コラム

コルツのOLを支える新鋭LGクエントン・ネルソンの存在感

2019年07月08日(月) 06:27

インディアナポリス・コルツのクエントン・ネルソン【Aaron M. Sprecher via AP】

昨年のコルツは4年ぶりにプレーオフ進出を果たし、ワイルドカードラウンドで地区優勝したテキサンズを破ってディビジョナルプレーオフに進出した。クオーターバック(QB)アンドリュー・ラックが肩の手術を受けた後、苦しいシーズンが続いていたが、若き司令塔の復活とともにコルツもエリートチームに復帰した。

ラックの復調はコルツ復活の大きな要素ではあったものの、彼が存分に能力を発揮できる環境が整ったこともチーム浮上を後押しした。その環境とはオフェンスライン(OL)の整備であり、それに最も大きな影響を与えたのがレフトガード(LG)クエントン・ネルソンだったと言っても過言ではないだろう。

ネルソンは昨年のドラフトで1巡目、全体6位指名を受けてコルツに入団。196センチ、150キロという恵まれた体格を生かしてパスラッシュを止め、ランブロックでは機敏な動きでディフェンスライン(DL)を押し込む。ベテランレフトタックル(LT)アンソニー・キャストンゾはトレーニングキャンプで初めてネルソンのプレーを見た瞬間からその安定ぶりに舌を巻いたという。

ネルソンの活躍は実戦でも目覚ましく、新人ながらプロボウルとオールプロに選ばれたほどだ。ちなみに新人ラインバッカー(LB)ダリアス・レナードもオールプロに名前を連ねた。コルツのOLでオールプロ入りは2007年のセンター(C)ジェフ・サタデー以来だ。また、新人でのプロボウル選出は1994年のランニングバック(RB)マーシャル・フォークに次ぐ快挙だという。

コルツのパスプロテクションは改善され、2017年にはリーグ最多の56個ものQBサックを許したユニットが昨季はわずか18(リーグ最少)しか計上しなかった。RBマーロン・マックも前年の358ヤードから908ヤードとラッシング距離を大幅に増やした。

弱いOL、特にパスプロテクションのもろさは長い期間にわたってコルツのアキレス腱だった。ラックの負傷の責任の大部分はOLにあった。そのOLが改善されたことでラックが活躍する環境が生まれ、チームが好転したのが昨年のコルツだった。

コルツの最大のライバルであるテキサンズはJ.J.ワットとジェイデボン・クラウニーというNFL屈指のパスラッシャーを擁する。パスプロテクションの安定は打倒テキサンズのために不可欠なのだ。

昨年のレギュラーシーズンの直接対決は1勝1敗で、1勝差で地区優勝を奪われた。そのリベンジはプレーオフで果たしたものの、目指すは2014年以来の地区優勝だ。それを達成するためには今季もネルソンを中心としたOLの安定が必須だ。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。