コラム

相次ぐ人気選手の退団、新体制の進むパッカーズ

2019年03月23日(土) 19:51


グリーンベイ・パッカーズのランドール・コブ【AP Photo/Morry Gash】

フリーエージェント(FA)とドラフトが解禁となったオフシーズンで目立った動きがほとんどないパッカーズで、ファンから多くの支持を得た2人の選手が相次いでチームを去った。ワイドレシーバー(WR)ランドール・コブとラインバッカー(LB)クレイ・マシューズだ。

攻守の核としてそれぞれ活躍した2人だが、パッカーズとの契約は2018年シーズンいっぱいで満期を迎え、新リーグイヤーの始まりとともに完全FAとなっていた。コブはカウボーイズと1年契約を結び、マシューズは2年契約でホームタウンチームのラムズを新天地に選んだ。

昨季途中でのマイク・マッカーシー前ヘッドコーチ(HC)の解任を含め、この1、2年でWRジョーディ・ネルソンらプレーオフ常連だったころのパッカーズを象徴する選手やコーチたちが次々と退団している。そして、コブとマシューズの移籍はパッカーズの一時代の終焉を印象付けるものだ。

2011年ドラフト2巡目での指名を受けてパッカーズに入団したコブはWRという肩書ながらランニングバック(RB)としてもプレーすることがあり、ユニークなオフェンススキームを構築するマッカーシーの申し子のような存在だった。今でこそレシーバーをフィーチャーしたランプレーは珍しくないが、RBの位置からダイブプレーまで敢行するコブはユニークな存在だった。

RB陣に故障者が続出したパッカーズは2016年に、高校時代にバックの経験があるWRタイ・モンゴメリーをRBとして起用したが、それがスムーズに移行できたのはコブの前例があったからに他ならない。

一方、マシューズと言えば祖父の代から続くプロフットボール一家だ。2009年ドラフト1巡目指名のマシューズはサラブレッドとして期待され、またその期待に十分こたえるだけの能力を持っていた。2010年のスーパーボウル制覇を守備の面から支えた“サイコディフェンス――ディフェンスラインがわずか1人、LBを5人配置して機動力を最大に引き出すパッカーズオリジナルのスキーム”はマシューズのパスラッシュ力があって初めて実現したものだった。

パッカーズは今季からマット・ラフリュワーを新HCに招いて新体制を築きつつある。ラムズやタイタンズで攻撃コーディネーターを務めた経験があるから、クオーターバック(QB)アーロン・ロジャースの存在を生かしたオフェンス主導のチームを作ることは想像に難くない。

しかし、パス一辺倒だったマッカーシーとは違い、バランスアタックを作ってきたラフリュワーは彼なりのフィロソフィーで補強策を進めている。前述のとおりFAやトレードでは動きが静かなので、ドラフトでチームを作る方針と思われる。いずれにせよ、新体制のパッカーズがかつての有名選手に頼るのではなく、世代交代の推進も含めた大掛かりな改革を行いつつあることは間違いない。

過去2年プレーオフから遠ざかり、やや影の薄い印象のパッカーズだが、今秋までにどのようなチームに仕上げてくるのか楽しみだ。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。