コラム

QB百花繚乱のドラフト終了、“ポスト2004クラス”は見つかったのか?

2018年05月05日(土) 23:34

2018年NFLドラフト【AP Photo/Eric Gay】

2018年のNFLドラフトが幕を閉じた。クオーターバック(QB)に人材が多いとの前評判通り、1巡目だけで5人ものQBが指名を受けた。これはドノバン・マクナブやダンテ・カルペッパーらが指名された1999年以来の多さだ。

ベイカー・メイフィールド(ブラウンズ)、サム・ダーノルド(ジェッツ)、ジョシュ・アレン(ビルズ)、ジョシュ・ローゼン(カーディナルス)はそれぞれ近い将来にフランチャイズQBとなることが期待される。1巡の最後にレイブンズがラマー・ジャクソンを指名したのは意外だった。ジョー・フラッコはまだ現役バリバリであり、プレースタイルも大きく違うからだ。どのような起用をされるのか楽しみだ。

今年のQB指名でいえば上記のようにQB補強の急務なチームに加え、世代交代を推し進めるチームが新人を発掘するかどうかも注目だった。とくに、1巡で4人のQB(イーライ・マニング、フィリップ・リバース、ベン・ロスリスバーガー、J.P.ロスマン)が指名され、そのうち2人(マニング、ロスリスバーガー)がスーパーボウル優勝を経験している“2004クラス”の後継者がそろそろ現れてもいい頃だ。

全体2位指名権を持っていたジャイアンツは1巡目でのQB獲得を見送り、4巡目にカイル・ローレッタ(リッチモンド大学)を指名した。今ドラフト最高のアスリートと評されたランニングバック(RB)セイクワン・バークリーの1巡指名を優先したためだ。また、昨年のドラフトでデイビス・ウェブを獲得(3巡)していることもジャイアンツが上位でのQB指名を断念した理由だろう。

ローレッタは40試合の出場経験があり、パスの1試合平均獲得距離が340ヤードに及び、パス成功率も65%近い数字を残した。パサーとしての能力が評価されての指名だ。マニングがあと1年ないし2年は先発として活躍できるだろうから、その間にローレッタとウェブの間で後継者争いが繰り広げられることになりそうだ。

スティーラーズは3巡でオクラホマ州立大学のメイソン・ルドルフを獲得した。2巡で指名されたQBはいなかったから、全体で6番目に指名されたQBである。ルドルフの有利な点は先発経験が3年と長いこと、パスのスクールレコードをいくつも塗り替えるなど肩が強いことなどだ。

その意味では現在在籍するランドリー・ジョーンズ、ジョシュ・ドブスよりも“ポストビッグベン”に近いかもしれない。今やロスリスバーガーはいつ引退宣言をしても不思議ではない。今季限りの可能性も高い。それだけに後継者の育成は急がれる。

チャージャーズは今年のドラフトではQBを指名しなかった。リバースの後継者は来年以降のドラフトかフリーエージェント(FA)で見つける方針だ。

2004クラス以外ではドリュー・ブリーズと2年間の契約延長をしたばかりのセインツもQB指名はなく、トム・ブレイディが41歳となるペイトリオッツは7巡でダニー・エトリング(ルイジアナ州立大学)を指名しただけだった。セインツではショーン・ペイトンHCが周囲の評判とは違い、今年のQB候補に魅力がないと断言しており、ペイトリオッツも頻繁に指名権のトレードを行った割にはQBの上位指名には動かなかった。

NFLの一線で活躍できるQBを発掘するのは非常に難しい。現在の先発QBで一時代を築いたチームはなおさら慎重になるだろう。機を逸さず、それでいていい人材を確保しなければならない。ジャイアンツ、スティーラーズ、ペイトリオッツ、セインツ、チャージャーズがこの難問をどう克服するか長い目で見ていきたい。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。