コラム

レギュラーシーズン折り返し、中間地点でのプレーオフ展望

2017年11月11日(土) 10:00


フィラデルフィア・イーグルスのチアリーダー【AP Photo/Michael Perez】

2017年シーズンも折り返し地点を迎え、全32チームが少なくともレギュラーシーズンの半数にあたる8試合を消化した。現時点でのプレーオフシード順位は以下の通りだ。勝敗が同じケースではタイブレイクの条件が整っていない場合もあり、あくまでも暫定のものだ。

順位 AFC NFC
1 スティーラーズ 6勝2敗 イーグルス 8勝1敗
2 ペイトリオッツ 6勝2敗 セインツ 6勝2敗
3 チーフス 6勝3敗 バイキングス 6勝2敗
4 タイタンズ 5勝3敗 ラムズ 6勝2敗
5 ジャガーズ 5勝3敗 パンサーズ 6勝3敗
6 ビルズ 5勝3敗 カウボーイズ 6勝3敗

AFCではタイタンズ、ジャガーズ、ビルズの躍進が目立つ。特にビルズは1999年シーズン以来となるポストシーズンの期待がかかる。優勝候補の一角にあげられたレイダーズは4勝5敗と伸び悩み、2年前のリーグ王者ブロンコスは3勝5敗と後退している。

NFCはイーグルス、ラムズが大健闘している一方で常連組のシーホークス、パッカーズの姿が消え、昨年のカンファレンス覇者ファルコンズも上位6位に含まれていない。ただし、NFCはAFC以上に大混戦で勝率5割以上のチームが12あり、今後も変動があるに違いない。

実際のプレーオフがこの顔ぶれとなれば近年、数チームに固定されがちだった戦力分布図に大きな風穴が開くことになる。果たして、今季はそうなるのだろうか。

特定のチームが毎年のようにプレーオフに駒を進められるのには理由がある。シーズン中盤から終盤にかけて戦力のピークを持ってくるノウハウを持っていることだ。弱点を露呈してもすぐに修正できるペイトリオッツ、例年、シーズン後半に調子を上げてくるスティーラーズ、12月の戦いに強いシーホークスなどは、いずれもこの時期からの伸び代が大きい。

逆に序盤から全力で飛ばしてきたチームは息切れするケースが少なくない。ここでの息切れとは必ずしもスタミナのことだけではない。シーズンが深まって試合数をこなしてくれば、それだけ対戦相手に研究材料を提供することになる。徹底的にスカウティングされるのだ。それを凌駕するだけの新たな戦術や選手の台頭がなければ17週もの長いシーズンを乗り切ることは至難の業だ。

例えばビルズをあげてみよう。ビルズがここまで成績を伸ばしてきた原因は強力なランオフェンスとターンオーバー獲得率の高さだ。シーズン第8週終了現在でターンオーバー率(奪った数と失った数の差)は+14でNFLトップだ。

しかし、第9週のジェッツ戦ではこの“勝利の方程式”が崩れた。テイクアウェーで試合の主導権を握るべきはずが、逆に3つのギブアウェーで自滅した。さらにジェッツの執拗なギャップシューティングディフェンスにランも封じられ、いいところなく敗れた。

この試合は今後の対戦相手には絶好のサンプルだ。ラン対策はジェッツが行ったものを真似てくるだろう。そうした時にビルズはそれを上回るだけのプレースタイルを確立できるかが鍵だ。

残りのスケジュールも厳しい。今後、ビルズは好調のセインツ、チーフスとの対戦があるばかりでなく、地区ライバルのペイトリオッツ、ドルフィンズとの試合をそれぞれ2戦ずつ残している。しかも、すでにバイウイークを終えているため、残り8試合を休みなくこなさなければならない。筆者の星勘定予想では3勝5敗。となれば今季は8勝8敗で、おそらくプレーオフ出場はかなわない。

テキサンズのクオーターバック(QB)デショーン・ワトソンが今季絶望となったことでAFCサウスはタイタンズとジャガーズに優勝争いが絞られた。優勝争いに敗れた方がワイルドカード枠を獲得するには10勝ないし11勝には到達したい。

意外にダークホースになりそうなのはチャージャーズだ。成績は3勝5敗ながら、開幕4連敗を喫して以降に3勝1敗と調子は上がりつつある。地区内成績(2勝2敗)やカンファレンス内成績(2勝4敗)が良くないのはマイナス要因だが、後半の台風の目となる可能性はある。

NFCはQBの観点から見ると興味深い。新進気鋭のカーソン・ウェンツ(イーグルス)、ジャレッド・ゴフ(ラムズ)にベテランのドリュー・ブリーズ(セインツ)が対抗するという構図だ。そこに遅咲きのケース・キーナム(バイキングス)が絡む。さらに2年前の調子を取り戻しつつあるキャム・ニュートン(パンサーズ)にやや出遅れたダック・プレスコット(カウボーイズ)の復調がどう影響するか。もちろん、シーホークスのラッセル・ウィルソン、ファルコンズのマット・ライアンもこのままではいないだろう。

NFCもこの暫定シード順位のまま行くとは考えにくく、シーホークス、パンサーズ、カウボーイズの巻き返しがあるだろう。好不調の波があるものの、QBカーク・カズンズとディフェンスがいいレッドスキンズも不気味な存在だ。

レギュラーシーズンゲームはともかく、プレーオフではチーム間の戦力均衡は破られて久しく、格差が開きつつある。その傾向を打破するためにもタイタンズ、ジャガーズ、ビルズ、ラムズ、セインツには前半の好調を維持してもらいたい。前半の勢いが本物かどうかは、今後これらのチームの将来を左右する大きな要素でもある。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。