コラム

長期契約締結で将来のレイダースを支える2014年ドラフト組

2017年07月09日(日) 10:07


【オークランド・レイダースのデレック・カーAP Photo/Ed Zurga】

昨年、12勝4敗で14年ぶりのプレーオフ出場を果たしたレイダース。数年に及ぶドラフト戦略とその不足を補う的確なフリーエージェント(FA)、トレード補強が実を結んだ結果だ。

この2週間の間にレイダースは2つの大型契約延長を成立させた。ひとつはクオーターバック(QB)デレック・カーの契約更改で、2022年まで保有権を延長する総額1億2,500万ドルの内容。NFLで最もサラリーの高いQBとなった。

もうひとつはライトガード(RG)ゲーブ・ジャクソンとの契約で、やはり2022年まで延長し、年俸総額は5,600万ドルと高額である。

カーもジャクソンも2014年のドラフト入団組だ。そして、昨季の年間最高守備選手であるディフェンシブエンド(DE)カリル・マックも彼らの同期生である。マックはレイダースが1巡上位指名選手(マックは全体5番目)にのみ行使できる契約5年目のオプションを選択したため、来季いっぱいまでは契約下にある。来年のオフに長期の延長契約を結ぶものとみられる。

攻守の要に成長したこの3選手はいわば“花の2014年ドラフト組”だ。アル・デービス前オーナー時代は計画性のないドラフト戦略で、派手さはあっても戦力に結びつかない失策が続いたが、レジー・マッケンジーがジェネラルマネジャー(GM)として人事権を握ってからは長期計画に基づくチーム再建が行われてきた。多く有能な人材を輩出したのが2014年のドラフトだった。

カーとマックはそれぞれにオフェンスとディフェンスの花形ポジションで、高年俸を手にするのは予想されていた。もっとも、プレーオフ未経験(昨季は故障で欠場)のカーがアーロン・ロジャーズ、キャム・ニュートン、マット・ライアンといった、チームをスーパーボウルに導いた経験を持つQBよりも高い年俸を手にするとは思わなかったが。

ジャクソンが高評価を得たのは、NFL全体にオフェンスライン(OL)の重要性を見直そうとする流れの一環だろう。昨シーズン、レイダースやカウボーイズのようにOLが安定したチームが急速に力をつけた事実は重大だ。カーは3年目、カウボーイズのダック・プレスコットにいたっては新人QBでありながらプレーオフ初出場を果たした。能力は高いのに弱いOLのためにポテンシャルを十分に発揮できなかったアンドリュー・ラックとは対照的だ。

今年のドラフトでもOLは人気のポジションのひとつだった。NFLは今、稀に見る“OLバブル”にあるのかもしれない。

OLの補強にはチームのカラーがはっきりと表れる。カウボーイズはドラフト上位指名でいい人材をとる方針が徹底しているし、レイダースはレフトガード(LG)ケレチ・オセメリーやセンター(C)ロドニー・ハドソンのように欲しい人材であれば高年俸であっても引き抜くことにためらいがない。

その一方でOLには金をかけたくないとするチームも実は少なくない。こうしたチームのオーナーやGMはスキルポジションこそがチームを強くすると信じている。ただ、レイダースやカウボーイズ、NFCを制したファルコンズのようにOLを強くすることで実績を残したチームが多く現れればその考えを改めざるを得ないだろう。

レイダースの花の2014年組が将来のレイダースを牽引していくことは間違いない。その一角をジャクソンが担うことでOLの価値はさらに上がっていく。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。