コラム

マイク・ペティン新体制でパッカーズ守備はどう変わる?

2018年07月08日(日) 06:45

グリーンベイ・パッカーズ【AP Photo/Mike Roemer】

昨年のパッカーズはクオーターバック(QB)アーロン・ロジャースをはじめ、攻守の主力選手に故障者が相次いだ影響もあって7勝9敗に終わり、2008年以来となる負け越しでプレーオフ進出を逃した。マイク・マッカーシーHC(ヘッドコーチ)は留任するが、オフェンスとディフェンスのコーディネーターは交代して新シーズンを迎えることになる。

オフェンスは辞任したエドガー・ベネットに代わり、前ドルフィンズHCのジョー・フィルビンを採用。フィルビンは7年ぶりのパッカーズ復帰だ。もっとも、オフェンスはマッカーシーがプレーコールを担当するので基本方針は変わらない。

これに対し、ディフェンスは2009年からコーディネーターを務めたドム・ケイパースから前ブラウンズHCのマイク・ペティンに交代している。これはパッカーズディフェンスにどのような変化をもたらすのだろうか。

ケイパースが率いたディフェンスは彼が入団した2009年とその翌年のスーパーボウル制覇のシーズンまではリーグのトップ5にランクインした。しかし、2011年に最下位になると20位以下に低迷する年が続く。アグレッシブなプレスカバーが裏目に出てビッグプレーを許し、失点が多くなったのが理由だった。

ペティンも基本はプレスカバーのスタイルを好む。これは彼がレックス・ライアンの流れをくむからだ。ペティンはレイブンズの守備コーディネーターだったライアンの下でビデオ担当コーチとして参画し、後にポジションコーチとなった。ライアンがジェッツのHCに就任した時は守備コーディネーターに抜擢されて貢献している。

ライアンは3-4隊形からブリッツを多用してQBにプレッシャーをかける。ペティンもそのスタイルをベースにするが、ビルズの守備コーディネーターやブラウンズのHCを経験する中で他の要素も取り入れたマルチなタイプのディフェンスを駆使するようになった。

現在は4-3も使えばマンカバーとゾーンカバーを併用もする。選手の能力に合わせて、さまざまなスキームを使うことができることになり、過去数年選手の故障が多いパッカーズではやり繰りがしやすいだろう。

ペティンが就任して最初に行ったことはプレーブック内のプレー数を絞り込み、ターミノロジーを簡略化することだった。ケイパースは多種多様なプレーをパッカーズに導入し、オフェンスの予想しがたいディフェンスを構築した。しかし、故障によって選手の入れ替えが頻繁になると理解の十分でない控え選手も投入せざるを得なくなり、プレーに迷いが生じてしまった。選手は自分が何をすべきかわからないままにフィールドにいた場面すらあったという。

ペティンはプレー数の多さよりもすべての選手の理解力の深さを優先した。その方が思い切りのいいプレーができ、結果的にアグレッシブでスピードのあるディフェンスが生まれるとの考えからだ。ターミノロジーを簡略化することは、伝達を早くするだけでなく誤解を防ぐという狙いもある。すべては選手にフィールド上で迷いのない激しいプレーを生みださせるための方策なのだ。

NFLではプレーの簡略化が意外に好結果を生むことがままある。パッカーズのディフェンスもこの例にならうことができればパッカーズは再びスーパーボウル候補として復活を遂げる可能性が高まるだろう。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。