ポストシーズン開幕! ワイルドカードラウンド展望
2019年01月04日(金) 23:26いよいよポストシーズンが始まる。昨年のプレーオフを逃したチームのうち、レイブンズ、チャージャーズ、テキサンズ、コルツ、カウボーイズ、ベアーズ、シーホークスが現地2月3日(日)にアトランタで行われる第53回スーパーボウルの挑戦権を得た。
昨年のスーパーボウル覇者イーグルスもNFC第6シードに滑り込み、2003-2004年シーズンのペイトリオッツ以来となる連覇を狙う。そのペイトリオッツはシーズン終盤にもたつきを見せたものの、堂々のAFC第2シードでポストシーズンに臨む。
プレーオフ1回戦にあたるワイルドカードは4試合のうち3試合が今季のリマッチとなる。それぞれのチームの特徴と見どころをまとめてみた。
コルツ(10勝6敗)対テキサンズ(11勝5敗)
コルツは4季ぶりのプレーオフ返り咲きだ。クオーターバック(QB)アンドリュー・ラックが肩のケガから完全復帰し、オフェンスの柱として活躍。エースレシーバーはワイドレシーバー(WR)T.Y.ヒルトンだが、タイトエンド(TE)へのタッチダウンパス数もリーグ最多の21あり、エリック・エブロンをはじめとするTE陣にも注目だ。
テキサンズはラインバッカー(LB)ジェイデボン・クラウニーとディフェンシブエンド(DE)J.J.ワットがけん引するディフェンスが好調だ。彼らが繰り出すパスラッシュと被サックでリーグ最少(18)だったコルツオフェンスライン(OL)のマッチアップは見どころのひとつである。
両チームともにシーズン中に長期の連勝をマークした。テキサンズは第4週から第13週まで9連勝し、コルツは5連勝のあと1敗を挟んで4連勝でシーズンを終えている。こうしたチームは試合の勝負どころをつかむのがうまい。ここぞというときに一気にたたみかけることができるのだ。シーズン中の対戦は1勝1敗でいずれも3点差で決した。今回もいろいろな駆け引きが展開される好ゲームになるだろう。
シーホークス(10勝6敗)対カウボーイズ(10勝6敗)
ともに2年ぶりのプレーオフ出場だ。シーホークスはディフェンスを中心に若手の成長が目立つ。チームの看板であるディフェンス一番の特徴はターンオーバーが多いことだ。ターンオーバー率はリーグトップの+15。カウボーイズはリーディングラッシャーのランニングバック(RB)エゼキエル・エリオットのランを核に安定したオフェンスを展開するが、ターンオーバーを未然に防ぐことが大きなカギとなりそうだ。
今季のシーホークスはオフェンスもレベルが高い。ラン獲得は1試合平均160ヤードでリーグ1位を誇り、QBラッセル・ウィルソンもリーグ3位のレーティング(110.9)と好調をキープする。一気にロングパスで距離を稼ぐことができるため、カウボーイズディフェンスにとっては要注意だろう。
カウボーイズはQBダック・プレスコットのラッシュも武器だ。的確な判断でポケットから飛び出し、距離を稼ぐことができる。二桁サックを記録したシーホークスのDEフランク・クラーク、ディフェンシブタックル(DT)ジャラン・リード対策として十分に計算できる。
シーズン中の対戦では第3週にシーホークスが勝利しているが、両チームとも当時とは全く違ったチームになっており参考にはならない。
チャージャーズ(12勝4敗)対レイブンズ(10勝6敗)
ワイルドカードチームではあるものの、勝敗数ではチャージャーズはチーフスと並びAFC最高成績だ。最も危険な第5シードである。オフェンスはQBフィリップ・リバース、RBメルビン・ゴードン、WRキーナン・アレンの3本柱が確立していることが強みだ。高得点をあげて逃げ切るのが勝ちパターンである。
対するレイブンズは4年ぶりのプレーオフだ。今季はしり上がりにディフェンスがよくなってきた。チャージャーズのオフェンスとは見どころのあるマッチアップとなりそうだ。また、レイブンズのオフェンスでは新人QBラマー・ジャクソンにも注目だ。第11週に先発デビューを果たすや、チームを6勝1敗に導いた。ジョー・フラッコに代わる新たなエースとしての地位を固めつつある。
シーズン終盤は得意のランに加えてパスも多用するようになった。まだロングパスに不安があるものの、着実な成長を見せている。大ベテランのリバースとのQB対決に注目するのも一興だ。
両チームは第16週に顔を合わせ、レイブンズが勝利。この試合をいかに分析してくるかは両者にとって重要だ。
イーグルス(9勝7敗)対ベアーズ(12勝4敗)
シーズン終盤にはプレーオフが絶望的に思われたイーグルスだったが、故障のQBカーソン・ウェンツに代わって昨年の優勝の立役者であるニック・フォールズが先発してから皮肉にもチームが上昇気流に乗った。TEザック・アーツに頼りがちなウェンツに比べてWRにも均等にパスをデリバリーできるところがフォールズの強みだ。また、昨年のスーパーボウル優勝チームから多くの選手が残っており、プレーオフ経験が豊富なのもアドバンテージだ。
対照的に2010年以来のプレーオフ復帰となるベアーズは経験不足が懸念される。開幕直前にチームにトレード加入したLBカリル・マックの影響力はやはり大きい。特に失点は1試合平均17.7点のリーグ1位で、強いベアーズディフェンスが復活した感がある。
両チームのターンオーバー率には大きな差があり、イーグルスの-6に対してベアーズは+12。これは勝敗を大きく分けるポイントになる可能性がある。今季、両チームの対戦はこれが初めてだ。
いけざわ・ひろし
- 生沢 浩
- 1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。