2018年シーズンの四半期を振り返る
2018年10月07日(日) 00:24NFLはシーズン第4週を消化した時点でレギュラーシーズンの4分の1、言わば四半期が終了したことになる。プレーオフを占うには早すぎるが、シーズン序盤を振り返ってみたい。
開幕4連勝と好調なラムズはほぼ予想通りといっていいだろう。クオーターバック(QB)ジャレット・ゴフ、ランニングバック(RB)トッド・ガーリー、ディフェンシブタックル(DT)アーロン・ドナルドら既存のスター選手が期待通りの働きをしている上に、ワイドレシーバー(WR)ブランディン・クックス、DTダムコング・スー、コーナーバック(CB)マーカス・ピーターズ、アキブ・タリブら新加入組も活躍をしている。昨年得たプレーオフの経験を礎にさらにチームが成長している印象だ。NFLで最もタレントが揃っているチームだと言っていいだろう。
AFCで唯一の勝ちっぱなしのチーフスはQBパトリック・マホームズの先発起用がズバリ当たった。昨年の実戦経験が1試合しかなく、その内容もパッとしなかったことから前任のアレックス・スミス(現レッドスキンズ)に比べて見劣りがするのではないかと懸念されたが、むしろビッグプレーを連発させ、「ショータイム」のニックネームを欲しいままにする。第4週のマンデーナイトゲームではブロンコスとの頂上決戦1回戦を終盤の逆転勝ちで制し、ますます勢いを増している。
ドルフィンズとベアーズの好調(ともに3勝1敗)は予想外だった。ドルフィンズは第4週こそペイトリオッツに敗れたが開幕3連勝の好スタートを切っている。興味深いのはここまでの総得点が82なのに対し、失点は90で得失点差がマイナス8となっていることだ。全8地区の首位のチーム(同率含む)で得失よりも失点が多いのはドルフィンズだけだ。今後猛追してくるであろうペイトリオッツをどうしのぐかがこれからの課題か。
ベアーズは開幕直前にトレードで入団したカリル・マックの効果が大だ。すでに5サック、1インターセプト(リターンタッチダウン)、4回のファンブル誘発を記録しており、ユニフォームが変わっても依然としてプレーメーカーとして活躍している。第5週はバイウイークだが、そのあとにドルフィンズ、ペイトリオッツと対戦する。ここをどう乗り切るかは注目だ。
期待外れだったのはスティーラーズとファルコンズだ。いずれも1勝どまりで地区最下位に甘んじる。スティーラーズはエースRBリビオン・ベルがホールドアウト中で不在なのが響くが、それ以上にビッグプレーをいくつも許してしまうディフェンスが深刻だ。セカンダリーの人材が多く変わったことも理由のひとつだが、早急な対策を打たないとプレーオフはおろか勝ち越しもままならないほどのチーム状況だ。
ファルコンズはディフェンスの改善で上昇が期待されたが、故障者が多く出たために本来持つ力が出し切れていない印象だ。第5週にはRBダボンテ・フリーマンが復帰する見込みなのでこれがいいきっかけとなればいい。皮肉にもその相手はスティーラーズだ。
スーパーボウルチャンピオンのイーグルスはQBカーソン・ウェンツが復帰を果たしたがチームは2勝2敗で昨年の今頃のような勢いはない。そのイーグルスとNFC王座を争ったバイキングスも1勝2敗1分けと負けが先行している。
ディビジョンごとにみるとAFC北地区はベンガルズとレイブンズが3勝1敗で並び、AFC南地区もタイタンズとジャガーズが3勝1敗で首位を分け合う。シーズン序盤でディビジョン内対戦は多くないが、それでも地区対決で2勝0敗の成績を残しているチーフスとタイタンズは今後の地区優勝争いが有利に展開するはずだ。
今年のドラフトでは1巡目で5人のQBが指名されたが、レイブンズのラマー・ジャクソンを除く4人がすでに先発QBとしての地位を与えられている。先発した試合で勝利したのはジェッツのサム・ダーノルドとビルズのジョシュ・アレン(ともに1回ずつ)だが、貴重な実戦経験を積んでいることは間違いない。ゴフやウェンツは1年目の経験から2年目に大きく成長した。同じことが今年の新人QBたちにも起こるとしたら、このポジションでの世代交代が一気に進むことになる。今後の楽しみのひとつだ。
いけざわ・ひろし
- 生沢 浩
- 1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。