逆転地区優勝をかけてペイトリオッツに挑むビルズ
2019年12月21日(土) 23:13AFC東地区でペイトリオッツの地区優勝の座を脅かすチームが現れたのはいつ以来だろうか。
今季好調のビルズがシーズン第15週のスティーラーズ戦で勝利して今季10勝目をあげ、2年ぶりのプレーオフ進出を決めた。ビルズが2けた勝利を記録するのは1999年(11勝5敗)以来で、14試合目でプレーオフを決めたのは1991年と並ぶ早さだ。
それだけではない。シーズン第16週のペイトリオッツ戦に勝てば24年ぶりの地区優勝へのチャンスが開けてくるのだ。
2001年にトム・ブレイディがペイトリオッツの正クオーターバック(QB)となってから、この地区の優勝はほぼペイトリオッツに独占されてきた。この間でペイトリオッツが地区優勝できなかったのは2002年(ジェッツ)と2008年(ドルフィンズ)だけだ。レギュラーシーズンがここまで深まった時期にペイトリオッツと首位を争うチームすらほとんどなかった。
今年のビルズは1,000ヤードレシーバーとなったジョン・ブラウンのほか、エースランニングバック(RB)の座を確立したデビン・シングレタリーがオフェンスを引っ張り、守備ではコーナーバック(CB)トレデイビウス・ホワイト(6インターセプト)とディフェンシブタックル(DT)ジョーダン・フィリップス(9.5サック)の存在が光る。2年目のQBジョシュ・アレンはパスの成功率は高くないが、スティーラーズ戦ではここぞという場面でしっかりとタッチダウンパスを成功させるなど、勝負強さを身につけてきた。
スーパーボウル4年連続出場時(1990年から1993年)のチームと比較するのは早計だが、少なくとも今世紀に入ってからのビルズでは最強の布陣だ。
次戦でペイトリオッツに勝てば今季の直接対決は1勝1敗となり、勝敗も11勝4敗で並ぶ。さらにディビジョン内対戦も4勝1敗で互角となる。ただし、カンファレンス内対戦ではビルズが有利となり、逆転地区優勝への望みが出てくるのだ。
もっとも、各種のデータはペイトリオッツ有利を示唆している。スタッツでは得点力、サードダウンコンバージョン阻止率、ターンオーバーの得失差など重要な部門ではいずれもペイトリオッツのほうが数字はいい。過去20年でビルズの勝利は4回のみ。そして、今季ロードで6勝1敗のビルズだが、敵地で行われ、ブレイディがフル出場した試合では勝ったことがない。ペイトリオッツ越えの道は険しいのだ。
それでもビルズにとっては大きなチャンスだ。勝って地区優勝を手に入れればプレーオフの第2シードとなる可能性が高く、ホーム開催権を得られれば1月に極寒となるバッファローに地の利がある。それだけで勝率はグンと上がるのだ。
ビルズはこのチャンスをつかめるだけのチームに成長したのか。ディビジョン制覇にふさわしい地力をつけたのか。その答えがペイトリオッツ戦で出る。
いけざわ・ひろし
- 生沢 浩
- 1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。