コラム

プレーオフ開幕、ペイトリオッツがワイルドカードから登場

2020年01月02日(木) 02:02

ジレット・スタジアム【Aaron M. Sprecher via AP】

マイアミで行われる第54回スーパーボウルへの切符をかけたプレーオフがいよいよ始まる。AFCではレイブンズが早々と第1シードを決め、ファーストラウンドバイ(1回戦免除)が当たり前だったペイトリオッツが第3シードとなってワイルドカードラウンドから登場する。

レギュラーシーズン最終週までトップ3シードが決まらなかった大混戦のNFCは第1シードに49ers、第2シードにパッカーズが収まり、昨年は負け越しでプレーオフを逃した2チームが上位を占める結果となった。過去2年間のプレーオフはいまひとつのところで苦杯をなめているセインツは第3シードとなった。

ワイルドカードラウンドは初日がAFC、翌日にNFCが行われる日程になった。ワイルドカードに出場するチームのうちビルズ、タイタンズ、バイキングスは昨年はプレーオフを逃しているが、いずれも近年にはこの大舞台を経験している。その経験を生かして波乱を起こせるか。ワイルドカードラウンドからスーパーボウルに出場したことがないペイトリオッツはその前例を覆せるか、注目点は多くある。

ビルズ(10勝6敗)@テキサンズ(10勝6敗)
ワイルドカードラウンド(プレーオフ1回戦)で最も勝敗予想の難しいマッチアップだ。勝敗数も互角で、ともに第17週は主力選手を休ませて万全のコンディションで試合に臨む。

テキサンズはランニングバック(RB)デリック・ヘンリーやワイドレシーバー(WR)デアンドレ・ホプキンスのようにオフェンスにビッグプレーメーカーを擁する。この2人が実力を発揮できる試合展開であればホームのテキサンズが有利だ。

一方のビルズは今季44回のサックを記録したディフェンスが強みだ。ビルズのディフェンスは過去3年間で高いレベルを維持しており、安定感がある。オフェンスは2年目のクオーターバック(QB)ジョシュ・アレンを中心に若い布陣だ。2年前にもプレーオフに出ているが、アレンや新人RBデビン・シングレタリーには初の大舞台。平常心で臨めるかどうかがカギを握る。ビルズは1994年シーズンを最後にプレーオフでは勝っておらず、25年ぶりの勝利を目指す。

タイタンズ(9勝7敗)@ペイトリオッツ(12勝4敗)
ペイトリオッツがプレーオフ1回戦に出場するのは2009年以来だ。例年のペイトリオッツらしくなく12月は3敗を喫した。たとえシーズン序盤で不安を抱えていても、この時期にはほぼ完ぺきなチームに仕上げてくるのがこれまでのペイトリオッツだったが、その意味では不安があり、スーパーボウルへの道のりがいつもより険しく思える。

最終週のドルフィンズ戦ではWRジュリアン・エデルマンが完全に抑えられ、QBライアン・フィッツパトリックに326パスヤードを許した。タイタンズも同様のゲームプランを用意してくるに違いない。

タイタンズのヘッドコーチ(HC)マイク・ブレイブルにとっては古巣とのプレーオフゲームだ。RBデリック・ヘンリーを中心としたオフェンスは破壊力があり、ランディフェンスに弱さが残るペイトリオッツには効果的だろう。QBライアン・タネヒルは昨年までドルフィンズに在籍していたからペイトリオッツのことは熟知している。シーズン終盤のようなオフェンスの破壊力が発揮できればアップセットは十分にあり得る。

バイキングス(10勝6敗)@セインツ(13勝3敗)
2年前のディビジョナルプレーオフの再戦だ。この時は試合の最終プレーでバイキングスが61ヤードのタッチダウンパスを成功させ劇的な逆転勝利を収めた。そのリベンジを期すセインツは8点差の優位を予想されている。

セインツは今季もパスオフェンスが好調だ。QBドリュー・ブリーズは故障で序盤に5試合を欠場したがその影響はなく、パス成功率は昨年樹立したNFL記録にわずか0.1ポイント届かない74.3%のハイスコアをマークしている。一番のターゲットは言うまでもなく、マイケル・トーマスだ。トーマスは今季149回のパスキャッチでシングルシーズンのNFL記録を更新した。トーマスだけでなく、トレクワン・スミス、タイトエンド(TE0ジャレット・クックなどディープスレットが豊富なのもセインツの強力オフェンスを作り上げている。

対するバイキングスは年間48サックを記録したパスラッシュが武器だ。ディフェンシブエンド(DE)ダニエル・ハンター、エバーソン・グリフィン、イファーディ・オデンアボだけで29.5サックを計上する。セカンダリーのパス守備に不安があるだけに、フロントでブリーズにプレッシャーをかけてビッグプレイを阻止したい。ディフェンスの踏ん張りでロースコアに持ち込み、QBカーク・カズンズのパスが効果的に決まれば、プレーオフのロードゲームを苦手とする(過去45年で2勝16敗)バイキングスにも勝機はある。

シーホークス(11勝5敗)@イーグルス(9勝7敗)
ともにオフェンスの主力選手に故障者が出ており、苦しみながらのプレーオフ進出だ。イーグルスはトップレシーバーのWRデショーン・ジャクソン、アルション・ジェフリーが故障者リスト(IR)入りし、ネルソン・アゴロー、TEザック・アーツも負傷を抱えている。さらにRBマイルズ・サンダースも最終戦で足首を痛め、バックはボストン・スコットに頼らざるを得なかった。

カギを握るのはアーツだ。肋骨の故障なので復帰がいつになるかは読みにくいが、プレーオフ初戦に間に合えばQBカーソン・ウェンツには心強い味方となる。

シーホークスはRBに不安を抱えるものの、QBラッセル・ウィルソンは健在。故障者の影響はイーグルスに比べて少ない。昨年を除き、ピート・キャロルHCの下でのプレーオフは初戦を突破しているシーホークスはポストシーズンのプレッシャーにうまく対処でき、臨機応変なプレーコールも可能だ。第5シードながら最も危険なNFCチームだ。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。