じられないままになっていた。

「ベストは尽くした」とヒルは明かし、「お偉いさんの(ヘッドコーチ/HC)アンディ・リードと話した。クオーターバックとも話した。“いいか、何かを実現させられるか? 保証金は俺にとって意味があるものになるのか? 俺の家族にも納得してもらえるか?”って言ったんだ」と続けている。

結局、お金は他の部分で使うのが一番合理的だったようだ。チーフスはドラフト指名権5つと引き換えにヒルをトレードし、ジュジュ・スミス・シュスターやマルケス・バルデス・スカントリングを獲得してWR陣を強化する方法をとっている。

ヒルはドルフィンズと保証額7,220万ドル(約97億0,476万円)で1億2,000万ドル(約161億2,980万円)相当の4年契約を結んだ。これにより、ヒルは以前よりも尊敬されるようになったと感じているようで、次のように強調している。

「悪評なんてどうでもいいんだけど。そんなことはどうでもいい。俺が気にかけているのは組織内のリスペクトだけ。外野からの悪評なんて何も気にしていない。そんなことしても日曜の試合には勝てないからな。組織の中で求めているものなんだ。ヘッドコーチに毎週日曜日、ディフェンスがタイリーク・ヒルを恐れていると思ってもらいたい。それをヘッドコーチに分かっていてもらいたい。ヘッドコーチは分かっているはずだけどな。チーターがフィールドにいなかったら“おい、パット(マホームズ)、今日は大変な1日になるぞ”って思うはずさ」

ヒルはチーフスを離れてドルフィンズに移り、チーフスはヒル不在の時代を迎えている。このように7年ぶりに新たな環境になったことを、現在は双方ともに楽観視しているようだ。どちらの芝生がより青く見えるかは、時が経てば分かるだろう。

【RA】