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NFLが次のオフシーズンにヒップドロップタックルの禁止等について検討へ

2023年12月15日(金) 00:51


NFLロゴとキックオフペイント【Aaron M. Sprecher via AP】

レギュラーシーズンも最後の1カ月に入り、NFLの首脳陣は近い将来のゲームの調整方法に目を向けている。

リストの筆頭にあるのは2つの項目だ。ヒップドロップタックルの禁止とキックオフの改善方法についてだ。

NFLコミッショナーのロジャー・グッデルはテキサス州アービングで開かれた12月のリーグミーティング終了後の現地13日(水)、ヒップドロップタックルが禁止されることを望むと記者団に語った。

「ヒップドロップについては、われわれ全員で協力してゲームからなくすべきだと私は考えている」とグッデルは述べた。

「今シーズン、それが起きるたびにエスカレートしていったのが分かるはずだ。非常に破壊的なケガにつながりかねない。それもまた明らかだった。これはNFLレベルだけの出来事ではない。他のレベルでも発生している。(それは)われわれが懸命に努力して、次の春になくさなくてはならないプレーだと感じている」

この日、先にメディアに対応したNFLフットボール運営部門取締役副社長のトロイ・ビンセントもグッデルと同じスタンスを取っている。

「今そうしなければならないのだと思う」とヒップドロップタックルの禁止についてビンセントは述べた。

「1年前だったと思うが、われわれがビデオでヒップドロップやあのタイプのタックルについて取り上げた際は、何の話をしているのやら分からないクリップもあったと思う。彼らとしては、見たことがないなら教えるなという考えだった。それ以外の者たちも、選手にケガをさせようと意図して教えているのではなく、タックルの1バージョンとして教えているに過ぎなかった。これらはホークタックルが使われた際に、ゲームから頭部への問題をなくそうとして人々が調整に動いた時と同類のことだ」

「われわれが今日できることの1つはそれが何かを定義することだ。グリップして、回転し、そしてドロップする。あのプレーにはそうした3つのメカニズムがある」

ヒップドロップタックルはそのスタイルのテイクダウンによって複数のケガが発生したことから、このところ話題の種となっていた。11日(月)の夜、マイアミ・ドルフィンズのスーパースターワイドレシーバー(WR)、タイリーク・ヒルがヒップドロップスタイルのタックルによって足首を負傷し、痛みをこらえながらも後半に復帰したが、2クオーターをほぼ丸々プレーできなかった。結局ドルフィンズはこの試合でテネシー・タイタンズに敗れている。カレッジレベルでも、フロリダ州立大学のクオーターバック(QB)ジョーダン・トラビスがヒップドロップタックルで足を骨折してシーズン終了となり、それを契機としたカレッジフットボールプレーオフ選考委員会の対応が議論を巻き起こしている。

NFLは過去にも選手の安全を最優先に考え、他の形式の接触プレーを禁止している。2004年終盤にワイドレシーバーのテレル・オーウェンスがショルダーパッドの襟首部分をつかむプレーで引き倒されて足首を骨折したことを受け、ホースカラータックルは禁止された。またNFLはヘルメットを使って接触しようとする選手にペナルティを科し、ゲームから頭部への懸念を取り除こうという努力を続けてきた。

次の対象となるのはヒップドロップタックルかもしれない。

「あれはおぞましいプレーだ」とビンセントは水曜日に記者団に語った。

「どの選手も大事だが、ちょうど注目選手のタイリーク・ヒル(がケガをしたプレー)の名前が出たね。今日、そのビデオが再生されたのだが、あれを見るとメカニクスが分かり、それらが組み合わさっていることが分かるものだった。それによってメンバーシップにはわれわれが禁止しようとしているものについて見てもらうことができた」

「同時に、それと似ていながらも良いプレーについての明確な例も見てもらった。良いタックルと呼ばれるものもある。われわれは決して押し合いをなくそうとしているのではない。選手が後ろから誰かを倒したり、後ろからタックルしたりすることを禁止しようとしているのではない。禁止したいのは足に対してグリップ、回転、ドロップするタイプの動きだ」

キックオフのプレーについても、このオフシーズンに議論される。エンドゾーンを通過してアウトオブバウンズになったファンブルのルール変更(現在はポゼッションの変更とタッチバック)の可能性や、“トラッシュプッシュ”として一躍知られるようになったある種のクオーターバックスニークも同様だ。

ビンセントは水曜日にキックオフについて触れ、その安全性を高めるためのルール変更を受けて“今日では形骸化したプレー”だと述べた。

「キックオフのスタッツそのものが物語っていると思う」と言うビンセントは次のように続けた。

「これついては昨年の2月からコーチたちとのミーティングで多くの時間を費やしてきた部分であり、われわれに一つの選択肢、他のソリューションのようなものを与えるものだ。しかし、トラップブロックやウェッジブロック、クロスブロック、アタックブロックを除外し、試合で誰も望まないようなこれらのプレーを取り除くために途方もないほどのプロセスを行った2018年や2019年当時に戻れば、負傷率は非常に高かった」

「われわれは昨年に、頭部へのインパクトの部分でこれらの数字に戻っており、われわれの門番としての責任とは、かつての傾向に戻らないようにすることだと考えている。キックオフに関連する、スペースとスピードの問題があるのは理解している。だからこそ、われわれはコーチたちに何ができるかを問いかけている。しかし、われわれがやってはいけないのは、今のままでとどまることだ。だから、いくつかの代替案がある上でそれらが戻ってきてほしいと願っている」

グッデルは報道陣に対し、リーグはキックオフでの試みが戻ってくることを望む一方、選手たちの安全性も維持したいと話した。

「われわれは足がこのゲームの一部であり、キックオフリターンはエキサイティングなプレーだと考えている」と水曜日に述べたグッデルは、次のように続けた。

「今年は20%でそれを見た。それをもっと高い割合で見たい。しかし、負傷率についても取り組まれていることを確実にしたい。そのため、われわれにはイノベーションが必要になるだろう。スマートにやるつもりだ。前にやったことをやらなければならないし、それは試合をよりエキサイティングにすると同時に、より安全にすることだ。それができることは証明したし、これからもやるつもりだ」

伝統的なクオーターバックスニークへのイーグルスの取り組みは、ショートヤードの状況でラグビーのスクラムに相当するようなプレーを広めることにつながった。このプレーでは、ラインマンたちは前方での勢力争いに勝利しようとする一方、複数のチームメイトたちが後ろからクオーターバックを前に押す。イーグルスがこれを驚くべき割合で成功させる中、他のチームも自分たちの試合でそれを模倣することで、イーグルスの成功率に並び立とうと努力している。

このプレーを愛するファンがいる。一方で、アンフェアだと見なし、じきに違反となることを望むファンもいる。

ビンセントはこの件について、また別のスタンスを取った。それは、“より良くなること”だ。

「リーグオフィスかコミッショナーのいずれかが、このプレーの排除を検討しているとの報道があったと思う。それは間違いだ。このプレーについては、レギュラーシーズン第1週から見守っている。このプレーは進化してきた。進化しているし、コーチたちはそうなるだろうと話していた。そのフォーメーションからパスが出ることもあった。1年前とは違ったことが行われている。フィリーほどの成功率を記録した者はないが、皆、努力している」

「言ってみれば、フィリーはそれを誰よりもうまくやっている。それは事実だ。第4ダウン残り1ヤードや、残り数インチというシチュエーションで、他の者たちが――プッシュプレーそれ自体だけでも、金曜日に78回確認したと思う――フォーメーションを見ていた。ワンバックか、ツーバックが押すのか、スリーバックか? 彼らは実に効果的だった」

「そして、われわれがやりたくないことがある。メンバーシップに向けて言えば、誰かが何かをうまくやったことに対して罰したくはないものだ。それをやめさせるために、いろいろな試みがあったが、それらはうまく行っていない。だからこそ、このプレーは進化したということを言うためだけに、これについてメンバーシップに伝えた。他の者たちもこれをやっていて、オリジナルのフォーメーションの進化によって、素晴らしいフットボールも見られた」

グッデルはトラッシュプッシュについて、何らかの立場を取っていないと報道陣に話している。

「私は人々がそれについてどう感じているかを聞きたい。“好き”とか“嫌い”とかいった意見がたくさんあって、われわれはそれらを見ていきたい。安全性について話し合うのに十分なデータがあるのか? 考慮する必要のある他の側面はないか? 昨年、多くのコーチたちが、あのプレーにはイノベーションが起きると話していた。それを振り返ってみたい。それが本当に起こったのか? それが何であれ、異なる見方の意見を聞くことが重要だ。委員会に取り組ませる。私もそれに参加可能だろうし、3月までには自分も特定の立場を取る」

また、エンドゾーンを通過するファンブルがタッチバックになる点については、頻繁に起こることではないものの、いざ発生すれば議論の火種になることがある。ビンセントは現在のルールの“懲罰が重すぎるかもしれない”として、ルール変更の可能性に扉を開いている。

【M/A】