コラム

争奪戦か、静観か? 複雑に絡むドラフトのQB獲得戦略

2017年04月16日(日) 08:40

ドラフトの舞台となるフィラデルフィア【AP Photo/Matt Rourke】

今年もNFLドラフト(現地時間4月27日から29日までフィラデルフィアで開催)が近づいてきた。クオーターバック(QB)が注目されないドラフトはないが、今年はやや人材が薄いと言われる。

上位での指名が予想されるのはミッチェル・トゥルビスキー(ノースカロライナ大学)、デショーン・ワトソン(クレムゾン大学)、パトリック・マホームズ(テキサス工科大学)、デショーン・カイザー(ノートルダム大学)、ネイサン・ピーターマン(ピッツバーグ大学)らだ。

ところが、先発経験の少なさやパスの精度、肩の強さなどに疑問符のつく選手が多く、各チームのスカウト陣も1巡指名には及び腰だという。

過去2年はいずれも上位2指名がQBで、そのすべてがルーキーのうちに先発の座を獲得している。2015年ではバッカニアーズ入りしたジェイミス・ウィンストン、タイタンズに加入したマーカス・マリオタ、2016年組ではラムズのジャレッド・ゴフ、イーグルスのカーソン・ウェンツだ。現地では今年の候補生の中には彼らに匹敵する人材は見当たらないともっぱら。今年はディフェンスラインやディフェンシブバックに人材が多いのでそちらが優先される可能性がある。

それに対し、QBを必要としているNFLチームは例年より多い。それは新たなフランチャイズQB発掘を急務としているブラウンズ、49ers、テキサンズ、ビルズ、ジェッツらに加えて、これまで長年活躍してきたスターターQBの後継者を必要とする球団が一気に増えたからだ。

カーディナルス、スティーラーズ、ジャイアンツ、チャージャーズなどがこうした部類に入る。カーソン・パーマー(カーディナルス)とベン・ロスリスバーガー(スティーラーズ)はこのオフに入った時点で引退の可能性を示唆した。結局はいずれも現役続行を表明しているが、NFLキャリアが終盤に差し掛かっていることは間違いない。この2チームは早ければ来年にも先発QB交代が起こるかもしれないのだ。

イーライ・マニング(ジャイアンツ)とフィリップ・リバース(チャージャーズ)に近々の引退のうわさはないものの、ロスリスバーガーと同じ2004年のNFL入りの彼らの後継者を探す時期に来ている。

上記4人はいずれもポケットパサーだが、こうしたタイプのQBがカレッジ界では希少になっていることも事態を難しくしている。ロングスナップを受けてレシーバーを探すことに慣れているカレッジのQBたちにとって、ドロップバックしながらフィールドを見渡すというテクニックは意外に順応が難しい。

NFLスタイルに慣れるには時間がかかることを想定するなら、現在のスターターが現役でプレイできる間に後継者候補を獲得して育成したい。しかし、残念ながら今年のドラフトは人材に乏しい。

そこでクローズアップされてくるのがバックアップQBのトレードによる獲得だ。現在ならペイトリオッツのジミー・ガロポロやベンガルズのA.J.マカロンの評価が高い。いずれも過去の先発試合で能力を発揮した。現在のチームでは試合出場の機会が少ないことも他チームから注目される理由の一つだ。

ドラフト当日には指名権や在籍選手を絡めたトレードが目まぐるしく行われる。この動きの中でガロポロやマカロンは主役級の関心を集めるかもしれない。

QB発掘が急務として先に挙げたチームの中でブラウンズは1位、49ersは2位、ジェッツは6位指名権を持っている。ただし、今年の人材を考えるとこれらのトップ6指名ではQBが指名されないケースも考えうる。とすれば10番目指名のビルズ、12番目にもう一つの1巡指名権を持つブラウンズらはQBをターゲットにしそうだ。

QBを必要としているチームが今年はあえて1~2巡での指名を見送るというのも作戦だ。昨年のダック・プレスコット(カウボーイズ)は4巡指名ながらトニー・ロモからポジションを奪って今や将来を期待されるフランチャイズQBとなった。アンドリュー・ラックとロバート・グリフィンIII世と同じ2012年のNFL入りのラッセル・ウィルソンは3巡指名だったが、彼はすでにスーパーボウルリングを持っている。

こうした埋もれた人材を発掘するのはスカウト陣の手腕だ。今年のQB指名はそのスカウト陣の能力も試されることになるだろう。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。