コラム

ハイスコアゲームが相次ぐ2018年、勝敗のカギは攻撃力か守備力か

2018年10月15日(月) 03:09


ロサンゼルス・ラムズとロサンゼルス・チャージャーズ【AP Photo/Jae C. Hong】

今シーズンはハイスコアリングゲームが多い。かつてはまれだった40得点以上をたたき出すチームが続出し、両チームともに高得点で競り合うシュートアウトも目立つ。

ちなみに昨シーズンの1試合当たりの平均得点(両チーム合計)は43.4点で2009年以来の低水準だった。これにはアーロン・ロジャースやカーソン・パーマー、デショーン・ワトソンといった得点力の高いクオーターバックが故障で長期欠場したことが影響したと考えられる。

今季第5週は比較的ロースコアの試合が多かったが、それでも昨年の数値を下回ったのは4試合しかない。第5週までで合計得点が80点以上だった試合は4試合もあり、1試合で40得点以上したチームは延べ11に上る。

こうしたデータを見ると、得点力の高いチームでないと戦い抜けないという仮説が成り立つ。チームの総得点は言うまでもなく、オフェンス以外のディフェンスやスペシャルチームによるスコアも含まれる。あらゆる手段を使って得点できるチームが強いのか、それとも固いディフェンスとボールコントロールによって競り勝つスタイルは不変の強さを持つのか。さまざまなデータから検証してみたい。

まず、第5週終了時点でのAFC、NFCそれぞれのトップ6(暫定プレーオフチーム)は以下の通りだ。実際のプレーオフピクチャーと同様に考えているため、勝敗数とシード順位は必ずしも一致しない(例:NFCのパンサーズ)。

順位 AFC NFC
1 チーフス 5勝0敗 ラムズ 5勝0敗
2 ベンガルズ 4勝1敗 セインツ 4勝1敗
3 ペイトリオッツ 3勝2敗 ベアーズ 3勝1敗
4 タイタンズ 3勝2敗 レッドスキンズ 2勝2敗
5 チャージャーズ 3勝2敗 パンサーズ 3勝1敗
6 レイブンズ 3勝2敗 バッカニアーズ 2勝2敗

さて、1試合平均のチーム総得点のトップ6をカンファレンスごとに順に羅列すると、AFCはチーフス、ベンガルズ、スティーラーズ、チャージャーズ、ペイトリオッツ、レイブンズ。NFCはセインツ、ラムズ、バッカニアーズ、ベアーズ、ファルコンズ、パンサーズだ。

AFCのスティーラーズ、NFCのファルコンズを除き、カンファレンストップ6と暫定プレーオフチームは一致する。参考までに、得点力トップ6から漏れたタイタンズはリーグ29位、レッドスキンズは23位と低水準だ。

次に失点の少ない、すなわちディフェンスの堅いチームを見ていこう。同じくカンファレンス別に並べるとAFCはレイブンズ、タイタンズ、ジャガーズ、ジェッツ、ペイトリオッツ、ブラウンズで、NFCはベアーズ、カウボーイズ、ラムズ、イーグルス、レッドスキンズ、カージナルスとなる。

こちらはAFC、NFCともに3チームずつ一致しない。

ちなみに失点の多い順にならべるとAFCはレイダーズ、コルツ、スティーラーズ、ブロンコス、チャージャーズ、チーフスで、NFCはバッカニアーズ、ファルコンズ、49ers、セインツ、ライオンズ、バイキングスとなる。

面白いものでAFCはチャージャーズとチーフス、NFCはバッカニアーズとセインツが一致する。これらのチームは取られた以上に得点を取り返すタイプのチームか。反対に高得点チームに名前を連ねたスティーラーズとファルコンズはせっかく得点した分を失点で相殺されてしまうようだ。

最後に得失点差の順位で見るとAFCはレイブンズ、チーフス、ペイトリオッツ、ベンガルズ、ジェッツ、ジャガーズとなり、NFCはラムズ、ベアーズ、セインツ、パンサーズ、シーホークス、パッカーズとなった。AFC、NFCともに4チームで一致している。

得点にかかわる3つのカテゴリーに限定したという条件付きだが、やはり得点力の高いチームが上位に食い込む傾向にあるようだ。もっとも、バイウィークをすでに迎えたチームもあるから平均得点とはいえ正確なチーム総得点ではないし、まだ4~5試合と標本が少ないのも事実だ。これにターンオーバー率などが絡むとまた違った見方ができるかもしれない。

ただし、今季の試合にハイスコアリングゲームが多いのは事実で、シュートアウトについて行けないチームは苦しい戦いを強いられるかもしれない。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。