コラム

レギュラーシーズンも残りあと1カ月、プレーオフ争いの展望

2018年12月01日(土) 08:41

ニューオーリンズ・セインツとロサンゼルス・ラムズ【Matt Patterson via AP】

NFLはいよいよレギュラーシーズンの最終月、プレーオフ進出チームが決まる重要な時期に差し掛かった。今季、NFCはラムズ(10勝1敗)とセインツ(10勝2敗)が頭ひとつ抜けた格好だが、AFC北地区やNFC東地区など接戦の首位争いが展開されている。残り5週間でどのようなプレーオフ争いが繰り広げられるのか。

AFC東地区はペイトリオッツ(8勝3敗)が10年連続のディビジョン制覇に向けて着実に歩んでいる。この地区でプレーオフに出られるのはおそらくペイトリオッツのみで、あとは近年の定位置であるトップ2シードを確保できるかが焦点となる。チーフス(9勝2敗)との直接対決で勝利している点は有利だ。シーズン第15週に予定されているスティーラーズ(7勝3敗1分)との対戦が重要な意味を持つ。

スティーラーズはシーズン第12週にブロンコスに敗れて連勝が6で止まり、レイブンズ(6勝5敗)との差が縮まった。ただし、今季の戦いぶりを見る限りスティーラーズの方が地力は上だ。レイブンズは新人のラマー・ジャクソンを先発クオーターバック(QB)に起用して2連勝と勢いに乗っているものの、本来のオフェンスの姿ではないだけにどこまでこれが継続できるかは疑問だ。数字上はベンガルズ(5勝6敗)にもチャンスがあるとはいえ、シーズン序盤の好調とは打って変わって不振が続き、プレーオフは難しいだろう。

コルツ(6勝5敗)の5連勝で混とんとしてきたのがAFC南地区だ。首位をひた走るテキサンズ(8勝3敗)と、それを追うコルツとも残りのスケジュールは比較的に楽と言え、その意味でもテキサンズの優位は動かないだろう。ただし、シーズン第14週に迎える今季2度目の直接対決の結果いかんではコルツにも逆転のチャンスは出てくる。

AFC西地区はチーフスとチャージャーズ(8勝3敗)の一騎打ちだ。直接対決はシーズン第15週にあり、これが雌雄を決する大一番になるかもしれない。この地区は優勝すればAFCのトップ2シードを得られる可能性があるが、負ければおそらく第5シードとなりホーム開催権がほぼ絶望となる。ディビジョンを制するか否かはまさに天と地の違いがあるのだ。

NFCはセインツとラムズがトップ2シードとなる可能性が高い。同じ勝率でシーズンを終えれば直接対決ではセインツが勝っているために第1シードを獲得する。

セインツの属するNFC南地区はパンサーズ(6勝5敗)がどこまで星を伸ばせるかだろう。地区優勝はほぼ絶望的なため、ワイルドカード枠を目指すことになる。現時点でNFCの8位につけており、ワイルドカードも難しい状況だ。取りこぼしの許されない1カ月となる。

NFC西地区のシーホークス(6勝5敗)にも同じことが言える。現時点ではプレーオフ争い7位に甘んじているが、ワイルドカード枠を争う可能性のあるカウボーイズ(7勝5敗)とパンサーズには直接対決で勝利していることが有利だ。

NFC東地区はレッドスキンズ(6勝5敗)のQBアレックス・スミスが脚の骨折により今季絶望となったことで混戦模様となった。2連敗を喫している間にカウボーイズが4連勝と調子を上げてきており、シーズン第13週にセインツを下したカウボーイズが首位に躍り出ている。直接対決では1勝1敗の五分だが、エースQB不在のレッドスキンズに不利な状況は変わらない。5勝6敗のイーグルスも今後の状況次第では逆転地区優勝の可能性も残されており、この地区は最終週までもつれることになりそうだ。

ベアーズ(8勝3敗)が久しぶりに好調なNFC北地区はバイキングス(6勝4敗1分)がワイルドカード枠を狙う。数字上は地区優勝の可能性は十分に残されているが、チーム状況を見ればベアーズが大きくリードしている。

プレーオフで勝ち進むチームは例外なく12月に強い。この時期にチームのピークを持ってくるからこそプレーオフで勝てるのだ。例年であればスティーラーズ、チャージャーズ、シーホークスなどがこの時期にギアをもう一段階上にあげてくる。逆にチーフスやテキサンズ、カウボーイズは過去に失速した例がある。

レギュラーシーズンを締めくくる残り5試合、各チームが現有戦力でいかにチームを仕上げていくか。その真価が問われる時期となる。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。