コラム

大差のついたカンファレンス決勝、勝敗を分けた鍵とは

2017年01月26日(木) 08:41

アトランタ・ファルコンズ【AP Photo/David J. Phillip】

特集トップ > プレーオフ > 第51回 > カンファレンス総括

今年のカンファレンスチャンピオンシップはAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)、NFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)ともに点差の開く展開となり、スリリングに欠けた試合だった。残った4チームともにオフェンスの得点力が高く、競り合えば興味深いシュートアウトになったはずだ。それが実現しなかった理由はどこにあるのか。

先に行われたNFC決勝はファルコンズがパッカーズに44対21で完勝した。前半だけでファルコンズが24対0とリードする意外な展開で、8連勝でこの試合に臨んだパッカーズはまるで魔法が解けたかのようにシーズン序盤の不調なチームに戻ってしまった。

ファルコンズはマット・ライアンが392ヤードパッシング、4タッチダウンパス成功と大暴れ。これでライアンは2012年シーズンにまでさかのぼってプレーオフ4試合連続で3つ以上のタッチダウンパスを成功させるという史上初の快挙を成し遂げたのである。

ワイドレシーバー(WR)フリオ・ジョーンズは73ヤードを含む2タッチダウン、180ヤードレシーブと活躍し、WRモハメド・サヌー、ランニングバック(RB)テビン・コールマン、デボンテ・フリーマンもそれぞれタッチダウンを決めている。第2クオーターにはライアンもランでエンドゾーンに飛び込むなど、リーグトップの得点力を誇るオフェンスの強さをまざまざと見せつけた。

一方のパッカーズはキッカー(K)メイソン・クロスビーのフィールドゴール失敗やフルバック(FB)アーロン・リプコウスキーのエンドゾーン前でのファンブルロストなど“らしくない”ミスを連発した。得点機のミスによって点差を広げられ、追いかける展開を強いられたのは試合巧者のパッカーズにとっては大きな誤算だ。

ラインバッカー(LB)ジェイク・ライアン、レフトガード(LG)レイン・テイラー、ライトガード(RG)T.J.ラング、セーフティ(S)マイカ・ハイドらが次々と故障退場したのも痛手だった。オフェンスラインは人材が足りずにノーズタックル(NT)レトロイ・ガイオンがオフェンシブガード(OG)としてプレーしたほどだ。

パッカーズの自滅という印象の強い試合になったが、相手のミスに乗じて得点を重ねたファルコンズにも安定感があった。パッカーズのターンオーバーを2タッチダウンに結びつけただけではなく、5分を越える得点ドライブを3回行うことでパッカーズのオフェンスに時間とリズムを与えていない。

ファルコンズが球団史上2度目のスーパーボウル進出を決めた直後に始まったAFC決勝ではペイトリオッツのオフェンスに対してスティーラーズのディフェンスが完全にミスマッチだったと言える。トム・ブレイディが早いタイミングのショートパスを中心にオフェンスを組み立てたため、アウトサイドラインバッカー(OLB)バド・デュプリーやジェームズ・ハリソンのパスラッシュは機能せず。

スティーラーズは苦労して作り上げたサードダウンロングの場面は判で押したように3メンラッシュを繰り返し、その都度パスプロテクションに守られたブレイディにファーストダウン更新のパスを許している。

もともとブレイディはこの日の舞台と同じジレット・スタジアムでスティーラーズに負けたことがない。それどころか、対スティーラーズ戦では最後に被インターセプトを喫してからこの試合まで22個のタッチダウンパスを連続で成功させているのだ。そのスティーラーズがブレイディを苦しめるにはパスラッシュで徹底的にプレッシャーをかけるしかない。それができない以上、勝機はなかった。

ペイトリオッツのディフェンスも好プレーを連発している。エリック・ローやマルコム・バトラーはレシーバーの手に収まったボールを掻き出してインコンプリートとし、新人ディフェンシブタックル(DT)ビンセント・バレンタインはゴール前で値千金のロスタックルで貢献。腿の付け根のケガで早々に退場したRBレベオン・ベルを欠いたスティーラーズは最後までオフェンスのリズムを構築できなかった。

ペイトリオッツは史上最多9度目のスーパーボウル進出となる。ファルコンズには現在3連勝中と、こちらも相性がいい。もっとも、最後に対戦したのは3年前だ。現在のダン・クインではなく、マイク・スミスがファルコンズのヘッドコーチ(HC)を務めており、4勝12敗で終わったシーズンだった。つまり、今とはチーム状況が全く違う。

リーグ最多得点(1試合平均33.8点)のファルコンズオフェンスと最少失点のペイトリオッツディフェンスという分かりやすいマッチアップだ。やや興ざめだったカンファレンス決勝とは違い、最後まで勝敗の行方が分からない熱戦を期待したい。

特集トップ > プレーオフ > 第51回 > カンファレンス総括

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。